3-3. 真実の愛。俺は母さんが大好きだ!
母さんが土間を四つん這いになって近寄ってくる。
悪い意味で縫製が甘く体にフィットしていない緩めの衣服だから、襟元が垂れて、胸がチラリと見える。薄暗い室内の中で、谷間の影が深い線になっていた。
母さんは巨乳だ。
貧しい生活をしているから痩せているのに、山羊乳や山羊肉による動物性タンパク質が豊富な生活をしていて、栄養が胸にしっかり届いている。
文明が発達していない世界においては、時として、田舎の方が都会よりも豊かな食生活を送っている場合がある。
これはおそらく中世ヨーロッパでもそうだっただろうが、都市部は食糧生産量が少ないのに人口過密で、家畜を労働力として使うことが多く、野菜の摂取量が少なく、水は工業廃水で汚染されていた。
一部の街では人口が増えすぎて、路上に排泄物を捨てるしかなくなることもあった。
都会の人が健康的な生活を送れるとは考えにくい。
一方で山村は、自然の果物や豆やキノコが採れるし、野菜を育てる畑や、鶏や豚などの家畜を飼える広い土地があるし、山羊や羊から肉やチーズもとれる。ビタミンも食物繊維もタンパク質も摂取できた。水だって綺麗だ。
広いから当然汚物を廃棄する場所も作られるので、窓から路地に向かって排泄物を捨てる必要もない。
田舎は、都会よりも健康的な生活を送れる条件が整っている。
これは現代でも共通していて、都会では様々な食材が手に入り、多種多様なレストランが並ぶ一方で、流通する食材は輸入に頼っているので鮮度は低いし、空気や水は汚染されていることがある。
一方で田舎では、地元で採れる新鮮な食材を利用した名物料理があるし、水や空気は綺麗だ。
つまり、田舎で生まれ育った母さんは健康的な食生活により美しく魅力的な女性になっている。
艶があり女性的な香りが漂う肌は、薄暗い屋内でも女神の衣のようにキラキラと輝いている。
「ほら。アレル。母さんが子どもの作り方を教えてあげるから。貴方はじっとしていなさい」
「……え? ……あっ!」
母さんの指が……!
水くみや、編み物、麦の刈り入れ……。日が昇ってから沈むまで働き続けた女性の節くれだった指が俺の手に重ねられた。
これは、俺たちを愛情たっぷりに育ててくれた真実の愛の手だ。
指から優しいぬくもりと真実の愛が伝わってくる。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
お前、ちょいちょい真実の愛って言うな。
それはそうと、パンツ脱ぐから回想とめて!
我は覚悟を決めた!
お前の回想に最後までつきあうぞ!
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■自分
やめろ。パンツ脱ぐな!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
全裸待機完了!
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■自分
ぶちのめすぞ!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ぶちのめすな。
我は準備完了だ! 早くぶちこんでくれ!
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■自分
なに言ってんだテメエ……!
回想終了!
……ッ!
で、できないだと……?!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くくくっ。
人間が我に抗えると思うのか?
貴様は余すことなく過去を我にさらけだすのだ!
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■自分
くっそ、魔王が……ッ!
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「ううっ……! ああっ……!」
日本でアダルトコンテンツに接したことのある俺でも、今の肉体は15歳。
指で触れられただけなのに、若さが反応してしまった……!
頭がおかしくなりそうだ。
記録媒体や情報伝達手段が限られている世界だから、親が子に、赤子の作り方を教えるのは、ごく自然でなんら問題のない行為だ。
父を亡くした俺に、母が教えてくれるのは、ごく自然な成り行きだ。
そ、そうだ。
俺は現代知識があるから子どもの作り方を知っているが、本来なら、まだ知らないはずだ。
母さんに教わるべきだ!
俺が日本人の転生者だというのは、ただの思いこみだ。
気のせいだ。
そうだ。俺は真の赤子の作り方を知らない。
母さんの右手が、俺の服の裾をめくる。
母さんの手はするするっと胸板や腹を撫でてくる。
密着するほどに近づいたせいで、母さんの首筋やうなじが……。
ううっ……!
母さんの右手が俺の股間に伸びる。
「緊張しなくていいわ。母さんが優しく教えてあげるから。貴方の父さんだってしたことなのよ。怖くないわ」
……父さん!
そうだ。父さん!
俺は父さんのことも、家族として愛している!
それもまた真実の愛だ!
俺は父さんの愛した母さんを寝取りたくない!
「はあはあっ……! か、母さん!」
がしっ!
俺は母さんの手首を掴んだ。
「アレル?」
「ううっ。母さん……! はあはあ……」
ぐぐっ!
俺は母さんの腕を持ち上げて押し、小柄な体を仰け反らせる。
「どうしたの。アレル? やり方は知っているの? 貴方のやり方で試したいの?」
困惑した母さんの表情が可愛い。俺の嗜虐心をくすぐってくる。
「お兄ちゃーん」
「兄ちゃー」
不意に入り口から俺を呼ぶ声が聞こえた。
妹のメイとユーノだ。その声が最後の一押しとなり、俺は母さんから離れることができた。
ありがとう。父さん。メイ。ユーノ。
3人のおかげで俺は過ちを犯さずにすんだ。
「母さん。今の話は、また今度にしよう……」
「分かったわ。でも、いつまでも先延ばしにはできないわよ?」
「ああ……」
「お兄ちゃん、おうちの中ー?」
額縁のように四角く切り取られた光の中に、12歳の妹メイと、8歳のユーノが現れた。ふたりとも手に棒を持っている。羊飼いの練習をするために近所の山に行ってきて、その帰りだ。
「お帰り。メイ、ユーノ」
俺は這いながら立ち上がり、入り口に向かう。
木製の簡素な小屋の出入り口に戸はなく、木の板を立てかける仕組みになっている。日中は木の板を外しているから、俺はそのまま外に出る。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
はあはあ……。エッチシーンは?
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■自分
あるわけないだろ。ぶちのめすぞ。
俺の回想シーンは全年齢向けだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
なあ、なんで記憶のお前はちょっと前屈みなの?
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■自分
分かるだろ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
分からないが?
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■自分
俺は母さんに誘惑された直後だろ……!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
だからなんで前屈みになるの?
ねえねえ、なんで?
どうして?
教えて?
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■自分
ぶちのめすぞ!
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家の周りは木製の柵で囲ってある。
だいたい自動車4台くらいが止められそうな土地だ。
そこに羊が5頭とふたりの女の子と、ひとりの男の子がいた。
女の子はふたりとも俺の妹で、名をメイとユーノという。
俺の現代知識を基にして作られた、女学生の制服のような服装をしている。
Webファンタジー定番の展開なのかも知れないが、村の祭りで、特別な可愛い格好をさせてあげたいと母が悩んでいたので、俺がアイデアを提供したのだ。
なお、スカートの下にはスパッツを穿かせているので、パンチラはしない。村のガキどもに、美しい母さんの娘のパンツを見せるつもりはない。
メイとユーノが近寄ってきて、頭なでなでを催促してきたから、なでてあげる。
幼い頃の母さんと似ているのかも知れないと思うと、可愛さ倍増だ。
「お。ちゃんと5頭、連れて帰ってきたな。えらいぞ」
もちろん、ふたりと一緒に羊飼いの練習をしていた近所の少年リュオも褒めてあげる。
「リュオも偉いぞ。怪我はしてないな?」
「うん! オレ、すっごい頑張ったし!」
手にした棒をぶんぶん振って元気をアピールしてきた。ご近所さんの子どもだ。妹に棍棒の使い方を教えるついでに、彼にも教えている。
鼻の頭に土がついていておまけに鼻水を垂らしているから、俺はリュオの鼻をつまみ、レベル0の水魔法で洗ってやる。
リュオも心得たもので、服が濡れないように頭を下げた。
「俺! スライム、一撃で倒したんだぜ!」
「偉いぞ。でも油断はするなよ。ほら。上向け。ガラガラペーするぞ」
リュオに上を向かせ、口の中に水を流し込んでうがいをさせ、握手して水を出して、洗ってやった。
この世界にはまだ手洗いやうがいをする風習はないが、俺が遊牧中に出会った長命の賢者から聞いた技として、知り合いや家族に勧めて半ば強制している。
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■自分
ほら。存分に拝め。
こいつだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ん?
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■自分
俺、最初、『Xitter』お前を見つけたとき、こいつだと思ってた
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
は? なんで?
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■自分
『Xitter』のおすすめアカウントで家族の次に、お前の名前が出たんだよ。
魔王って人間界でも結構話題になっていたから、おすすめされたんだろう。
分からないと思うが、SNSってそういうもんなんだよ。
なんの接点もない有名人がおすすめされる。
近所の人間がおすすめされることもある。
リュオは俺の隣の家に住んでいるんだ。
だから、俺は、お前をこいつだと思ってフォローしたんだよ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
はー
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■自分
近所のガキが魔王ごっこしているんだと思ってるから、そういう態度で接したんだよ。プライドを傷つけていたらすまんな
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
まあ、気にしてはおらん。
しかし、このガキかあ。
我が世界を征服することになった場合でも、こいつは殺さないでやろう
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■自分
征服すんな。
あと、母さんと妹も殺すなよ。
この村で殺していいのは、俺の母さんや妹を性的な目で見る独身男だけだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
わ、我はお前を殺したくない……!
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■自分
何故そうなる
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庭の隅っこでは、レストがお行儀良くお座りして『俺も褒めろ』と言わんばかりの目で尻尾を振っている。
「レストもお疲れ」
レストには特別に、頭だけでなく顎もわしゃわしゃと撫でてあげた。
「クゥルルルル!」
気持ちよさそうに鳴いてくれるから、撫でがいがある。
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
わーい、ボクだ! やっとボクが回想にでてきた!
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■自分
お前ではない
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
レストもボクと同じくらいアレルのこと大好きだよ!
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■自分
だとすると、お前、俺のこと好きすぎん?
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
レストとはどこで会ったの?
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■自分
ん?
そういえば俺がガキだった頃のシーンを飛ばしたから、レストを拾ったときのことも飛ばしてたか。
そのシーンに戻るか
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
それはまたこんどでいいだろー。
今は、このまま続けろ
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■自分
魔王はこう言っているが、ケルリルはどう思う?
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
うーん。じゃあ、レストのことはまたこんどでいいよ!
本人に直接聞くし!
ボク、わがまま言ってアレルを困らせたりしないもん!
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■自分
そっか。いい子だな
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
えー。えへへ……
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
えへへ言った!
ほら、アレル、ぶちのめせ!
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■自分
なんでだよ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
前、言ってただろ。えへへって言って許されるのはお前の妹くらいの年齢までだって
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■自分
レストもケルリルも妹より若いだろ……
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くっ……!
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リュオは「オレ! 帰る!」と元気よく自分の家の方に走っていった。
「またな。転ぶなよ」
「アレル! 今度、槍の使い方も教えてね!」
「分かったからこっち見んな。危ないぞ。前を見て帰れ」
元気な少年を見送り終えると、メイが「ねえ、お兄ちゃん」と袖を引っ張ってきた。
「ん?」
「さっき村長に『今からおうちにおいで』って言われた。羊やユーノがいたから断ったけど……。『羊を置いたら、ひとりでおいで』って」
「そうか。なんの用だろう。豚の解体でもするのかな?」
とりあえず、メイとユーノに上を向かせて水を流しこみうがいをさせる。
「んっ、んぐっ。お兄ちゃんの、美味しい……」
「こら。メイ。指をしゃぶるな。訳の分からんことを言うな。餌を待つ雛みたいに口を開けてろ。ユーノもしゃぶるな。俺の指はおっぱいじゃない」
俺の魔法で出せる水量は限られているから、こぼれないように人差し指を口に近づけているから、すぐに咥えられてしまう。
「ほら、がらがらぺーしろ。がらがらぺー。よし。次。手を出せ」
うがいをさせたあとは、握手して揉み洗いしてやった。
「わーい。お兄ちゃんと握手~っ。お兄ちゃんの手、温かくて大きくて好き~」
「ユーノも兄ちゃ、好き~っ」
二人とも父さんをなくして寂しいんだろうな。俺を父のように思っている。つまり、母さんの夫ってことか。やはり俺と母さんは結ばれる運命にあるのか?
それから俺は家の中に振り返り「ちょっと村長のところに行ってくる」と母さんに声をかけた。