3-9. 気が済むまでひたすら殴る刑罰が始まる!
「村長よ。この列の間を進め。通り抜けたとき、貴様の肉体の罪は許される。そして、恨みある村人よ。殴る、蹴る、好きにして恨みを晴らすが良い。剣、槍、弓のような騎士が使う武器でなければ、武器の使用も許される。ただし、体を掴んで引き留めることだけは許されない」
うおおおっ!
最の高かよ!
なんだよ、この刑罰!
中世的で最高じゃないか!
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
ねえ、どういうこと?
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■自分
村長をみんなでボコるってことだよ
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
やったあ!
アレルもぶちのめすよね?
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■自分
もちろん
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
わぁぁぁっ!
わあいっ! わあいっ!
はあはあ、はっ、はっ、はっ
興奮しすぎて頭が変になりそう!
わふっ、わふっ、わふっ
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■自分
お、落ち着け
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「ひぃぃぃ……」
村長が悲鳴を上げるが、村人たちの「うおおおっ!」「恨みを晴らしてやる!」「村長、早く来いよ!」という声にかき消された。
「村長よ。進め。これが貴様の犯した罪だ。通り抜ければ回復魔法によって傷は癒やされる。貴様の身に宿った悪しき心と罪の汚れを村人が打ち払ってくれるのだ。1歩1歩感謝し、祈りながら進め。そして、これは戦神が司る裁きだ。己の力による抵抗が許される。途中倒れることなくこの人数を打ち払える自身があるのなら、抵抗してみせろ」
「いやだ。いやだぁ!」
「村長よ。慈愛を司るラルム様は死刑を認めていないが、戦を司るリュテ様は裏切り者と卑怯者への死刑を認めている。命が惜しくば、誠心誠意の謝罪をしながらこの罪払いの道を通り抜けることだ」
「ひ、ひぃぃぃぃ。あっ、ああっ……」
村長は尻餅をつき、ぶるぶる震える。
すると、従者が槍を構えて、村長を突く。
「どうした、村長。我が従者の槍に貫かれるか? 騎士たる我は、騎士たらぬ貴様に振るう刃を持たぬが、従者は我が命ずればなんのためらいもなく、貴様の腹を貫くぞ」
「ひ、ひいいっ。い、いやだぁ。死にたくないぃ」
「ならば進め!」
従者の槍につつかれて村長が這い進む。
「う、ううっ。お、お前ら、わ、わしに手を上げれば、ど、どど、どうなるか、分かっているよな?」
「黙れ!」
「今までの恨み!」
「ひいいいっ! 痛いッ! 痛いッ!」
列の先頭で攻撃が始まった。
村長は馬鹿だなあ。
立って歩いていれば、顔が近いから村人は攻撃を躊躇したかもしれないのに、這っているから蹴りやすい。
蹴ったり、こぶしを振り下ろしたりして、村人が恨みを晴らしている。
村長は手で必死に頭をかばっているが、そうすることにより這う速度が遅くなる。
俺の番、来るのかなあ。
うーわ。村長、ほとんど入り口で止まってる。
うーん。励ましてあげるか。
「おい、村長、ここまで来れないのか? 俺にも、あんたの罪を晴らさせてくれ! あんたの身体に染み付いた悪しき魔を、うち払ってやりたいんだ!」
俺はヤジを飛ばした。すると列に並ばない者達も同じようにヤジを飛ばし始める。
しかし、結局村長は列の真ん中まですら来ることなく倒れて、糞尿を垂れ流して動かなくなった。
終わりかと思ったら、アーサーさんの側に控えていた従騎士がやってきた。
「村人よ。前を開けて。……さあ、村長よ。我が癒やしの魔法で再び立ち上がるが良い。慈愛の女神ラルムよ。この者の傷を癒やしたまえ……」
ポウッ……。
従騎士が村長に手を掲げると、青白い光が広がる。
「村長よ。傷は癒えたな?」
「ひ、ひいいい……」
「よし。ならば、罪払いを続けるが良い」
従騎士は言い放ち、村長から離れた。
さりげなく回復させちゃったけど、とんでもなく優秀な人だな。
この村に同等の回復魔法やスキルが使える者はいない。近隣の大きな街にある施療院でも、これほどの回復術士はいるかどうか……。
そんな優秀な従騎士のおかげで、復しゅ――ではなく、拷も――でもなく、村長の罪払いの再開だ。
だが、さすがに先頭の方の村人は同情心が出たのか、それとも単に疲れたのか、殴打は少し緩やかになった。
村長は短い手足を必死に動かして、腹を引きずりながら進む。
中盤の人たちが殴打を始める。攻撃は緩やかだ。
おそらく、早い者勝ちで列に並んだから、前方ほど恨みが強い人が多くて攻撃が激しくなり、後方ほど弱くなるんだ。
村長はここぞとばかりに這い進んでくる。どうやら俺の所まで来れそうだ。
見た感じ、女性は拾った石で殴っているが、騎士たちは誰も注意していない。




