8話目
土曜日ということもあり、白木さん家にきていた。30m近い深井戸が庭にあるという。
下見という事で軽装できた。
井戸は錆びた鉄板で覆い隠してあった。
鉄板には空気用の穴だろうか?不恰好に複数の穴が見られた。ただ、こんは穴では地下に空気は送れない
屋敷側から空気を送り込む何かがあるのかもしれない
それほど重くはないのでしっかり蓋を閉めながら井戸に入っていった
白木さんには声をかけずに忍び混んでいる。
ヘッドライトなどは事前に貸して貰っているし、電池はたくさんある。ロープで降りると軽く探検家にでもなったようで楽しかった
井戸の底にたどり着くと、そこは枯れ草が詰まっていた。かなり深く積もっている。最近刈り取ったものを捨てたのだろうか?
庭は草だらけだったのに、刈り取ることがあるのだろうか?
そういえば白木さんはレンタカーを借りているそうだ。その時に止めるスペースを確保するために刈り取った可能性はある。
わざわざこんな所に捨てなくてもいいのに
「くーるー、きっとくるー」
うるさいおまけまでついて来ているので雰囲気もあったもんじゃない。
クライミング用のハーネスをつけてきたおかげで少し気分は高揚しているのにだ。
心細さがないっていうメリットはあるのだけど。コイツじゃない感はある。
井戸の中をみると横に大きな穴がある。
この方向は…白木さんの洋館の方か。
遠い距離でもない。
通路ではシューシューと空気がきている音がしていた。
掘られているのは深い縦穴ばかりだ。50mぐらい下に降りるたびに底につく。その度に横穴が掘られている。屋敷の周りの地下をぐるっと回っているようだ。
荷物を下ろす分には苦労はしなさそうだ。ロープに括り付けて下ろすだけでいい。
「割と単調な下りばっかりで安心したよ。探検としては少し物足りないけどね」
「こんなダンジョンの入り口でもないところで、一々神経すり減らしたいの。キャッキャッキャ」
冬だというのに、地下は熱い。汗ばんだ軍手…。ここまで深く掘ったとは恐れ入るね。
暑さに耐えかねて、ポーチから制汗スプレーを取り出した
涼しい
制汗スプレーは地下で使ってもいいのだろうか?ガスが使われていたような…
あとで調べてみるか
「くさいって、それ。あーそうそう。もうそろそろ底にたどり着くよ。キャッキャッキャ」
嗅覚はあるのか…どんなに小さい事でも記憶せねばならない。
慎重すぎるぐらいで丁度いい
ダンジョンの近くまでやってきたが…
「ダンジョンの扉が外されてる…」
床にドアが置いてある。さすがにこれを運ぶのはきつそうだな。お金になるかもしれないのにね
「扉を開け閉めするだけで習性が変わるダンジョンだからね。何があるかわからないから取り外したのさ」
なるほど…取り外したのは白木さん…と。
つまり彼はここまで来ることが出来たということだ。
「ダンジョンの通路の幅を測ったら、今日は下見だからもう帰るかな。」
「ダンジョンを少し覗かないの?」
「必要物資を整えてからではないと危ない。それに不思議とあくびがでてくる。このままだらだらと長時間はいたくないかな」
食糧はどうしようか…
食中毒を引き起こす細菌の多くは20度ぐらいで増殖が活発になる。
35度から40度は最も増殖するっていうんだから。こんなところに置いておくのは自殺行為だ
そういえば、井戸の底には枯れ草が詰まっていた。氷室の作り方って確か稾で作るんだったよね。
またはクーラーボックスの方がいいか?
時期は冬だし、直射日光さえ避ければそこまできにしなくてもいいだろう。
ダンジョン終わりに一杯冷えた飲み物を…。うん、悪くはないね。食糧を隠すにはもってこいだ。
必要な経費は白木さんに請求するとして、一部自分の貯金から買い足して色々隠しておこう。
壁の中に食糧を埋めて隠すのもありかもしれない。人間が1番怖いってよくいうもの。
白木さんはそこそこのステータスをもっているのかもしれない。油断は出来ない。
「あと、聞きたい事がある。ダンジョン床も信用出来るかわからないってことで間違いないか?」
「それは、ダンジョンにもよるよ。罠だらけのダンジョンっていうこともあるよ。その代わりモンスターはいないっていうね」
床のタイルを1度に踏めるような台車がいるな。そこに人の重さに匹敵する石をのっける。通路の向こう側まで届くように全力で押すのだ。
床のタイル全部に均等に重量は乗るだろうか?
台車を数個作って縦横に連結させてみるか。
それよりも…ラジコンカーで通路の先を確認は…どうだろうか?
…いやないな。ダンジョンで文明の力を使い出したら、雰囲気が壊れてしまう。
出来たら罠を含めたマッピングはやりたい。
あとは、壁のトラップの解除だが…こういうのは絶対触らないといけないというわけでもない。無視すればいい。
「やる事はいっぱいありそうだ」
あんまり木工作業も得意ではないし大変そうだな
深いため息をついた
それにしても…
「やっぱり少し息苦しさがあるな」
エアーコンプレッサーで無理やり地下に空気を送り込んでいるのかもしれない
シューシューうるさい
こんなん、少しエアー漏れしているだけだ。
手を当ててみると空気圧が弱い気がした。
配管はしっかりしたものにみえるけど。工場で使われていたものをそのまま流用したのかもしれない。
使い方間違っているような気もする
まともな風管や送風機ぐらいつけて欲しいな。
トンネルのジェットファンなんて、みる度に感嘆するというのに。
車が通るわけでもなし、排気ガスがあるトンネルとはまた違うのかもしれないけどね。
ただ、地下に溜まるガスって怖いものがある
二酸化炭素CO2(44g/モル)、酸素O2 (32g/モル)
二酸化炭素の方が重いから地下に溜まりやすいんだった気がする。
地下は息苦しくて当然なんだろう
酸素ボンベはどうしようか…。貯金が吹っ飛んでいく。お年玉が…消えていくな
「あれ、通路をみてよ。光が見えるよ」
慌ててヘッドライトを消した。
だが、どうやら気のせいだったようだ。
「こっちのヘッドライトの光だったみたいだね、キャッキャッキャ」
心臓に悪い冗談はやめて欲しい。
白木さんか、または拉致した誰かがいるのではないのかとヒヤヒヤするのだ。
「第三者なんか出てきたら、話が複雑になるからやめてくれ」
「じゃあ私が爺ちゃんを監視しておくよ。どうせ一緒にいても何も役に立たないし」
「ただ…役立ったとしても…爺ちゃんの尻を追っかけて楽しいわけもない」
テンションがガタ落ちしているようだった。一緒にいたいわけでも無さそうだ




