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2-5. 定番の魔法測定と物理攻撃測定をする!

 入学試験が始まった。

 やることは、まあ、日本人的には「Web小説の数だけ見た試験」と言いたくなるくらい、あるあるだ。


 魔法射撃訓練場みたいなところで的に向かって魔法を放つやつだ。


「これより、魔法力の測定をする。受験者は順に並ぶように。私物の杖やロッド、その他、魔力をブーストする高価のある道具は使用禁止する」


 受験は初めてなのに、試験官の説明した内容は既に知っている不思議……。


「くくくっ。あいつ、試験内容を知ってビビッてるぞ。田舎には魔法攻撃力を測定できる、魔道具のダミー標的なんてないんだろうな」


 右後ろの方からヒソヒソと聞こえてきた。デコっぱちたちだろう。

 数百人の受験生がいるのに、お前達、俺のこと見ているのか?

 俺のこと好きすぎだろ……。


「さあ、一組め、並びなさい」


 的や射撃位置は10セットあって、生徒たちは綺麗に並んでいるわけではない。やりたいやつから並ぶ仕組みのようだ。この世界にはまだ一直線に『並ぶ』って概念がなさそうだ。


 どうせ結果は見えてるので、俺は真っ先に射撃位置に移動した。

 すると、デコっぱちだちがやってきて、俺の隣に並んだ。


 視界の片隅でデコっぱちたちが俺の方を見てニヤニヤしている。

 マジで俺のこと好きすぎだろ……。俺のファンか?


 俺は台の上にあった魔法の杖を手にする。

 ただの古びた木の棒にしか見えない。

 宝石がついているわけでも先が膨らんでいるわけでもない。丸かいてフォイッて感じの人が出てくる映画見たいな、細い棒だ。

 触れても特に何も感じない。


 試験官のすぐ近くに来てしまったし、真面目感をアピールするために、詠唱でもするかあ。


「大気の酸素と水素よ結合し、水流となりて我が敵を討て!/

 :球状の標的に向けて杖の先端を勢いよく振り下ろす。

 /一酸化二水素ジハイドロゲン・モノオキサイド!」


 ざわっ……。ざわっ……。


「な、なんだ、聞いたことない魔法だ」


 審査員が驚いて独り言を漏らした。


 いや、なんていうか、普通の水を敢えて科学的に複雑に言っただけの、一時期はやったインターネットミームだ。一酸化二水素ジハイドロゲン・モノオキサイドの中に長時間閉じ込められた者は死ぬ(ただの溺死)!


 チョロチョロチョロ……。


 おおっ!

 さすが魔法の杖。先っちょから、図書館にある水飲みマシーンくらいの勢いで水が出てきた。

 俺の魔法はレベル0だから、ちょっと感動するレベルだ。


「ぷっ……! 君、その程度かい? 標的まで城壁の高さくらいの距離しかないんだよ? そこにすら届いていないじゃないか。僕の魔法を見ていなよ」


 デコっぱちが笑っている。だから、お前、そういうところで減点を喰らってるんだろ……。


「猛き炎よ、眼前の目標を焼き払え! ファイアーボール!」


 ゴウッ!


 デコっぱちの杖からバスケットボールサイズの下級が飛んでいき、的に命中した。


「ふふっ! どうだい。この威力とコントロール! これがパレンミラ騎士学校の生徒にふさわしい魔法さ!」


 鶏を焼くのに便利そうな火力だった。ちょっとうらやましい。


 \ ★★★ /


 目標の土台に5つある石が3つ輝いた。


 順番待ちの受験生たちがざわついたから、彼は態度が悪いだけで凄いやつなのかもしれない。


 取り巻きたちも的まで届く魔法を放った。石は2つ輝いた。

 3人はニヤニヤしながら俺の方を見てくる。

 俺は気にせず直立不動で標的の方に体を向けたまま、試験官の指示待ち。


「よし。杖を置いて、交代だ。次の受験生」


 俺は両手で丁寧に杖を台に戻すと、試験官の指示に従って、射撃位置を離れた。


 その後、俺は他の受験生を見学した。


 どうやら試験会場に、ラノベの主人公はいないようだ。とんでもない魔法を放ち「なんかやっちゃいました?」アピールするやつはいない。


 さて。

 受験者の中に花魔法とか石魔法とかを使う人がいて、ちょっと羨ましい。

 花魔法は花に限らず植物にも有効なら、野菜を育てられる。石魔法は家を作れるかもしれない。


 一通り見学し終えて分かったのだが、デコっぱちの星3は結構凄かった。4つ輝いた者はいなかったし、3つでも数人だ。多くの人が1か0だ。俺が特別弱いわけではないから、少し安心。


「続いて物理攻撃の試験を行う! 準備をするからしばらく待つように」


 お。きた。

 こっちでアピールしよう。

 試験に合格するつもりはないが、デコッぱちより好成績を出したい。


 在校生らしき若者がわらわらと出てきた。

 今度のはサンドバックみたいな円柱の標的が近い位置に設置される。

 さらに、台から杖が片付けられて剣が置かれた。


「私物の剣や槍、その他、魔力をブーストする効果のある武器は使用禁止する」


 ……え?

 あれ?

 もしかして、剣のみ?

 棍棒は駄目?


 とりあえず初回は見学に回るか。

 俺は他の受験生の様子を見た。みんな剣を振っている。試験官に許可をもらって持参した武器を使う者はいない。


 ……聞いたら駄目かな?


 多分、駄目だよな。騎士学校だから剣が必須なのだろう。

 ヤバい。俺、剣なんて持ったことすらない。


 3回目くらいのターンで俺は試験を受けることにした。

 開始位置に移動する。

 デコっぱちたちがわざわざ俺と同じターンにやってきた。ただ、デコっぱち自信は剣が得意ではないのか俺から離れた位置だ。体の大きい取り巻き2名が俺の左隣に並んだ。


 さて。選べる剣は全3種類。細い、太い、中くらいだ。

 俺は素人だから、斬るより剣の重さを活かしてぶつける方がいいな。

 両刃の大きな剣を手に取る。重っ……。

 当たり前だけど、木の棍棒より、金属の剣の方が重いよな。


「それでは各自、自分のタイミングで始めなさい」


 試験官が合図すると、真っ先に取り巻きAが駆け、勢いをつけて目標を切りつけた。

 すると、目標の土台にある5つの石のうち3つが輝いた。

 他の受験生は1個か2個だったので、それなりに良い成績のようだ。


 さて、俺は……。

 走らず歩いて目標の前へ移動。

 斬るのではなく、敵の甲冑を叩き割るつもりで、頭上に振り上げ、真っ直ぐ振り下ろす。


 目標が円柱だから斬りにくい。これ、完全に横方向の打撃を想定しているだろ。


 ドゴッ!


 \ ★☆ /


 2個だけど、1個は輝きが弱い……。


 開始位置に戻り剣を返却した。


 また、デコッぱち達が俺の方を見て、くすくす笑っている。

 いや、でも、取り巻きは星3だけど、デコッぱちは星1だよな?

 俺より下だろ?


「ひととおり終わったな。では、次の組みと交代しなさい」


 俺は受験生の待機列に戻る。

 うざガキ3人集が俺の後ろをついてくる。


「ぷっ。あいつ落ちたね。魔法が使えず、剣もザコ。なんの取り柄もない。合格基準は魔法か剣のどちらかで3つを取るか、合計で4個取ることだからね」


 デコっぱちは嫌みを言っているようだが、情報源になるから普通にありがたい。


 しかし、合格するつもりはなかったとはいえ、合格基準に達していないというのは、それはそれで悔しいな。


 物理攻撃試験はひととおり終わった。


 在校生らしき子供たちがやってきて、試験会場を片付け始めた。


────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

あれ?

試験終わっちゃった?

────────────────────

■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ

アレル、ぶちのめさないの?

────────────────────

■自分

次だ。

戦闘試験があるんだよ。そこでぶちのめすから

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

あ。なるほど。

戦闘試験なら合法的にぶちのめせるんだ

────────────────────

■自分

そういうこと

────────────────────



 試験官が台に立つから、俺は耳を傾ける。


「会場の準備ができ次第、戦闘試験を行う! 当校はこの結果を最も重要視する。ルールは単純。受験生全員で戦闘をし、試験終了時に立っていた者を合格とする。降参する場合や戦闘試験に不参加の場合は、今までの試験がどれだけ好成績だったとしても不合格となる。訓練場全体にデバフをかける。諸君らの攻撃力では死人は出ない。だが、不慮の事故があったとしても試験の合否には影響しない。全力を出したまえ。私物の武器を使う場合は、試験官に申し出ること。魔法効果を封印した上でのみ、使用を許可する」


 よし。私物使用可だ。短槍と棍棒が使える。

 俺はさっそく試験場入り口脇にある受付スペースに行った。武器確認担当者は4人いるが、受験生は50人くらいが殺到した。並べないのか、こいつら……。

 俺は集団から一歩下がったところで大人しく待った。

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