6-5. ソフィアの体を水魔法で洗ってあげる。水の出力が弱いから直接触れて……
大変なことをすっかり忘れていた。
音から察するにソフィアさんは手で熊の糞を払い落とそうとしている。そんなので完全に払い落とせるはずがない。
困ったな。
メイやユーノが泥まみれになった時は、俺の濡らした手のひらで拭いてやっていたが、同じことをソフィアさんにできるはずもない。
だが、俺たちの食事のために糞まみれになった彼女を、そのままにしておくのは忍びない。
ためらうのは一瞬。俺はソフィアさんに背を向けたまま言う。
「ソフィアさん。今から、誤解を招きかねないことを言う。冷静に落ち着いて聞いてくれ。お前のためを思って言うことだ」
「ええ」
「このあたりに川や池はない。もしあるなら、往路で司教一行が発見していて、野営地を水場の近くにするはずだ」
「分かってるわ。でも、少し違う。水場は近くにある。司教一行が発見できていないだけです。鹿は、水のないところにはいないわ」
「そうか。そうだな。いずれにせよ、俺たちが迷わずに歩いて行って帰ってこれるようなところに水場はないと思う」
「ええ」
「で、だ。言葉をどう選んでも選びようがない。だが、お前を傷つけたくないから言いにくいんだが……」
「いいわよ。分かってる。私は汚い。だから、野営地には戻らない。少し離れたところで待つから」
「そうじゃない。あ、いや、体に熊の糞がついていることは事実だが、汚いのは糞であって、ソフィアじゃない。だから、綺麗にすればいい」
「乾燥すればもう少し綺麗に落とせます」
「ああ。そうなんだが……。ああっ、もう、誤解してくれていいんだが、どうにもならないから、はっきり言う。俺はレベル1認定すらされない威力だが、水魔法が使える。手のひらを濡らす程度だが、持続時間はそれなりだ。妹たちが身体を汚して帰ってきたときに、そうしているんだが、ええっと、あーっ……」
非常に言いにくいから、聞こえなくても構わんとばかりに、早口で小さく言う。
「体を触って、洗おうか?」
「え?」
「あ、いやいや、あーっ! 変態と罵って断ってくれてもいいんだが、つまり、君の体を洗う手段はあるんだが、俺の魔法は弱すぎて、水は手のひらから離れるほどの出力はなくて、だから、つまり、えっと、直接体を触ることになって、あーっ。……いや、すまん。触られるの嫌だよな?」
「いえ。あの……。よろしいのですか?」
「あ、いや、それを俺が聞いていて……」
「清めていただけるのなら、こちらから頼みたいくらいですが……。私、汚いですよ……?」
「ああ、いや、汚いのは熊の糞であって、ソフィアさんは綺麗だ。あ、いや、変な意味ではなく体は綺麗で。あ、いや、見てない。/
:あー。くそ。なんかい「いや」と言えばいいんだ。
/裸は見てない。とにかく体だけでなく心も綺麗で。いや、待て。これもおかしい。初対面なのにすまん。狩人としての心構えに敬服したという意味だ」
「動揺しすぎではありませんか?」
「すまん……。こんな態度では下心があると思われてしまうな」
「私に対して劣情を催しているのですか?」
「言語化するな。否定しづらい。肯定すれば俺が変態だ。否定すればお前に性的魅力がないと侮辱することになる」
ソフィアさんの口調は穏やかなままだった。俺ひとりだけが自爆したかのように早口で声を高くしていた。
「……私が、3回、夫を亡くしていて、不幸を呼ぶ女だと言われているのを、知っていますか?」
「あまり村にいないから、よくは知らないが……」
「夫たちはみんな、私の体を汚いと蔑み、指一本触れようとはしませんでした……。だから、17にもなって子を成すこともなく、村で居心地の悪さを感じていました」
「ああ……。会ったばかりの俺なんかに気にするなって言われても意味はないだろうが、少なくとも俺はソフィアさんが汚いとは思わない」
「はい……。ありがとうございます。アレル様。お願いします」
「ああ」
汚れを洗い流すなら上からが妥当だから、俺は先ず、彼女の頬に触れる。水で頬をなでるようにして洗う。
熱っぽい瞳でじっと見つめてくるから、少しやりづらい。でも、俺が恥ずかしがっていたら駄目だ。ソフィアさんの方が恥ずかしがっているはずだ
俺は頬を洗い終えると、肩や鎖骨を洗ってあげる。
そして……。
胸。どうするんだ。
洗わないわけにはいかないが、触るのも気が引ける……!
無心だ。無心になれ。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ほーん。はーん。
見られたくない回想シーンだなー。
お前、むっつりすけべだし、本当に、大きい胸が好きだなー
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■自分
くっ……
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