3-10. 俺の番が来る前に村長がダウンしてしまった!
村長の様子を見ながら先ほどの従騎士さんが進んできたので、聞いてみる。
「あの。すみません。騎士様」
俺は従騎士のことをどう呼べばいいのか分からないから、騎士と呼んだ。
「どうした?」
「今回のこの拷――罪払いは、騎士が使わないような武器なら使ってもいいんですよね?」
「ああ」
「俺が使いたいのは、この棍棒なんですけど」
「うーん。木の棍棒か。これは難しい」
「駄目なんですか?」
「いや、駄目ではない。本来ならば、鍛えられた金属には魔を払う力があるから使っても良いのだ。だが、丸腰の相手に剣や槍を使うことは、騎士の名誉を損なうことだから許されない」
「複雑なんですね」
「うむ。だから、騎士ではなく、力のない女がその棍棒を使う分には構わない。だが、悪く思わないでほしいのだが、これは職業病のような者だが、私は君の戦闘力を軽く探った。驚くことに、君は近接戦闘において私に肉薄する強さだ。もちろん、私が魔法を使わないという条件でだが」
────────────────────
■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
え~~。なんか生意気~~。
感じ悪い~~。アレルの方が強いよ
────────────────────
■自分
いや、待て。
俺、こんな高く評価されていたのか。
このとき、この人のことよく知らなかったんだよ。
回復魔法を使っていたから、魔術師だと思っていたんだよ。
だから、近接戦闘で同じくらいの強さって言われても、別に嬉しくなかったんだよ。
それで俺は、あまり喜んでいなかった。
うっかりしてた。今思うと、やばいな
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
んー。どういうこと?
────────────────────
■自分
えっとな。
裁判を仕切っている金髪さらさら騎士のアーサーさんが、王国陣営で最強クラスの騎士なんだよ。
レベル50越えているような、人類の上澄みの中の上澄み。
それで、俺が後方支援要員だと思っていた人は、アーサーさんの右腕で魔法騎士だ。
魔法の方が得意なだけで、近接戦闘もこなせる。
この人もレベル50近い。人類の上澄み。
そんな人から、近接戦闘の実力が近いと評価されていたんだよ、俺
────────────────────
■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
アレルの方が強いよ!
旅で強くなったもん!
────────────────────
■自分
そうだな。だといいな
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
はーん。でも、なんでそんな凄いやつが、お前の村に来ているんだよ
────────────────────
■自分
話すと長くなるぞ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
簡単に言え
────────────────────
■自分
俺の村から出る聖女候補が、かなり有望視されていた。
それで、例外的に、偉い司教が聖戦を告げに来た。
かなりの重要人物だから、強い護衛が必要になった。
それで、本来なら魔王討伐に向かうような、王国の英雄が、田舎の山村に来ちゃったんだよ
────────────────────
■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
そんなこといいから、早くぶちのめし見ーたーいー
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
待って。一応、聞かせてくれよ。
なんで、英雄がお前の所に来たの?
我に関係ある? 我が知っておいた方がいいこと?
────────────────────
■自分
あ。お前には関係ないよ。
完全に王国内の都合。
要するに、アーサーさんは王族で、王国にとって死なれたら困る人なんだよ。
だから、他国との戦争にも、魔族討伐の聖戦にも参加させず、こういう、どうでもいい安全な任務を与えられ続けているんだ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
はーん。人間、馬鹿だぁ
────────────────────
■自分
俺もそう思うよ。
魔族討伐が悲願とか言っておきながら、王宮や教会では、自分たちが政治争いで優位に立てるよう、王位継承権を持つ者を利用したり懐柔したりしているんだよ
────────────────────
「君が武器を使えば村長を殺してしまうだろう?」
「ええ……。推奨討伐Lv20くらいのモンスターなら棍棒で首を折れます」
「村長を殺してしまえば、君の名誉が損なわれてしまう。殺す価値のない者を殺したことになるからね」
「なるほど。村長は俺の8歳の妹を陵辱したがっていたから……この手で、ぶちのめしたかったなあ」
「……よし。なら、こうしよう。私が君にデバフ魔法をかけて、君の力を大幅に下げる。そうすれば、全力で攻撃しても卑怯にはならない」
「そんな方法があるんですか? ありがとうございます! ぜひお願いします!」
「うむ。では、心を落ち着かせてくれ。少し酔ったような気分になるだろうが、抵抗しないように」
「はい」
従騎士が俺の肩に手を置く。俺はなんとなくまぶたを閉じた。
「慈愛の女神ラルムよ。この者の肉体に宿る活力につかの間の静寂を与えたまえ」
ん?
お、おお。
酔ったような気分か。なるほど。たしかに少し頭がボーッとする。
「これで君の腕力は普段の一割程度だろう」
「ありがとうございます」
攻撃力が下がった実感はないが、体がちょっと重くなった気がする。
しばらくして、ようやく村長が列を抜けて、最後の俺のところまで来た。
「あう、あ、あ……」
「村長。立ち上がれ」
「あっ、あっ……」
俺は村長の手をとり、立ち上がらせる。
村長の顔は血まみれでボコボコに腫れ、ただでさえ醜い顔がさらに歪んでいた。
服もいたるところが破れてみじめな姿だ。
哀れではあるが、村人を強姦し続けてきた犯罪者の末路だし、同情の余地はない。




