2話
「…というわけで、数十年前までは化野ダンジョンの人口が増え続けてたんだよね。ダンジョンの外も魂の総和が存在するっていうのを知らなかったわけだし」
「ホームレスだったり社会的に弱い立場であろうが化野ダンジョンはそれを受け入れ続けたんだよ」
巫女服のゴーストは深い深い穴の底で僕にそんなことを言った
借金負った社長が貨物に紛れて逃げ込んだ。犯罪者が逃げ込んだ。そんな話は昔からよく聞いた話だ。
ダンジョンに必要なのは魂だけだ。社会的に価値が薄いと評価された人間でもどんどん受け入れた。
転生のサイクルが噂されるおかげでそこそこ人気があったのだ。
ダンジョン内で何か問題があっても死ねばまたダンジョンですぐにでも転生出来る。
心に傷を負った人間の心を揺さぶってきた。
死ねば解決できる。死が軽い。
地元住民からは負け犬の巣窟と揶揄する人達もいる。社会的に不必要、邪魔とされてきた人間がダンジョンへ逃げたのも大きい。後ろ指さされる人間も多い。
罪人の流刑地に指定された歴史もあれば、姥や赤子を捨てるゴミ箱的利用価値として利用されてきた。
差別は昔から続いている
「化野ダンジョンとかはダンジョンコアを破壊しない限り魂の解放はあり得ないって話だろ。もう何回も聞いたって」
「それらは攻略不可とされた未踏破ダンジョンなんだよ。僕達が探しているのは未発見ゆえの未踏破のダンジョンだ」
深い深い穴の底、温度は非常に高く40度近くある。お爺さんの世代から掘った穴をずっと掘りすすめてきた。
汗が目に染みるたびにヘッドライトが左右に揺れる
「中学生にしてはなかなか体力あるんじゃないの?あ〜、私はゴーストだから手伝えないのは心痛いわ〜」
心にもないことを言う魔物にいらっとくる。
ダンジョンコアを破壊したことで起こるダンジョンブレイクで外に魔物が飛び出すことがある。たいていは外に出られずに人の手によって殲滅されるが、死霊系のモンスターはダンジョンの外へ出ることも容易いのだという。
このゴーストは7000年前にあったダンジョンの70階層ボスなんだとか。
「ダンジョンに通い、ステータスが上がればお前の顔や名前を知れるかも知れないって思うと…少し恐怖だよ」
「今、私が何かしらスキルを使ったとしても、スキルが発動しないままに君は発狂してしまうよ。それほどに絶望的なステータス差があるよ。キャッキャッキャ。今は意図的に視認出来ないように抑えているだけだよ」
死霊系ダンジョンのモンスターだけあって、精神操作系のスキルがあるらしい
ステータスを上げたらスキルにかかるリスクがある。
今は巨象とアリの差ほどステータスが開いている
「たまにでよければ憑依だろうが、精神支配だろうがなんでもすればいいさ。人に迷惑をかけないって言うのが条件だけどね。それよりダンジョンはあとどれぐらいで掘れるんだ?」
「あと、1mぐらい横に掘ればダンジョンの入り口だよ。クックック…まぁどんなダンジョンかはわかったもんじゃないけどね。」
死霊系モンスターは地中をすり抜ける事が出来てもダンジョンをすり抜けることが出来ない。それこそダンジョンブレイクでもない限り。
「外周一周回った限り、ここらへんが入り口の可能性が高い」
「本当か?うちのおじいちゃんは魔物に騙されたとカンカンだったって聞いたぞ」
「飛び回ってダンジョンの角に頭をぶつけたりもしたよ!必至に探したって言うのに全くもう。地中では物を見通すなんて出来ないし方向感覚も狂うから嫌いなんだよ」
ダンジョンの壁自体は何度か掘り当てていて、ダンジョンがあるのは間違いない
「ダンジョンのドア特有の凹みらしきものがそこにあるんだよ。」
この温度で、閉鎖的な空間でモンスターと喋っていると時折り気が狂いそうになる。