4-2. 旅の準備と心構え
旅立ち前に処理しなければならないのは、顎傷のジャックだ。
あいつに関しては、既に罠をしかけた。
ひとまず後回しにて、旅の準備だ。
といっても俺は旅慣れているし遊牧の時の荷物をそのまま持っていくだけだ。何も特別な用意は要らない。
俺が家に帰り、メイから聞くところによると、村に住む女で聖女候補の条件に該当するのはメイの他に2人。ソフィアとサリナだった。
俺はふたりに関しては噂を聞いたことがある程度で、詳しくは知らない。
基本的に女の子は3歳くらいを過ぎたら――病死の可能性が低くなったら――親が結婚相手を探す。財産の移動に関わることだから、早い段階から両親間で話しあいがおこなわれて婚約者ができる。
戦争や流行病がなければ、予定通りの相手と結婚することが多く、また男性は後妻を迎えることが多いため独身女性は少ない。
不幸なことに、変態ロリコン村長のせいで、生娘という条件を満たせない者がいた。
そのため、人口200人の村で未婚の10歳以上の女性は3人しかいなかった。
ソフィアとサリナは、村の中心から離れたところに住むから難を逃れたのかもしれない。
うちは、父さんという、最強クラスの羊飼いがいたから、メイが護られていたのだろう。村長だって、羊飼いは野生のモンスターを撃退できる強さだということを分かっているだろうし、俺がガキの頃に村が野盗に襲われた際、父さんが活躍したことを当然、知っているはずだ。
俺の準備は不用だし、メイも準備はほとんどいらない。しかし、旅に慣れていない聖女候補が他にふたり要ることを考慮し、追加の準備が要る。そのことを知ったのが夜だったから、俺が母さんと協力して、ふたりの準備をした。
聖戦に俺が同行することは騎士のアーサーさん経由で、司教様にも伝えられたそうだ。反対される理由はまったくなかったため、俺の申し出は受け入れられ聖女候補の護衛として、司教様たちとともに王都へ向かうことになった。
司教様たちはもともと聖女候補の他に、その護衛となる者も探していた。その条件を満たすのは、旅慣れていて周辺の地理に明るく、外国、特に北方へ旅した経験があり、中級モンスターを撃退できる者。
まさに、俺だ。
国境を越えるほどの遠距離を旅する者は巡礼者、宣教師、行商人などがいるが、世間では、護衛が務まるだけの戦力を有する者は冒険者だけだと思われている。
しかし、羊飼いの俺も一般人より戦闘力に長けており、国境を越えて旅をした経験が豊富だ。
やはり、適任は俺しかいない。
彼らは王都の教会で聖女にスキル授与の儀式を行った後に、そのスキルと相性の良い冒険者を冒険者ギルドで探す予定だったらしい。場合によっては、王都で仲間が増えるかも知れない。
だが、羊飼いとしての技を父さんから教わった俺ほどの人材はいないだろう。
家に居続けたら俺は母さんの魅力にあらがえずに一線を越える可能性だってあるし、下の妹ユーノに子作りの準備ができた合図が出ようものなら、母さんは俺と彼女の婚姻を促すかもしれない。
だから、家を離れるのは悪くない。
それに……。
魔族の国、いわゆる魔界と呼ばれる地域は北にある。
父さんが消息を絶った北だ。
もしかしたら、父さんは生きていて、何かしらの事情で村に帰ってこられないだけかもしれない。
成長した俺が迎えに来るのを待っているのかもしれない。
もしかしたら旅の途中で父さんの痕跡を見つけられるかもしれない。
可能性は低いがゼロではない。
俺は村長裁判の帰りに、友人のヨッシュとその妻アンナに、母さんやユーノのことを頼んだ。ヨッシュは定期的に、俺の家を訪れて家族が困っていないか見てくれる。
ヨッシュは既婚者だから、俺の魅力的な母さんをどうこうする可能性はなくて安心だ。
ヨッシュが病死でもすれば、周囲は自然な流れで俺とアンナの結婚を促してくるだろう。それくらい、俺たちは周りからも親しい間柄だと認識される距離感だ。家族を除けば、他の誰よりも信頼できる。
俺は心置きなく、聖戦の旅に出られる。
戦いの先に、愛する母さんとの幸せな生活が待っている……!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
おい。待て。
足を引きずってるおっさん。
あいつを殺すのはいつだ?
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■自分
殺すなんて物騒なことは言うな。
ここからだ。あと少し待ってろ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
そうか。てっきりあいつを放置して旅立つのかと思ったぞ
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■自分
ちゃんと罠を張っただろ。
あいつは俺とヨッシュの会話を盗み聞きしているから、夜になる前に俺が旅立ったと誤解している。
明日になったら母さんがヨッシュの家に行くと思いこんでいる。
ヨッシュは狩人だ。俺ほどではないが、腕っ節が強いからな。
そうなったら、もう顎傷のジャックには手出しはできない
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
つまり?
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■自分
あいつが俺の母さんを襲えるチャンスは、この日の夜だけだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
身の危険を冒してまで襲うかねえ
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■自分
俺の愛する美しい母さんは魅力的すぎるから、男を狂わせるんだよ。回想だから伝わらないかも知れないが、漂う甘い香りや、息づかいの音や──
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
続きいこうぜ!
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