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冒険者と幼なじみの大親友の話。ivy 1人目

「世界で一番暖かい装備屋さんにようこそ。」


ここはある町の装備屋さん。なんでも冒険者に寄り添ってくれるんだとか。

右には銃、左には剣、奥には盾の装備屋さん。品揃え豊富なこの店には、どんな人が来るんでしょう。


店主「いらっしゃいませ。本日のご用はどちらで?武器に防具にお守りまで。薬草なんかも置いてます。」


冒険者「今日は冒険から帰ってきたところだよ。話を聞いて欲しくてね。」


店主「そうなのですね。あなたの冒険のお話、聞かせてください。」


〜冒険者の話 1人目〜

僕には小さい頃からどんな時も一緒にいた大親友がいるんだ。


まだ8歳だった僕は、貧しい家庭で、平和な世界に憧れてた。

僕   「世界が平和になったら何したい?」


アイビー「グラスとずっと一緒にいたい。」


僕の質問に、迷いなくそう答えた。僕は、思ってもいなかった回答に少しにやけた。


僕   「一緒にいれるよ。ずっと。他に何かしたいことはないの?」


アイビー「美味しいものが食べたい。いまは魔物に町の畑が荒らされて、収穫量が少ないせいでお金持ちの商人に全部取られちゃうでしょ。」


町で作られたわずかな食料は、ほとんどお金持ちの商人と貴族、王族に渡ってしまう。アイビーはそんな状況に不満を漏らした。


僕   「そういえばここ最近スープと少しのパンしか食べてないね。この不作も魔物のせいだ。商人だって生きるのに必死なんだ。」


貧しかった僕やアイビーは当然、満足に食事をとれてなかったのだ。

するとアイビーがまた不満げな顔で言う。


アイビー「そうは言っても、分けてくれたっていいじゃない。」


僕   「僕が美味しいものが育つ畑を、魔物から守るよ。2人で魔物を全部倒そう。」


ぷくっとほっぺを膨らませて文句を漏らすアイビーが可愛くて、思わず魔物を倒そうって言ったんだ。

これが2人で勇者を目指すきっかけだったかな。子供ながらに勇者パーティーに憧れて冒険ごっこなんかもしたよ笑。


そんな僕たちは去年、16歳の誕生日を迎えて2人でギルドに入ったんだ。


ギルドの人「新しい冒険者が弱そうな女だった。」


アイビーったら地獄耳でさー笑 そんなの無視すれば良いのに、見栄張って、【薬草集め】のクエストじゃなくて【小道の魔物封印】のクエスト受注しちゃって。


僕   「いきなり封印クエスト受注しちゃって大丈夫?」


アイビー「やっちゃった、、、。どうしよう!グラスごめん。」


僕   「将来的に勇者になるんだから、こんなところで折れてもしょうがないか笑 頑張ってみよう。」


頑張ってみたけど森の小道にいるゴブリンにすらボコボコにされて、僕たちは不甲斐なさを感じたよ。

そっからは毎日特訓の日々で、僕は剣術、彼女は詠唱をひたすらやってた。


アイビー「私は今日、初級回復魔法を覚えたわ!詠唱の訓練キツすぎ、。また吐きそう、、もう今日で3回目。」


僕   「大丈夫?僕も剣術を頑張っているよ。アイビー、無理はしないでね。」


アイビー「グラスだって手がマメだらけじゃない笑。人のこと言えないでしょ!顔も黒くなってるよ。炭?泥?頑張りすぎだからね。」


お互い頑張りすぎてボロボロだった。そんな日も2人だったら乗り越えられる。


僕   「はやく強くなりたいんだ。はやく強くなって、みんながお腹いっぱい食べれるような世界をつくるんだ。」


アイビー「あの約束、グラスも覚えてたんだ。嬉しい。私もはやく強くなる。」


アイビーは切れ長なつり目を細めて、笑ってた。目を細める笑い方の癖はこどものころと変わってない。


僕   「覚えてるに決まってる。 なんのためにギルドに入ったと思ってるんだよ笑」


アイビー「今日はもう疲れたから家に帰るわ。ウっp、、、、」


吐いてしまったアイビーだけど、口から出てきたのはほぼ水だった。何もたべれていないのだろう。2人ではやく貧しい生活から抜け出したい。


僕   「今日はゆっくり休んで。おやすみなさい。」


2人で頑張ったから、どんなに苦しくて吐きそうになっても、乗り越えれて、どんどん強くなったんだ。

ひと月経つときには、ゴブリンどころか洞窟のゴーレムもお手のものだったよ。


アイビーは優しいから、食べ物が手に入ったら必ず僕に分けてくれるんだ。自分だってろくに食べれてないのにね。

そんなアイビーのことを、いつのまにか好きになってた。


それからはクエストをこなしていった。アイビーと僕は、2人で戦ってた。他の人にパーティに誘われたりもするんだけど、アイビーが断っちゃうんだ。「2人がいい」ってね。

僕も2人でいる時間が気に入ってたから、特にパーティには入らなかった。


僕たちが、中難易度の【湿地のモンスター封印】に行くときのこと。


難易度の高いクエストは、当然報酬も高いから少しずつ食べれるようになってきた。このクエストから帰ってきたら告白しよう。


アイビー「ここの湿地、ジメジメしててやな感じ。あ、私がヒールと身体強化のバフかけとくから、グラスは好きなように戦って良いよ」


アイビーには魔法の才能があって、町でも有数の魔法使いになった。僕も腕は上げたけど。まだまだ上には上がいるね、、、笑


僕   「ありがとう。クエスト達成まであと100モンスターだ」


アイビーは攻撃魔法で戦いながら、器用に僕を強化魔法で助けてくれた。


アイビー「なんか、空、暗くない?」


この時点で異変に気づくべきだったんだ。鼻をつんと刺す異臭に紫がかった雲。明らかにおかしい。


僕   「なんなんだろう。早いところクエスト終わらせて帰ろう。」


アイビー「そうね。それにしてもいやな匂い、、、。」


風もいつもと違う。秋なのに温風が吹いてて、空もますます暗くなる。


僕   「帰ろう。嫌な予感がする。」


そう言った時にはもう絶望の渦の中。こんな中難易度の湿地にはいるはずもない、ドラゴンの姿が見えた。


アイビー「、、、グラス、。こんなデカいの、私たちじゃ倒せない。」

  

  ゴドオゴオーーン、ドラゴンが火を吹く。アイビーの防御魔法がなければ即死だった。僕はその場に立ち尽くしてた。初めて見るドラゴンを目の前にして、何もできなかった。


アイビー「ドラゴンを停止させてる間に逃げて!私の魔法じゃ1分も持たない!」


僕   「アイビーを置いて?無理に決まってる。」

震える足を動かして、ドラゴンの方へ走る。ギリギリ届いた剣は、虚しくもドラゴンの硬い皮膚を切ることはできなかった。


アイビー「グラス。最後のお願い。逃げて?私もそろそろ限界」


僕   「、、、」


こぼれそうになる涙を堪えて、走り出した。

ドラゴンを倒せない、アイビーを守れない、守れないどころか守られてしまった。

悔しくて悔しくて、悔しくて、でも僕には走って逃げることしかできなかった。


アイビーごめんなさい。


弱くてごめんなさい。



僕はなんとか町に戻ってきた。

数日して、ドラゴン出現と冒険者の訃報が出た。アイビーのことだろう。現実を受け入れられない。


アイビーは二度と戻ってこない。

僕がもっと強ければ、パーティに入ろうと言っていれば、異変に気付いた時に帰ろうといえば、、、。





まだ2人でいれたのかな。


〜〜〜〜〜


冒険者「大好きだったアイビーは、僕を守って死んだんだ。僕はどっかの勇者さんみたく強くなかったから。愛した女性も守れない。」


冒険者は悔しそうに皮肉をこぼした。


店主 「強くて素敵な女性ですね。」


冒険者「そうなんです。とっても素敵なんです。」


冒険者は肩に下げたバッグから短剣を取り出す。そこにはhappy weapon shopと刻まれている。紛れもなくこの店の物だ。


冒険者「これ、ここの店の物ですよね。16の誕生日にアイビーがくれたんです。強くなってから使いたくて、ずっと中古の短剣使ってました。でも、アイビーがくれた剣だったら、2人で戦えてる気がするので、今日からはこの剣を使います。」


冒険者は剣に目を落としながら、大事そうに抱えていた。


店主「そうした方がアイビーさんも、喜ぶと思います。」


冒険者「この剣に、名前を彫ってもらえますか?ivy(アイビー)と彫ってください。できれば花の絵も刻んでいただけると嬉しいです。自分の名と同じ花のアイビー、彼女が気に入ってたんです。」


店主「もちろんです。」


ivyと花が刻まれた剣を冒険者に手渡す。


店主「あなたに加護がありますように。」


冒険者「実は、彼女に守ってもらって1ヶ月なんです。ドラゴンが現れて1週間は自責と恐怖と、アイビーの死を受け入れられない気持ちで、何もできなくて。でもそのままじゃダメだって思ってクエストの受注を始めたんだ。」


冒険者「いつかあのドラゴンも倒せるくらい強くなる。アイビーと2人で食べれるわけじゃないけど、僕たちみたいな貧しい子供達が、お腹いっぱい食べれるように、平和な世界を作るんだ。アイビーと約束したからね。」


真剣な顔をした冒険者を見て店主は微笑む。


店主「素敵な夢ですね。その夢、私にも応援させてください。」


冒険者「ありがとうございます。ところでお代は?」


店主「平和な世界を作っていただけるなら結構です。」


冒険者は笑う。


冒険者「ありがとうございます。」


店主「またのご来店をお待ちしております。」

花言葉なんかも考えてもらえたら面白いかもです。

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