5-1. 出発の日。集合場所に集まる
翌朝。出発の時は来た。
司教や騎士たちが村の外で待っている。
俺はメイと一緒に家を出る。ユーノが俺に抱きついたまま放してくれない。
「ほら。ユーノ。兄ちゃんはもう行かないといけない」
「やだ。ユーノも行く」
「駄目だ。お前は母さんとお留守番だ」
「うー」
普段俺が遊牧に行くときはこんなにもぐずらない。
幼いながらに、今回の旅がいつもとは異なることに気づいているのだろう。
「珍しい鳥がいたら尾羽をお土産にするから。ほら。放して」
「うー」
「ほら。リュオと裏山に羊を連れて行かないといけないだろ。今日から、メイもレストもいないんだ。お前がしっかりしないといけないだろ?」
「……うん。兄ちゃの分まで、頑張る……」
ユーノが腕の力を緩めたから、俺は小さい体をそっち押して離す。
俺は母さんに挨拶をする。母さんはちょうどメイとの抱擁を終えたところだ。
「行ってくる」
「ええ。行ってらっしゃい」
母さんが俺に1歩近づく。
まさか、俺ともハグしてくれる流れか?
期待が膨らむ。
母さんがさらに1歩俺に近づく。
や、やばい。胸が高鳴ってきた。
これはごく自然にハグする流れだ。長期間の遊牧に行くときはいつもしてくれるが、毎回、緊張する。
母さんが両腕を左右に広げ、山村にはふつりあいなほど豊満な胸が、おっ、俺の胸に……。
う、うわあああああああああああああああああああああああっ! ← 回想1の絶叫。
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
アレルうるさい
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
アレルうるさい
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■自分
しょうがないだろ。母さんのハグだぞ。
『女神の抱擁』という蘇生魔法があるが、絶対俺の母さんのハグの方が気持ちいいね!
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母さんが俺を抱きしめる。
幸せすぎて頭が沸騰しそうだ。
俺も母さんを抱きしめてあげたいが、もう、緊張と興奮で全身が硬直して動かない。
俺の両腕はぷるぷると震えて虚空を抱く。
はあはあ……。
「(家族として)愛してるわ。アレル。無事に帰ってきて」
「おっ、俺も、(家族として以上に)あっ、愛してる」
ちゅっ!
う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ! ← 回想1の絶叫を更新。
かっ、かかっ、母さんが、おっ、俺の、ほ、頬に、ほっ、ほほっ、ほほほほっ。
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
……
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
……
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■自分
そ、そんな目で俺を見るな
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我の顔は見えないはずだが?
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■自分
見えなくても分かることはあるだろ……!
声が冷たい……!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
脳内ボイスに声音はないと思うが?
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■自分
聞こえなくても分かるんだよ……!
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うっ。動け。俺も、母さんの頬に、きっ、ききっ、キスするんだ。
こ、これは親愛のキスだ。べ、別に何もやましくない。
母さんが頬を俺に向けてきた。
や、ヤバい。心臓が口から出てくる前にキスをしなければ。
ちゅ……。
俺は薄皮一枚だけそっと触れた。
はあはあ。
「行ってらっしゃい」
「いっ、行ってくる。ほら。メイ。ぐずぐずするな。来い」
「……いちばんグズグズしてたのはお兄ちゃんだと思う」
「馬鹿を言うな」
俺はメイと一緒に家の敷地を出た。
「……ソフィアさんやサリナちゃんとの合流位置を村の外にして良かったね」
「?」
「お兄ちゃん顔真っ赤でニヤニヤしてるし、前屈みだよ」
「……! へ、変なことを言うな」
「みんなと合流する前に、私が処理してすっきりさせてあげよっか?」
「ぶちのめすぞ!」
俺は妹の頭を小突いた。
こいつ、いったい、どれだけ意味を分かって言っているのだろうか。
メイに俺の子を産ませたい母さんによってなんらかの教育が施されているはずだが、その知識水準が分からない。未知すぎて怖い。
俺たちは馬車を目印にして村はずれの集合場所に集まった。
街と違って時計がないし、定刻に鐘を鳴らす聖堂もないから、時間は適当だ。
朝、という約束だから、明るくなって朝食を終えたら集合だ。
幸い、俺たちは最後ではなかった。
騎士の従者たちが馬に草や水を与えるために走り回っている。
しばらくして女がふたり現れた。ソフィアさんとサリナちゃんだろう。
今までに村のどこかで何度か見たことがあるような、ないような。
馬の準備が終わったら、特にイベントもなく出発だ。
名も知らぬ騎士がやってきて「そろっているな。行くぞ」と言ったきりだ。
旅の注意点や移動の順番も、何もない。
というか、メイ、ソフィアさん、サリナちゃんが徒歩なのにビビる。聖女候補なのに、馬車に乗せてもらえないんだ……。
もしかして自分たちで馬を用意することが前提だったのか?
一行は南方の王都に向かって進む。
魔王領からは遠ざかるが、先ずは王都に行き、大司教からスキルを授かると、昨日アーサーさんが教えてくれた。
旅は、神託を告げに来た司教たちの帰路に同行するかたちだ。




