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3-8. カス村長の裁判! もちろん有罪! 餓死するまで牢獄! ざまぁ!

 よく大道芸人が上に乗って逆立ちをしたり宙返りをしたりする岩の上に金髪さらさら騎士が立つ。岩の周囲に男が3人が立つ。ひとり身なりの良い者がいるから彼が従騎士で、残りが従者だろう。いずれも剣や盾を持つが平服だ。


 岩の前には両手首を背中の後ろで縛られた村長が跪いている。


 意外と暇人が多いしみんな娯楽に飢えているから、大半の村民が来ているようだ。まさに大道芸を見る感覚に近いだろう。


 俺は、詰めかけた村民の最前列に立ち、怯えた顔の村長を無言で見下ろす。


「これよりノルド・モンターニュ村の長の裁判をおこなう!」


 岩上からアーサーさんが声高らかに宣言した。

 従者のひとりが、獅子の紋章が描かれた盾を頭上に掲げる。


「光輝なる王アレン直系獅子牙王リオンの長子、アーサー・ド・ヨールネンがこれより、裁判を取り仕切る。異論ある者は手を上げよ」


 群衆がしんと静まる。


「異論はないようだな。公正な裁判をすることを、我が剣と慈愛の女神ラルムに誓おう」


 アーサーさんは煌びやかな鞘から剣を抜き放ち、頭上に掲げた。

 剣は陽の光を反射して鮮烈に輝く。

 視線を上方へ誘導された俺は、畏敬のような感情を抱く。

 他の住民も似たようなものだろう。


 アーサーさんが剣を下ろす。おそらく、裁判の間はその権威を伝えるために、剣は抜き放ったままなのだろう。盾を頭上に掲げ続ける従者は大変そうだ。


「さて。村長の罪は、聖女候補となった娘を己の性欲を発散したいがためだけに強姦を試みたものだ。魔族の討滅はラルム教の悲願であり国是でもある。これに背くことは王国やラルム教だけでなく、生きとし生けるすべての人類を侮辱する罪だ。異論はあるか?」


「ち、違います! わ、わしはそんなこと知りませぬ!」


「お前が聖女候補メイの兄アレルに、妹を差し出せと脅迫めいた言葉を発したことは、獅子と我が十本の指に誓って、私の耳で聞き、この目で見た。言い逃れは許さぬ」



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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

解説よろ

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■自分

獅子は彼の家を象徴する動物だ。

十本の指に誓うというのは、彼が刑罰で指を失っていおらず、罪人の証拠となる入れ墨も入っていないということ。つまり、清廉潔白な人物かつ権力者であることの証明だ。

おそらく、指が揃っていることを騎士が言う場合は、過去の戦いで傷ついていないとか、敵に捕まって拷問を受けるようなミスを犯したことがないとか、そういうことの証明にもなるはずだ

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

ほーん

────────────────────

■自分

俺からもひとついいか?

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

ん?

お前の回想でお前が我に質問?

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■自分

ああ。

アーサーさんの聖剣って、どう?

魔王でも、刺されたら痛い?

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

そりゃ、刺されたら痛いだろ

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■自分

そうか。やはり由緒ある聖剣か

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

聖剣とか関係なく、刺されたら痛いだろ……

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■自分

そうなの?

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

お前、我のことなんだと思ってるんだよ……。刺されたら普通に死ぬぞ

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■自分

えっ?! 超再生とか不死身とかじゃないの?!

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

たとえ相手が超越者たちだろうと、魔法攻撃は我に効かぬと思うが、物理攻撃は普通に喰らう。

肉体自体はお前らと変わらん。

むしろ、運動していない分、貧弱と言える。

毎日たくさん歩いているお前ら、すげーって思う。

我には無理

────────────────────

■自分

マジかよ。ちょっとショックだ……

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

殴りあったら、お前の妹にも負けるぞ

────────────────────

■自分

やめろ。夢を壊すな。強い魔王であってくれ!

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

特に、属性とか魔力とかが乗らない普通の物理攻撃が効く。

……というかアレル。お前、我の天敵じゃね?

────────────────────

■自分

ん?

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

棍棒ぶちこまれたら普通に死ぬる

────────────────────

■自分

おいおい。とも――。

フォロワーに棍棒をぶちかますはずないだろ

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■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

あれ?

いま、友達って言おうとした?w

ねえ、ねえ、ねえ。

友達って言おうとした?w

なんで、フォロワーって言い直したの???

────────────────────

■自分

ぶちのめすぞ!

ほら、回想の続きだ!

────────────────────



「わ、わしはただ、父をなくしたメイの生活が苦しいのを見かねて、手を差し伸べようとしただけだ。じ、慈愛の心だ! ラルム様の教えに従って、村民を救おうとしただけだ!」


「ほう。アレルよ。どうか?」


 発言を求められた俺は一歩、前に出る。


「先日、村長は村の男たちに命令して越冬のための薪を集めさせました。その薪は、まさに騎士様がこの村に訪れた日の午前に配られました。しかし、俺は薪が配られることを事前に聞かされていなかった。すべての薪が持ち去られたあと、残った細い枝を拾い集める俺に村長は言った。俺の12歳の妹メイと8歳の妹ユーノを貰ってやると。そうしたら、妹たちは幸せになり、残された俺と母さんは少ない薪で越冬できるだろうと」


 村民たちがざわめき始める。越冬の薪が配られなければ凍死する危険が高いことをみんな知っている。

 人々の中から「確かに昨日アレルはいなかった」「そうだ。言われてみると、見かけなかったな」と声がする。


「妹を村長に差し出せば、俺の家族は越冬できるかもしれない。しかし、世界と信仰の危機だ。妹が聖女候補なら、その処女性を村長に奪わせるわけにはいかない。俺たち一家は越冬できずに凍える覚悟で、メイを聖戦に送りだす!」


 話がそれたか?

 献身的すぎてうさんくさいか?

 そんな俺の心配をよそに、群衆の中から10年来の友人が歩み出てくる。


「アレル! お前! それで柵を壊していたのか! 商売道具の羊が逃げるかもしれないのに、薪がないから壊すしかなかったのか! 水くさいぞ! 言えよ! うちの薪をわけてやる!」


「ヨッシュ……。ありがとう……! でもお前、結婚したばかりだろ。俺の家のことは気にするな!」


「アレル!」


 俺たちは友情を確かめるため抱きあった。

 ちなみに、ヨッシュとは効果的なタイミングで出てくるように、事前に打ち合わせ済みだ。


 野次馬の中から「みんなで少しずつ分ければいいんじゃない?」と声が上がる。ヨッシュの嫁だ。もちろんこれも事前に仕込んでおいたさくらだ。


 効果は抜群だ。他の村人も声を上げ始める。


「うちの薪もわけてやる!」


「多くは出せないが、うちも薪を譲るぞ」


 ――勝った。場の空気が完全勝利ムードだ。


 アーサーさんが剣を掲げ、村人を黙らせる。


「慈愛あふれる良き村だ。結論は出た。村長よ。聞け。越冬の薪を脅しの材料にして人身売買の真似事をするとは言語道断!」


 アーサーさんが岩の上から剣の切っ先を、村長の眼前に突きつける。


 村長は全身の脂肪を振り乱して叫ぶ。


「ひいいっ……! ち、違う! わしは何も間違っていない! メイは処女ではない! 兄のアレルが性欲のはけ口にしている! 非処女だ! メイは聖女候補ではない! だ、だからわしは、教会に背いていない! 女神様を裏切っていない!」


 苦し紛れの言い訳だが、信じてしまう人もいるかもしれない。

 だから俺は、なんらやましいところがないことを強調するため、余裕たっぷりに冗談めかして反論する。


「俺は羊飼いだぞ。性欲のはけ口には困らないだろうと言ったのは、村長、あんただ。メイは立派に聖女候補だよ」


 ドッと笑い声が起きた。

 羊飼いが何ヶ月もひとりで旅をして孤独な夜を過ごすことを村民は誰でも知っている。


 ただこれは、村民にはウケたが騎士たちには不評だったらしく、冷たい目を向けられてしまった。

 ラルム教では、人間とモンスターの間に生まれた子が魔族だと教えられているので、動物姦も心証は良くないだろう。


 しかし、予期せぬ援護がある。

 村人の中から女が歩み出た。夫が傍らに寄り添っている。


「騎士様……! ラルム様の慈悲にすがり、私の罪を告白させてください」


「女よ。いったいどうした」


 女は夫と視線を交わしてから、語りだす。


「この者は、昨年一緒になった私の夫です。私たちは、司祭を務める村長様の祝福を受けて結婚をいたしました……」


「ふむ。続けなさい」


「私たち夫婦はともに両親に先立たれており、子の作り方を知らぬままでした。うっ、ううっ……。そのことを知った村長は……」


「や、やめろ! 何を言うつもりだ!」


「黙れ。さあ、続けて」


 村長が喚こうとするが、アーサーさんが叱責してとめた。


「わ、私と夫の結婚式が終わった後に、村長は、子の作り方を教えてやると言い……。ううっ……」


 女は泣き崩れてしまった。夫が肩を抱き、つらそうな表情を浮かべる。


「無理して言うな。あとは俺が……」


「よい。お前たち夫婦の主張は理解できた。村長よ。随分と悪辣なことを繰り返してきたようだな」


「ち、違います。こいつらは嘘をついています! わしの財産を狙う浅ましい奴らです!」


 村長が叫んだ直後、群衆の中から別の声が上がる。


「黙れ! お前は俺たち夫婦の間に子ができないことを、子種に問題があると言い、治療と称して俺の嫁を犯したではないか!」


「俺が幼く無知だった頃、健康になるためのまじないだと言って、襲っただろう!」


 村長、お前、ヤッてんなあ……。

 次々と余罪が出てくる。

 村長が必死に「違う! 違う!」と否定するが、村民の声は止まらない。


 俺は騎士たちに背をむけ、口元を手で隠してやや裏声気味に「ぶちのめせ!」と叫んだ。

 すると村人たちも「ぶちのめせ!」と叫び始めた。


 喧噪がクライマックスを迎えたころ、アーサーさんが剣を頭上に掲げ、陽光を反射させる。


「村民たちよ。その苦しみ、よく理解した」


 声が戦場に広がる号令のように轟くと、村人は実った麦畑のように静まった。

 誰もが判決の時を悟り、ただひとり村長だけが喚き続ける。


「嘘だ! う、嘘だ! 悪魔の手先どもめ! わ、わしを陥れるつもりだ! ううっ! ああっ! 嘘だ!」


「村長よ。口を閉ざせ。さもなくば法ではなく剣による裁きが即座に下されるぞ」


 アーサーさんが脅すと、村長は涙と鼻水を垂らしたまま顔を歪めて沈黙。


「村長よ。ラルム様の慈悲に感謝しろ。ラルム教では死刑を認めていない。よって、ラントの街にて地下牢に監禁10年とする。なお、刑罰の期間中は、水や食事は一切与えられない。ただし、ノルド・モンターニュの村人よ。諸君らが村長に対して慈悲を示すというなら、食料を届けることを許そう」


 なるほど。つまり、死刑だ。

 この村には牢がないから、徒歩で往復4時間くらいかかる街に監禁される。

 村長に家族はいない。これから冬になるのだし、4時間も歩いて食料を届ける物好きなどいないだろう。


 そのことを村長自身は分かっていないようだ。

 村長は安堵のため息をつくと、もぞもぞと動いて村民たちの方へ体を向け、横柄な笑みを浮かべる。


「ぐ、ぐふふ。一時はどうなるかと思ったが……。お前たち、分かっているな。毎日欠かさず、私の元に食事を届けるのだ! ぐふっ。ぐふふっ。女たちよ、わしの世話をさせてやるぞ。ぐふふふっ」


 シーン……。


「ぐふっ? ど、どうした、お前ら」


 村長の言葉に返事をする者はいない。


「アレルよ。お前はわしに食料を届けてくれるよな?!」


「そうですね」


「おおっ! やはりアレル! お前は他の奴らと違って感謝を忘れていないようだな!」


「ええ。俺はこれから魔族討伐の旅に出ますが、生きて帰ってきたら食糧を届けますよ」


「そうか。楽しみにしておるぞ! ふひひひっ!」


 ん?

 数ヶ月の旅の後に食事を届けるという皮肉が通じなかったのか?

 壊れかけているのか?


「ラルム教による裁きは終えた」


 騎士アーサーが宣言した。

 ぶんなぐれなかったのは残念だと思っていると、まだ続きがあった。


「引き続き、リュテ教による裁きはおこなう」


 ……ん?

 続きがあるのか?


 村民がざわつき出す。


「村長の罪は多岐にわたる。聖女を侮辱し世界の法に反した罪は、ラルム教が裁いた。だが、己の獣欲を満たすために諸君ら村人の尊厳を踏みにじった罪は、まだ裁かれていない。村長より被害をこうむった村人よ、2列に並べ」


 アーサーさんが言い終えると、従者が前に出てきて村人を誘導する。

 30人ほどが2列に並んだ。多ッ……!

 全体的に若者が多い。女性25、男5くらいか?

 何が起こるか分からないが、とりあえず他の人に順番を譲り、俺は列の最後尾についた。

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