転入生
魔族との戦闘があって一週間、いつの間にか俺はクランチ国の文字を全て理解したのか、鑑定魔法なしで文字の読み書きが可能になっていた。
そんなことはどうでもよく、俺はあの魔族のことがまだ気がかりであった。
エディによるとあの日、国王が住む王宮に侵入者が現れたとのこと。
その情報が発表されたのは昨日の夕方のことである。
(魔族が侵入者かな?やっぱり王様を狙ったとか?)
俺がそんなことを考えている間に見知らぬ女の子が教室に入ってきた。いつもの騒がしいクラスに転入生がやって来たのだ。
メガネがよく似合う転入生の女の子は、黒板の前に立つ。
「ボクはエメラルド、よろしくな。」
エメラルドは男のような口調で自己紹介をする。
エメラルドは名前のとおりエメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばしている。
「エディの隣の席に座ってもらうか。」
先生が指差すとエメラルドも席に向かった。
道中、エディはエメラルドと目が合い、軽く会釈した。
エメラルドが席に着いたと同時に朝のホームルームは終わり、休み時間に入る。
最初に話しかけてきたのはリキとモルだった。
「へぇ、エメラルドちゃんね?ウチはモル、よろしく♡」
「オレはリキ、こっちはマイハニーだ☆」
いつものようにイチャイチャしながらエメラルドに興味を示している。
「モルちゃんとリキくん?いい名前だな!」
エメラルドは男口調だがかわいらしい笑顔を見せる。
「エメラルドさん初めまして!」
俺もエメラルドに興味があり、勝手に話しに割り込むも、エメラルドはなぜか急に固まる。
「えっと…俺はマイク… 変なこと言いましたか…?」
「ダーリン、なんかお邪魔のようだし戻しましょ?」
「ああ、そうだな。」
モルとリキは気まずくなったのか、自分の席に戻っていく。ふと横を見ると、エディはエメラルドをちらちら見ながら考え事をしていた。
「えっと…。」
エメラルドは息を吸い込んで勝手に廊下へ出ていこうとするも、ペナロンに止められる。
「エメラルドさんでしたよね?もうすぐで授業が始まりますけど…。」
「いや、ボクは…」
「ほらほら、席に着け!」
呼び掛けたのは魔法の実力を認められ、学級委員長に任命されたブラッドだ。荒っぽい性格で基本的に一匹狼である。
俺は仕方なく自分の席に戻った。
エメラルドはまだ何か言いたげだったが、ため息をついてそのまま席に座った。
授業が終わって休みになると、今後はエメラルドが俺に話しかけてきた。
「さっきはごめんな。少々驚いてしまって。」
「あ、いえ、初対面なのに気安く話しかけた俺も悪かったです。仲良くしましょう、エメラルドさん!」
俺は手を伸ばした。エメラルドはそれを握り、軽く握手をした。
「よろしくな。あと、ボクのことは『エメ』と呼んでいい。同じクラスだし、敬語もいらん。」
エメラルドの爪は、手入れをしていないのか、所々剥がれている。
「よろしくね、エメ。」
俺は爽やかな声でそう言った。
今日の魔法科の授業は、魔法の連射を習う時間だった。
いつもの練習場は先週よりも暑さが増していた。
俺は詠唱して魔法を発動してから新たに詠唱をするという作業をした。
「詠唱は効率が悪いから無詠唱で魔法が打てるといいわね。」
ナセリーは喋りながら魔法を連発している。
俺もできれば無詠唱で魔法を打ちたい。だが、何度練習しても詠唱なしだと魔力が安定しないのだ。
「でも、エメラルドって娘、結構凄いわね。」
エメラルドは右の手から炎を凄い早さで連射している。
周りの生徒はもちろんざわついている。
ペナロンは勇気を振り絞ってエメラルドに近づく。
「エメラルドさん、凄いですね!」
「あ、ああ。」
「マイクさんと仲良さそうだったので安心しましたよ!」
「え?あ、うん。」
エメラルドは気まずく感じているも、ペナロンの態度に動揺を隠せない様子だ。
「ナセリー!私の魔法も見て~!」
「どれどれ?」
ポラマはナセリーにアピールし、ナセリーはそれに応える。
俺は一人になり、黙々と魔法の練習を再開させた。
エメラルドが俺たちのクラスに加わり、クラスはさらに賑やかになった。
とはいえ、エメラルドは普通ではない。そんな気がする。
森村の裏話
エメラルドの髪色は初期設定では青髪の緑メッシュである




