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5-3. 出発。すぐにサリナが遅れだしたから、荷物を持ってあげる

 山道なので馬車はブレーキをかけながらゆっくり進む。そのため、隊全体の移動も遅い。急な斜面では、馬車は逆向きになり、後方へゆっくり下がる。


 裂け目や段差には、司教たちが往路の際に整備したと思われる板や丸太が敷いてあった。想像以上に大変な道のりだったのかもしれない。


 無理して馬車で山村に来ないでも、司教が馬に乗るか歩くかすれば良かったのでは……。そんなことを思ったら駄目なんだろうか。


 まあ、彼らの土木工事によって、村人も移動しやすくなるから、ありがたい。


 司教には4人の騎士が護衛についている。

 騎士は、漫画のように常に甲冑を着ている訳ではない。普段は平服を着ており、戦闘時にのみ甲冑や武具を装備する。常にフル装備でいたら、騎士も馬も体力を消耗するから、これは当たり前のことだ。

 青い上着を着ているから分からないが、もしかしたら下に鎖帷子くらいは着込んでいるかもしれない。


 騎士は移動用の馬の他に、甲冑を運ぶための馬もしくはロバと、戦闘時に乗り換えるための軍馬を連れる。さらに、それらの馬やロバを世話する従騎士や従者が同行する。


 つまり、今回の旅は……。


 ・司教1名

 ・司教の世話をする僧侶2名

 ・御者1名

 ・馬車を引く馬2頭

 ・護衛の騎士4名:乗用馬4頭

 ・従騎士3名:乗用馬3頭

 ・従者4名(徒歩):甲冑を運ぶ馬4頭、空荷の軍馬4頭

 ・聖女候補の3人、メイ、サリナ、ソフィア

 ・俺

 ・レスト


 人間19人、馬17頭、動物レスト1頭という、大所帯だ。


 従騎士が魔法使いや回復術士らしいが、仮に彼らが甲冑をまとう騎士であれば、さらに追加で軍馬や荷運び馬が8頭必要になっていたことだろう。


 本当はもうひとり従騎士と従者2人とその乗用馬3頭がいたのだが、近隣の街に村長を連行するため、別行動だ。


 アーサーさんが「荷のない馬を貸そうか」と言ってくれたが、俺もメイも、ソフィアさんもサリナも乗馬経験がなく、無理だった。

 そこで、馬にはクソデカチーズを運んでもらうことにした。


 他の荷物は自分たちで運ぶ。おそらくだが、馬は荷運び担当をローテーションしている。何も運ばない休憩タイムも必要だろうし、あまり無理はさせられない。



────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

はー。こんだけいたのにみんな死んだのか

────────────────────

■自分

ん? 寝たんじゃないのか?

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

頭がぼーっとしている感じだぁ。

魔王城に来ているの4人だろ?

────────────────────

■自分

ああ。違う。

司教や騎士たちは、聖女候補に神託を告げに来ただけだ。

だから、王都に戻ったら、そこでお別れだ

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

ほう。

誰かぶちのめした?

────────────────────

■自分

当たり前のこと聞くなよw

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

当たり前なのかよw

────────────────────

■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ

むにゃむにゃ……。

ぶちのめし?

────────────────────

■自分

寝てろ。起きんでいい

────────────────────



 羊の群れを見守るようなノリで、俺は一行の最後尾についた。


 同年代相手や同性には人見知りしないメイは、隊列の真ん中辺りで、年頃の近い従者に何やらあれこれ話しかけている。


 たまに振り返って俺の方をちらちら見てくる。

 きっと「遊牧途中で出会った見知らぬ人には積極的に挨拶して、情報収集しろ」という俺の教えを守っているというアピールなのだろう。


 歩きだして30分もしないうちに、サリナが遅れがちになったのを最後尾にいた俺が最初に気づいた。


 最後尾をレストに任せて、俺はサリナに並ぶ。


「えっと……。サリナ……。だよな?」


「はい……。サリナです……」


 歩行中だからしょうがないんだけどサリナは俺の方を見もせずに、口の中でもごもごと小さく言った。

 それから手でマントのフードを引っ張り、目元を隠してうつむいた。


「山道だ。足元を見るのは正しいが、それだと木の上に潜む獣や蛇を見落とす。顔を隠すのは良くない」


「……」


 サリナはフードを指先でいじり、また口の中でもごもご言うと、数ミリだけ目元を出した。ほとんど何も変わっていない。


「慣れてない道を歩いたから、足を怪我したのか? 荷物を貸せ。俺が運ぶ」


 中に何が入っているのか分からないが、サリナは自分の胴体くらいある皮の荷袋を背負っている。

 俺は渋るサリナから、半ば強引に荷袋を奪う。


「無理して遅れる方が周りの迷惑になる」


「……はい」


「割れ物とか、傾けたら駄目なもの入ってるか?」


「……ないです」


「ならいい」


 俺は荷袋を肩に背負って歩く。5キログラムくらいある。サリナは中学生くらいだから大変だろう。


「俺はアレル。15歳。メイの兄だ。羊飼いをしている」


「サリナ……。14歳……」


 名前を交換した後は数分、無言で歩いた。

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