26話
「はっ?」
「何言っているかわかってますか?何人死んだと思ってますか?ご冗談にしては…」
「確率のダンジョン…。今の時代だと別のサーバーに飛ばされるダンジョンかのように言われているね」
「私の時代でも、その仕組みを選定なんて呼ばれ方をしていた。人とは夢みがちな生き物だ。物語を書くにも都合が良い。ダイヤの原石のような男を待っている。あるいは、その真逆の人間をダンジョンが欲しているかのように」
「…一体いつの時代だというんですか…」
「正確には…わからない。紀元前の何れかの時代ってことだ」
「馬鹿馬鹿しくて、付き合ってられない…」
僕は話しを切り上げて男の前から去ろうとした。
だが、男に肩を掴まれ止められてしまった。
「確率のダンジョンは、別のサーバーに飛ばされるダンジョンなどではなく、別の時間軸に飛ばされるダンジョンという話しさ…。ダンジョンから出る時にリセットされているから気づかない。唯一、気づく事が出来るとしたらダンジョンブレイクさせた本人だけだ…」
「…」
「話しを続けても良いか?」
「…」
「じゃあ、勝手に話しをさせてもらおう。」
詐術師…そんな奴の話しなんか聞いても不快な気持ちになるだけだが…
彼の右腕を見れば、その可能性を否定しづらい。
そう考えている時点で術中にハマっているんだろう。一流の詐欺師なら、それぐらいやっていてもおかしくない。
それでも話しぐらいは…聞いておいた方が無難かもしれない。
「ダンジョンブレイクさせたタイミングで、理を失ってしまうのがダンジョンって話しさ。腕がこんな風になってしまったのは別の時間軸に飛ばされたからだ」
「昔あった言霊のダンジョンなんかだと、クルアと呼ばれる氷の球体の奥深くのダンジョンコアを破壊したから全部が墜落したりもした」
「変に勿体ぶってしまったが、これで私の話しは終わりさ…何か聞きたい事は?」
「特にパッと思いつくものは何も…いや、スキルオーブの材料とかさっき言っていたよね……」
「スキルオーブの材料は人間の魂さ。それを分霊させるって言えばいいか…私が知っているのは実験の段階まで…それだけだ」
「仮にそうだとして…それをわかっていて、傀儡スキルを持っているんですよね…」
話しが真実だとしても、信用出来る人物でもない。
「ダンジョンが次第に弱体化して来ているのはわかっているだろう?人は、それを危険視してスキルオーブを作ろうとした」
ダンジョンが攻略され過ぎたのが原因ってことだと思う
「………」
「……ちょっと待って、白木さん家の地下のダンジョンコアを破壊する事って……かなりまずいんじゃ……。」
「そんな事になるぐらいなら私は、君を殺す事になるだろうさ。最低でも、保管しておくぐらいじゃないと」
穏やかではないね…全く……。自分だってダンジョンコアを破壊したんじゃないか。
「別に、スキルが無くても…」
僕はその先の言葉が出せなかった…
スキルが本当は必要だと思ってしまったからだ…
「ドイツにある逆さダンジョンが、ダンジョンブレイクしたら、そうもいってられないだろうがね…」
「ドイツにそんな危険なダンジョンがあるなんて、聞いた事ない…」
やっぱり、頭のおかしい人なのかもしれない…。
だが、話し半分でも聞いておく価値がある話しではある…。
ダンジョンの希少性……。
自分の事だけしか考えていなかった事実は受け止めるしかない
「まぁ…私は嘘つきだから…信用しない方がいい。それで、君はいつダンジョンへ行くんだい?」
「今日だけど…」
あんまり予定を喋りたくないんだけど…
「私は戦闘職でもないし、合流は君らが強くなってからにするよ。もともと、その予定だったから」
「そうだ、この四つ葉のヘアピンを君にあげよう。これは親しい相手を見つける呪いさ」
詐術師が渡すものとか曰く付きなんじゃないだろうか?
男は僕の頭にヘアピンをつけた
ただ、ダンジョンコアを破壊した人間…その人間性を時間かけて理解してみようとは思った。もちろん気に入らない部分はある。
だけどもし理解したら、同じ立場なら同じ行動をする事もかんがえられる。




