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7-1. レ*プ未遂のクソガキをぶちのめす

 俺は身だしなみを整えてから野営地に戻る。

 その途中で異変を感じた。


 くぐもった声と、枝葉に何かがこすれる小さなざわめき。

 獣じゃない。嫌な予感がした俺は駆け、それを目撃した。


「んーっ! んーっ!」


「大人しくしろ! すぐに済むから、聖書の一節でも唱えてろ!」


 妹のメイが、近い年代の少年に組み伏せられていた。

 相手はメイに葉っぱの笛の吹き方を聞いていたガキだ。


 少年は下半身をむき出しにしており、メイは相手の手首をつかんで必死に下着を

剥ぎ取られないようにしていた。


 どう見ても合意の行為じゃない。


 俺は短槍を手にし、投擲して少年の眼球に突き刺そうかと思ったが、すんでのところで手を止める。メイが暴れているから、狙いがそれるかもしれない。


「メイ! 動くな!」


 メイが動きを止め、少年が俺の方に振り返り目を見開いた。

 俺は勢いを落とさず木々の隙間から飛びだし、少年の顔面を蹴り飛ばす。


 ドガッ!


「ぎゃあっ!」


「ぶちのめすぞ、てめえ!」


 少年は鼻血をまき散らして地面に転がった。

 俺は少年の右肩を強く踏みつけ、動きを止める。


「動くな。事情によっては殺す」


 短槍を喉元に突きつけ、怯えた少年の瞳をにらみつけて脅す。


「お前は俺の妹を強姦しようとした。相違ないな?」


「ち、違う! 僕は愛の加護を授けようとしただけだ!」


 少年の瞳はわずかな狂気をはらんでいて、冷静さに欠けているように思えた。


「メイ。何をされた。ここで何をしていた」


「マ、マシュー君が、笛を教えてほしいって……。私、呼ばれて。急に押し倒されて……」


 メイは呆然としている。

 強姦されそうになったときの対処方法は教えておいたが、いざとなったら恐怖で体は動かなかったか……。


「おい、マシュー。お前、ラルム教の信徒でありながら聖女候補を汚そうとしたな」


「ふ、不浄の穴なら冒涜にはならない! ラルム様は行為を否定していない! 神に誓って処女性を傷つけるつもりはない!」


「黙れ。強姦は死罪だ。未遂だから見逃してやる。だが、今後、俺の妹の近くで少しでも疑わしいそぶりを見せたら――」


 ドゴンッ!


 俺は棍棒をマシューの顔面横に振り下ろした。


 地面がくぼみ、土がはねてマシューの側頭部を汚す。


 まだ気が収まらない。


 俺は左右交互に何度も棍棒を振り下ろす。


 ドゴンッ!

 ドゴンッ!

 ドゴンッ!

 ドゴンッ!

 ドゴンッ!


 マシューは震えながら奥歯をガチガチと鳴らした。


 ジョロロロロロ……。


 液体がこぼれる音がする。マシューの下半身が濡れている。


「下半身丸だしで良かったな。ズボンを汚さなくて済んだ。いいか? 次はないぞ。同じことをしたら、貴様の股間にぶら下がった貧相な物を潰す。理解できたなら、去れ」


「ひ、ひいっ……!」


 マシューは近くに落ちていたズボンを拾うと走り去っていった。


 嫌な予感が現実になってしまった。

 2週間も旅してきた思春期のガキが女に近づいた途端にこれだ。


「メイ。大丈夫か。怖かったな」


「う、うん」


 俺はメイの手をとって起こして上げると、マシューの小便から少し離れてから、抱きしめてあげる。


「なんでレストを呼ばなかったんだ?」


「サリナちゃんをひとりにしたらいけないと思って」


「そうか……。難しい判断だったな。他人を思いやった立派な行動だ。けど、正しかったか間違っていたかは分からない。どうすれば良かったのか兄ちゃんと考えよう、な」


「うん」


「レストがいるから大丈夫だとは思うが、サリナに何かあったら大変だし戻ろう」


「うん」


「ほら。歩けるか。兄ちゃんが手をつないでてやるからな」


「うん」


 俺たちは手をつないで野営地に向かう。


 すると、メイが襲われていた位置と野営地の中間で、レストがいた。

 飛び跳ねるわけではないが、前足を揃えて小さく上げて、身体を前後に揺らしてそわそわしている。


「そうか。命令を守りつつ、いつでも助けに入れるよう、ここでメイの心配をしていたんだな。えらいぞ」


「クルルゥ」


 俺はレストの頭や顎を撫でてあげる。


「あのガキ、俺があと少し遅れていたらレストに喉笛を食いちぎられていたぞ。俺に感謝してほしいくらいだ。なあ?」


「うん……」


 野営地に戻ると、サリナも、先に戻ったソフィアも無事だった。


 夕食の準備が進められている。ソフィアが鹿を解体しており、解体済みの部位をサリナがたき火で焼いていた。鹿肉は狩りの成果がなかった騎士達にも共有されたようだが、幸いなことに彼らの自尊心を傷つけはしなかったようだ。


 俺はソフィアの作業を手伝いながら、話を聞く。


 先ほどの狩りはほとんどソフィアの成果だったが、彼女は角が立たないように、俺の手柄だったと騎士たちに説明したようだ。


 俺が棍棒を持っていることは騎士たちもとっくに知っているので、鹿の頭部を見て、たしかに俺が仕留めたものだと納得しただろう。


 女のソフィアではなく男の俺が仕留めた獲物なら、騎士たちも受け取りやすい。


 平地で馬にのって狩りをするのが本来の彼らのやり方なので、森の中を歩いて成果をあげられなかったとしても仕方のないことだと、感情の落としどころをわきまえているのだろう。


 あの犬臭騎士がどんな顔をして鹿を受け取ったのか、見てみたかった。

 そんなことを考えると、その犬臭騎士がやってきた。


 狩りの前に、俺のケツを犯すようなことをほのめかしたし、心証は悪い。

 まさか、さっきのマシューとかいうガキの件で文句を言いに来たか?


 相手は俺よりかなりでかいが、甲冑も鎖帷子も着けていないから、棍棒でどうにかなるだろう。

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