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オオバコ  作者: 清浄
6/36

6話

夜更け過ぎに神社の階段に座り、ただ茫然としていた。



雨がポツポツと振り、寒空をより冷たく感じさせる。冬という事もあり身体が冷えてきていた。


こんな時間に外を歩いていたら補導されてしまうかもしれない。中学2年ということは流石に誤魔化しきれないだろう。




悩み事なんか沢山ある。ただ、それを相談出来る相手はいない。

母は男の家に入り浸り、長いこと帰っていない。父親も1年前の事故で亡くなっていたし。幼馴染に関しては、事故の影響で下半身が動かせなくなり車椅子生活だ。

綺麗だとは思うが、顔も以前とは少し変わったし接し方がわからない。



あの事故で僕だけが…


「…はぁ…」


ため息をつくと幸せが逃げるというけども。これ以上幸せは逃げる事もないだろう。


幼馴染の顔をみると、事故がフラッシュバックする。







しばらく暗がりを見つめていると、階段を登ってくる人影がみえた。


だからと言って急に立ち上がって、歩き出すのは気まずいものを感じるのでスルーする事にする。




なんだってこんな時間に登ってくる奴がいるのだろうか…




もしかしたら警察…だったらまずいと思った。そういえば…自転車が下にある。それがまずかったのかもしれない。補導されるのかもしれないと今更ながら気がついた。


目をよく凝らしてみると…、巫女服を着ているようにみえた。


補導では無さそうで安心はした。

神社の関係者かもしれない。





「こんなところにいたら補導されてしまうよ」



その人影は少し離れたところから、そんな事を言った。


「神社の関係者ですか?すみません。今、帰ります」



「時に少年、何か悩みごとがあるんじゃないかな?私でよければ話は聞くよ」


「教会だと懺悔を聞いてくれるけど、神社だと悩み相談でもしているんですか?」


「神社は普段信仰もしていない神に勝手なお願いだけを押し付けていくところだよ。願いがあるならば言うのもありだと私は思うな」



御利益信仰っていう事だろう。

全く叶いそうのない響きに感じてしまうのは気のせいだろうか?


「願いない事もないけど…」










そこから10分ぐらいそいつから、頼み事を聞く事になった。


唐突にダンジョンのことを聞かされ、訝しんだ。都合が良すぎる事を聞かされれば詐欺を疑う。


この前、駅近を歩いていたら。もしかして仕事を探している?と唐突に話しかけられた事を思い出していた。夜道というものは危ない。闇バイトって言う事もある。




ただ…もう何もかも疲れていた。

物事の見え方が狭くなっている僕にそれを拒む手段なんか存在しなかった。

甘言を信じてみたくなる。










あれから3日経った。

僕にも心の準備というものがある。

驚かされる事なんかたくさんあった

あの境内であったのが人ではなくモンスターであったこともそうだが、それにまだまだ懸念材料があった…




自宅の縁側で寝転がって、もそもそと無気力に桜餅を摘む。



物思いにふける


お気に入りのスポットとはいえ、既に冬だ。

寒い…。



件のゴーストが話しかけきた



「ゆず〜、爺ちゃんには気をつけた方がいいよ。あの人はハンマーで殴って拉致しようとしていたのだからね。シオシオシオ」


ゴースト曰く、リアル危険人物だという。

今にでも、犯罪をしようって感じで考える猶予なんか残されていないかのようだ


「ゆず…ね。柑橘類みたいな言い方だな。勇洲気って言う立派な名前があるんだが…」


…というか馴れ馴れしい


「聞けば聞くほどに物騒な話だ。んで、話を断ったらゴーストに殺されるんだろ」


「そんな事するかー!!モンスター差別が酷すぎる」


ヒステリックな部分があるようだ。この話題を触れるのはまずい。


ぐだぐだと長い説教が始まってしまい、物思いにふけることすら出来ない



「はぁ…僕も何が何でも叶えたい事があるからね〜」



「んじゃ、契約成立って事だね?」


「んー、条件はダンジョンコアを破壊すること。ゴーストが望んだ時に身体を貸すこと…ね」


「その理由がビールを飲みたいって、そんなくだらないっていうか…。それに中学2年生。未成年だから無理」



「そこはご愛嬌という事で」


よくはない。


「僕の出来る範囲で、かつ迷惑をかけないっていうならその契約を飲むよ」



心理的に追い詰められていた。それが例え悪魔だとしても契約を飲むのは仕方ない





あの日、あの場所の事故を思いだすと、身震いする。人が死ぬ瞬間が脳裏に焼き付いている。割れた窓から覗くアスファルトの血溜まり。それが誰のものか最初はわからなかった。

血溜まりはどんどん広がっていった。どこまでも広がり続ける血溜まりに恐怖した。


車の後部座席に乗っていたはずなのに最前列にいるようなそんな錯覚。


夢なら醒めて欲しい。昨日に戻して欲しいと涙をした。


1人分どころの血ではない。どこまでも広がっていく血溜まりにやめてくれと心の中で叫んだ。


それから…横の座席を向くと…





「不気味な顔は嫌だと、私は言ったはずだよ。人生は楽しくなきゃ」



「不気味な顔なんかしてないさ。明るく前を向くための契約だと僕は思っているよ」


愛想笑いをするしかなかった





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