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特別な生活を求めて異世界へ!  作者: 森村渉
王宮襲撃編
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タルトの陰謀

今日は金曜日、クラスはいつも通りの授業中である。

担任ではない先生が前に立ち、魔法科の授業をしている。


「魔力だけを放出すると光の魔法が完成する。他の魔法は、イメージと魔力の放出の仕方で具現化する。さて、個人で創ったオリジナルの魔法は?マイク。」

今クラスで一番目立っているのは俺と指差す先生である。

俺は少し考えて

「独法です。」

と答えた。

「そうだ。これは創るのが難しく、完成まで数年かかることも珍しくない。」

先生が一通り説明を終え、黒板は賑やかになっていく。

クラスはノートにまとめる生徒と、眠気に耐えきれずうとうとする者にはっきりと分かれている。


そんな中、とある人物はポケットにある四角い魔道具を握りしめ、発動させた。


ふと気が付くと歌詞を入れたらバラードになりそうな音色が教室のスピーカーから流れていた。

だが、その音色の個人的な評価を付ける前にスピーカーは壊れた。


正確にはスピーカーは壊された。


ブラッドの一つの拳で壁から床に落とされ、それをボールのように蹴って壁に激突させる。その衝撃で精密に並んでいた中の魔石が大量に弾けとんだ。


「ごめんなさい、先生。ゴキブリがスピーカーに張り付いていたので退治しました。弁償します。」

ブラッドは笑顔から真剣な顔に切り替えて頭を下げた。

先生は少し戸惑ってから

「そ、そうか。とりあえず職員室に行くぞ。お前ら、自習だ。」

と言ってからブラッドと教室を去っていった。


スピーカーにゴキブリが張り付いていたようには見えなかった。

とはいえ、あれだけクラスを引っ張っていたブラッドが器物破損するとは誰もが思っていなくて教室はざわざわしている。


スピーカーは休み時間開始の3分後に音割れしたチャイムが振動程度に鳴るだけで使い物にならなくなっていた。


そんなこともあってスピーカーをジーッと見ていたが、ナセリーは俺の視界にタルトのチラシを入れてきた。

「放課後これ行こ!どうせ暇でしょ?」

半ば強引な誘いを俺は勢いで「うん」と答えてしまった。

「よかった~ エディに拒否られて不安だったのよね~。」

エディは甘いものが好きではないらしい。

俺は好きだから、せっかくだし付き合うことにした。

チラシにつられてペナロンも近づく。

「タルトですか?」

「1日50個限定販売でリピーターが多いけど、今日は200個なのよ!一緒に行く?」

ペナロンは目を輝かせて「行きます!」と、いい返事をした。

チラシのタルトはピンク色の不思議な見た目である。


同じチラシを持っていることに気が付いたナセリーはエメラルドの肩に抱きついた。

「エメラルド~一緒に行こ~」

エメラルドはにっこりして「美味しそうだよね~」と返した。

いつものしゃべり方とは違っていてナセリーはキョトンとした。

「あ、いや、美味しそうだよな!」

エメラルドはすぐ否定したが遅く、ナセリーの可愛がられる対象になった。

「やっぱりエメラルドも女の子よね!」

エメラルドは顔を赤らめたが、何かを決心してナセリーの手を自身の緑の髪の上に乗せた。

「可愛い~!」

ナセリーは頭を撫でるも、エメラルドは「何か違う」と言わんばかりの表情になった。


そんなこともあって、放課後…


集まったのは三人だけであった。

「エメラルドは用事だって。私のわがままに付き合ってくれてありがとね!」

「それにしても凄い行列ですね…。」

ペナロンの言う通り、店内には収まりきらなくてレジ待ちの列は外まで続いている。


しかも、並んでいる人たちはなぜか「早くしろ!」「待ってられん!」など、とにかく治安の悪い様子が分かる言葉しか聞こえてこない。

中には我慢の限界で万引きする人や、並んでいる最中に食べてしまう人もいる。

「何かおかしいですね…」

ペナロンは探偵のような口調で主張し始めた。

「以前、私が来たときはこんな様子ではありませんでした。行列もなかったし、しかも1ヶ月前ですよ?変なものが入っているのでしょうか、それともそれだけの価値があるのか…。果たして食べていいのでしょうか。」

ペナロンの発言には妙に信憑性があり、俺も納得してしまう。


そんなことを考えているとき、最近仲良くなったクラスメイトのボウが店内から出てきた。

「あ?マイク?」

「ボウ?!」

ボウは少しヤンキー口調だが、昨日のヤンキーより随分とマシである。

「ボウもタルト食べるのか。」

「うっせー!誰が買ってもいいじゃねぇか!」

ボウの手には食べ歩きするためにタルトがある。

俺はタルトを鑑定し、やみつきになる秘訣を知ろうとした。


だが、鑑定結果は予想外。

『名称:アヘンタルト ケシの花が入っており、依存性のある 様々な副作用があるため大変危険』

なんと日本では犯罪であるアヘンをタルトに使用していた。


「アヘン…聞いたことが…」

思わず出てしまった声をペナロンは拾い、「いいですか」と口を挟んだ。

「確かアヘン?は依存性のある麻薬の一種でしたよね?」

ナセリーも頭を縦に振り、肯定したが、タルトに含まれていることには気が付いていないようだ。


ふと気が付くとボウはタルトを食べようと口に入れようとした。が、手を伸ばし直前で阻止する。

「この手を離せ!お前も列に並びたくないやからなのか?!」

「じゃあ、もしそのアヘンがタルトに使われていたら?」

ボウは頭を傾げ、数秒後にタルトを持っていた手を下げる。

「あ?このタルトにか?なんでそれが分かる?」

俺は目を泳がせて言い訳を必死に考えたが、答えは出てこなかった。

「もしかして匂いとかですか?」

「そ、そう!あとは色!えっと、前に見たことがあるから!」

代わりにペナロンが答えてくれたので、それに乗っかってみた。

ボウとナセリーは表情的になるほど納得してくれたようだ。


幸いにもボウはタルトを食べたことがないらしく、返品してもらうために再びレジに並んだ。


三人でレジの店員にタルトを持っていき、クレームを入れに来た。

レジに並んでいた人たちは「なんだなんだ」と言わんばかりの態度でこちらをじろじろ見ている。

「すみません、このタルトにアヘンが入っているのですが…」

「ええ?そんなはずは…本当ですか?少々お待ちください!」

店員はすぐに後ろの扉を開けてどこかへ行ってしまった。

後ろの客たちの態度は悪化し、「お前らがレジやれ」だの、「タルト奢れ」だの、店員がレジからいなくなったことに対してのブーイングが殺到することとなった。


ナセリーは心に何かを決め、大きく息を吸った。

「このタルトには依存性の高いアヘンが含まれているわ!この店のリピーターのほとんどはタルト目的でしょ?」

ナセリーは自信ありげに話し、みんなが納得してくれると思っていた。だが、客の声は大きくなる一方だった。

「ええ、なんで…」

「そりゃそうさ、依存は無自覚なこともあるし…何より楽しみにしていた物がなくなるということだから不満は大きくなるさ…。」

俺はしょんぼりしたナセリーの肩を叩き、励ました。


ナセリーが可哀想だったので、すぐこの店を後にした。

後にタルトは販売中止になり、開発者は逮捕された。

もちろんこのタルトのリピーターは依存に苦しみ、リハビリに励むのであった。


この開発者はアヘン戦争を参考にした外国人の転生者であったが、それを俺が知るはずもなかった。



その日の深夜、ブラッドは一人で暗い売店にいた。

ため息を何回もしてから水魔法でコップに注ぐ。

水を飲んだ後も大きなため息をした。


そのとき、ギターを持った女がブラッドに近づいてきた。

暗くてシルエットしか見えないが、髪の長さ的に女である。

「分かってるよね?情報を教えろ。」

もちろんブラッドは動じるわけがなく、無視した。

「まさか同じクラスだとはね…。なるべく死人は出したくない。」

ブラッドは「おい」と、いきなり反応した。

「人が落ち込んでいるときに…こんな夜中に迷惑なんだよ!追い払ってやる!」


ブラッドは自身の指を噛み、血を垂らした。その血を魔力で操り、貫通はしないものの、女の肩に命中させた。

女は多少痛がるも、腕輪に付いている魔石を光らせて炎を浴びせた。

ブラッドは地面を蹴って逃げるも、時すでに遅し。女はギターを使って昼間の音楽を奏でた。

『♪︎~』

ブラッドは血でギターを壊そうとしたが、命中率は極端に下がり、隣の柱に当たってしまった。

「お、お前が…昼間の…」

女は不気味な微笑みを見せた。

そして音を奏でるにつれてブラッドは耳を抑えることしかできなくなっていった。

完全に女の勝ちだと誰もが分かる状況になったところで音楽は止まる。

「さあ、情報を渡せ。君、本当は…」

深夜2時、ブラッドは倒れ、それを見下すように女は立っていた。

森村の裏話

ボマーさんは高校の友人である


違法薬物は依存性が高くて健康に悪いものばかりなので医療以外で使用するのはやめましょう

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