12話
「というわけで、彼女のみのりと一緒にダンジョンに挑もうと思うんだ」
白木さんは顎髭を触りながら思案していた。どうするのがいいのか考えているようだった。
「実に素晴らしい。我が孫のためにそこまでしてくれるとは…それに君たちの事情もよくわかった。誠意ある言葉に感謝する」
「して本当にアベックなのか?距離が遠いように感じるが?そこまでの仲なのか?」
「あ〜やっぱり?私も気になっていたよ。キャッキャッキャ」
「私たちは正真正銘のカップルです。だから、こんな事も出来る」
事前に取り決めがあった。白木さんが言わなくてもゴーストは茶化す気はした。
こういう時は迷った態度をとる事が出来ない。瞬時にベロチューする取り決めがあった。
命をかけているのに、こんな事で躊躇している場合ではない。
自分の舌が相手の歯や舌にあたる感覚は不思議な感覚であった。
みのりの舌の感覚が脳に伝わってきて、頭がおかしくなりそうだった。
暖かい感覚、相手が本当に求めてきているかのような錯覚に陥る。
「キャー、大胆。最近の若い子はすごいね。キャッキャッキャ」
「もういい、わかった君たちが付き合っているのは充分にわかった」
ハアハアハア
静止するのを押し切って2分ぐらいディープキスを続けた
舌から糸がひいていた。
その後の事はあんまり覚えていない。
気がついたら、井戸の底でへたり込んでいた。
「ディープキスって一体感を感じてとても気持ちいいもんなんだな…。互いが互いを求め合っているのかと錯覚したよ」
「そうね…あれはやばい。最初に考えた人は天才なのかもしれない」
「…ダンジョン挑む前に既にへとへとでどうする。行くぞ、みのり」
「感覚麻痺ってたけど…今思うと井戸の底って怖いんだけど…後ろから誰か来て追っかけまわされたらと思うと腰が抜けて立てない。悪いけど、もう少し呼吸整わせて!」
万が一という事がある。多分、何かあってもゴーストの方で対処してくれるだろう。
絶対ではないけどね…。
追い回される恐怖を拭うために、あんな事までしたのだ。
誰も好き好んでディープキスしたわけではない。
震えるような途切れ途切れな深呼吸をするもんだから、こちらにも緊張が移りそうだった。
茶化して場を和ませよう
「せっかくのクリスマスイブなのに、一体僕ら何をやってるんだか…」
「本当よね…」
「クリスマスはミニスカサンタが見たかったな…。色香なジャージじゃなくて」
「ミニスカではないけど…短パンならジャージの下に履いてるし…地下は熱いんでしょ」
「どうせ体操ズボンとかだろ。いいよ別にそこまで興味ないし」
「………探検という事もあって、それっぽい格好はしてる」
「それじゃあ、早くダンジョンまでくだらないとな。やる気が出てきたよ」
気まずい雰囲気だ。
シューシューともれるエアーの音で色々と掻き消えてくれる気がした。
「よし、いける気がする。琴葉の顔を浮かべるとこんなところで腰を抜かしている場合ではないもの……ただ…やっぱり前衛をユズキに回して正解だったと思う。命を背負わされるとなったら頭おかしくなりそうだったんだよね…」
個人的には一度きた道なんだけどあの時はゴーストがいたからなぁ。
あれはあれで緊張ほぐれて助かっていたのかも
「まぁ、まだ転職の条件満たしてないノービスだけどね。予習した通りにやればいけるはずだよ」
「うん、信頼してるわ」
手を繋ぎながら後ろを歩いてくる握力系女子はキョロキョロと後ろを振り向いたりせわしない。冬だというのに汗ばんだ手で力強く握ってくる。
まるで手を離したら、別の誰かとすり替わっているのか心配でたまらないようであった。
私ってお荷物なのかなとかネガティブな発言が多かったので、テキトーに返事をしておいた。そこまで自分は真摯でもないし、少しうるさく感じていたのも大きな要因だ
ダンジョン前につく頃には少しは調子を戻していた。
ただ、ダンジョン前につくと彼女は青ざめていた
「…この先…人の匂いがするんだけど…。それも近い気が」
「可能性としては、何かしらのウイルスに感染している状態か…。もしくは魔物との共生状態。何かが寄生状態なのが1番高いかな。半魔になっている…流石にないか。…第三者の可能性も…」
それを聞くと彼女は突然過呼吸を起こしてしまい。しばらくしてお漏らしをして気絶してしまった。
仕方ないのでロープで引っ張って上に連れ帰る事になった。
途中何回か壁にぶつけてしまった。
台車の予備があったから少し楽に感じたが…かなりの重労働だった。
せっかくダンジョン用のショーパンにしたというのに。
匂いに敏感なだけあって、怖さが振り切れてしまったのだろう。
誰だって怖いんじゃないだろうか?
井戸の底から這い上がると、夕焼けがみえた。
1日何をしていたのか分からなかった。
最悪のクリスマスイブだなぁ




