四つ葉ドールその7
風の層がある場所を起点に大陸内では何本かの黒い川が流れているようだ。川沿いを歩いていくと居住地や、畑なんかが多く見られる。
堆積平野っていうやつなのかな。
生活するにも、畑を作るにもどうしてもこういった作りになるのだろう。
親方の家も居住地が密集している場所にあるようだ。
家の外を出て街道に出ると、地面には赤みがかった長方形のタイルが沢山敷き詰められている。
僕は周りを見渡した。
多くの家は煉瓦造りで街全体が赤茶色に染まっているというのが印象だ。
僕は、仕事のために荷車に柄杓とカラの桶を乗せた。
最初の仕事は、ご近所さん周りということで簡単に地図を書いてもらった。
初めての仕事というのはどうしても緊張してしまう。
しばらく辺りをうろうろした。
地図なんか見慣れていないからね。
そして、最初のお家の前に立ち、深呼吸をした。
僕はとても臆病なところがあるらしい。玄関のドアをノックするのに10分も時間を費やしてしまった。
胆力のある人間になれるのだろうか甚だ疑問だ。
コンコン
「しゅみません、親方さんの代わりにっ……回収に参りました。どなたかご在宅ではありませんか?」
出だしは声が上擦ってしまったが、なかなか上手く出来たのではないだろうか?
「はいはい、ちょっと待っておくれよ」
人が近づいてくる気配を感じて、半歩後退りをしてしまう。
それでも、仕事から逃げるわけにもいかない。
まだ何もしていないのに疲れている気がした。
どうやっても相対するのは大人ばかりになる。みんな僕よりもずっと背が高い。
力だってあるだろう。
どうしても萎縮してしまうのだ。
「んまー、これはめんこい子だねー」
20代後半ぐらいかな。青色の髪をしている。ここの地域の人は青い髪が多い印象をうける。
「例のモノを回収にきました。これ、カラの桶です。これと交換してください」
「若いのにしっかりしてて偉いね〜、はいこれだね。持っていってくれてありがとうね」
受け取った桶は布を被せてあるのだが、やはり少し腐い。
匂いに関しては覚悟しているからそれほどに動揺しなかった。
「これ、少ないですがお金です」
僕は鞄から貨幣を取り出して渡そうとしたが、返された。
「いいよ、そんなの。親方さんの肥料にはいつも助けられてるからね。持ちつ持たれつなところがあるし」
「畑をやられているんですか?何を育ててるんだろう」
「うちの畑ではラウンドフィッシュ育ててるよ」
「変わった名前の野菜ですね」
「おや、ラウンドフィッシュ食べたことないのかい?魚だよサ・カ・ナ」
畑で魚を育てる…いっている意味がわからない。
「元々川沿いに生息してるんだけどね。乱獲されちまうから、養殖するのが普通なんだよ。ラウンドフィッシュは柔らかい水っ気を含んだ土を好むんだ。野菜でもないのに水やりもするんだよ。1日もすれば水分吸収しちまって、土も干からびちまうね。」
「収穫時期には、土を枯す。そうするとラウンドフィッシュたちは夏眠に入って動かなくなる。粘液と泥で出来た皮膜に包まれるんだ。そいつを掘り起こすわけだね。」
土で暮らす、両生類的特徴を持つ魚みたいだ。カエルみたいなものに近い何かなのかな?
本当に魚の味がするのか疑問が残る。
流石に水と肥料撒いただけで育つわけではないと思うので、ラウンドフィッシュが好む植物があるのかもしれない。
僕は、この後も何軒か回った。
初日ということで神経をすり減らした。
玄関先で住むだけなら、まだいいが…相手が家にあげようとすると警戒せざるを得ない。
ここの治安というものを知らないからね。
その後、僕は速やかにに帰宅し親方と合流した。
ヅラを買うのが最優先事項だ。
禿げを隠すのに必至なのだ。
その後親方に案内され、ヅラの専門店についた。
理髪店の隣りにあり、惨めさを掻き立たせるには充分なものがあった。




