22話
この前、家族に…ひょっとしてまた小説書いてるの?どうせ誰も読んで無いんでしょと言われた。確かにその通りだけど。心が痛い…。才能ないから手を替え品を替えやってはいるんだけど…。出来上がる作品はやはり微妙なんだよね
「せめて遺体だけは、家族の元へ届けてあげないとね」
ユフィーは、遺体を動かすそうとすると。
プツンと糸が切れるような音がした。
「キャァァァァ⁉︎」
破裂音と共に、ユフィーと一緒に飛ばされた。
「目が…目が…」
ユフィーは目を必至に擦っていた。
網膜に傷はついてないようであったが。
それでも、目が痛いと悶えているので僕の不安を掻きたてる。
部屋の中は匂いを嗅いだだけで、むせかえる。
何かしらの香辛料だろうか。
僕まで、目に涙が溜まっていた。
慌ててユフィーに、水を手渡した。
ブービートラップだ。ダンジョンに慣れている人ほど人間の悪意に対して警戒をすることを忘れる。
絶対に訪れるであろうその場所にトラップを仕掛けるのだから悪質だ。
人は、人の悪意に対してそこまで免疫を持てない。死体にトラップを仕込もうなんて発想が悪魔的だ。
僕らの背後から音がした。
カツン…カツン
「キャャァァァ⁉︎」
ユフィーは悲鳴をあげていた。
振り返るとそいつはフードを被りガスマスクをしていた。
コツンという金属音が響くと辺りに白い煙が辺りを埋め尽くしあっという間に視界を遮っていた。
狭い部屋だ。視界が無くなったとはいえ出入り出来る場所を見失う程でもない。
奴さえなんとかすれば。
咄嗟に呼吸を止め、バットを構えた。
「ぶはっ⁉︎」
しかし、腹部に激しい痛みを感じ、気づいたら身体が宙に浮いていた。
視界の端に足がみえた。
どうやら蹴られたらしい。
ユフィーまで巻き込んで壁に叩きつけられそうになった。
血溜まりのできている床の上に手を置き、起き上がろうとすると骨にヒビが入っているのか。ズキズキ痛みを感じた。
だいぶ息を吐いてしまい、息を吸わざるおえなかった。
どうする…
どうするべきなんだ
身体がフラフラし、ロクに思考が回らなくなっていた。
視点が定まらない。
痛みの感覚まで鈍くなってきていた。
バットで、自身の左肩を殴ってみてもちゃんと力が入ってないせいなのか。それとも感覚が鈍くなっているせいか痛みというものが感じられない。
とても…眠い。
思考がまとまらない。
ただ…人の悪意に対して死ぬなんて馬鹿らしいものだ。
僕はポケットにあった実を丸呑みにした。
人の悪意より、人の善意の方が強い…。
そう信じたい。
善意なき世界に、そこに居場所はあるのだろうか。
ユフィーの善意に賭けてみたくなった。
あまりに大きな実を丸呑みにしたためか、自分の喉がこんなに膨れるなんてことがあるんだなと自分でも感心していた。
そして、ユフィーからもらった薬瓶をあけ、飲み干した。材料にポーションを使っていると言っていたが喉が焼けるように痛かった。
眠気覚ましには丁度いいのかもしれない。
食い合わせとしては悪くないはずだ。
2つが胃で混ざり合わさると、腹痛に見舞われた。
「イギャャャ」
ネズミのような物が胃を食い破り、身体の内部を動き回る。皮膚の下辺りを通り。通ったあとはまるで木の根を張り巡らせたかのようにふくらいでいた。
寄生木の以上な成長力は中に含まれている成分のせいだろうか。
焼けるような異常な痛みが全身を駆け巡る。
寄生木の回復力か、はたまたポーションが効いているのだろうか。
膨らんでいたところもすぐに戻ってくれる。
それでも、痛い事には変わりなかった。
眠気覚ましには丁度良いのだが、自分の身に起こっている事を考えると悪夢だ。
意識だけははっきりしているのに、身体はだるさと肌寒さで立っている方が奇跡に近い。
少なくとも、ユフィーだけは守らないといけない。
また…居場所がなくなってしまう。
そんな気がした。
霧が晴れると、そいつは立ってこちらを見ていた。
「お前は誰だ?」
「それは、私が聞きたいぐらいかな。何たって記憶がないんだからね。」
そいつはガスマスクを外し、フードから髪が溢れるとそこには見たことのある顔があった。
琴葉の姿だった。




