エスピトラとの再会
デパートから出ると、グリフィン騒ぎに駆けつけたであろう警察官が数人いた。
「あの人たちは同じ服装だから学生か?」
「いや、あれは警備員とかじゃない?」
警察官の制服に指さすエディに対してエワは説明する。
「思ったんだが、エワってここに来たことがあるのか?というかエワの曲が流れていた…よな?」
「あ…えっと…」
エワは良い言い訳が思い浮かばなくて黙ってしまった。
思えば、最初のきさらぎ駅でも流れていた。チャイム音で流れていたのに、よく気づけたなと感心してしまう。
「それは曲調が似ていたからではないのですか?」
「そ、そうそう!私の曲って結構王道なコード進行だからさ!」
ペナロンが考察したことにエワは思わず乗ってしまう。
「そうなの…か?音楽の知識なんてゼロだからわからなかったぜ。」
エディは無事納得し、エワはホッとして手を胸にあてる。
今日泊まっていたホテルの公園に着くと、空を飛ぶネコが魔法陣を砂場で描いていた。
「え?!」
俺は4人を置いてすぐさま走りだし、浮いているネコを持ち上げた。
「ククリ?!」
「これはこれは、マイク様。久しぶりの日本はどうでしたか?そうそう、グリフィン退治お疲れ様でした。あの世界からの流出物は以上となります。それから…」
俺は相変わらず早口でお喋りであるククリを抱く。
「ククリありがとね!わざわざ心配して迎えに来てくれたんでしょ?」
「まあ、アリス様に頼まれて…それと背後にご注意を。」
「え?」
振り替えると、そこには黒くて目玉が一つ付いたスライムみたいなモンスターと、それを倒そうとする男女3人組がいる。
一人は先ほど共闘したオグである。
「オグさん!?」
「皆さん!?あれは人間の感情を食べる『クロノカタマリ』です!ここは危険です!」
「あれ?オグさんと知り合い?」
頭から氷を生やす男、ナルはエディたちの方を振り返る。
「さっきちょっとね。」
エワは氷を不思議そうに見てるも、問いに答える。
「悪いが雑談している時間はねぇな。」
オキミは茶髪で革ジャンのチャラそうな男である。
「こんなモンスター見たことのないぜ!」
魔王も倒したことのあるエディも見たことのないモンスターと戦う。それはかなり危険なことである。
しかし、もちろんエディはモンスターを放っておけなかった。
エディは剣を抜いてモンスターにさし込み、切り刻む。
だが、エディがどんなに切り刻んでも致命傷にはならない。
その様子を見た俺は、袋から剣を取り出して加勢する準備をした。
「この魔法陣を描き終えるまで少々お待ちください。なるべくモンスターはこちらに来させないようにお願いします。」
「わかった。苦戦しているっぽいし時間稼ぎくらいにはなるといいけど…。」
俺は深呼吸をした後ククリを離し、すぐさま加勢しに行く。
ナルは氷の能力を発動させようとした。
「この前みたいに氷で足止めするとして…」
「氷で?私も手伝うわ!」
ナセリーは氷の能力で足止めしようとするナルに割り込み、構える。
「ステキね!貴方の髪飾り!」
「これは髪飾りじゃ…」
「せーの!」
「え?」
ナセリーのいきなりの呼び掛けに戸惑うも、ナルと共にクロノカタマリの体を氷で覆う。
やつは氷で動けなくなり、動かそうと試みている。
動けなくなったことを確認し、この隙にペナロンはエディに身体強化の魔法をかけている。
それをオグとオキミは不思議そうに見ている。
「これが魔法か?てっきり魔法のイメージはホウキとかだと…」
身体強化魔法は見えない。即ち、他人からには何をしたのかがわからない魔法である。
そのとき、やつは氷から抜け出し、エワに襲いかかった。
「え、ちょ!エワ!?」
「うそだろ!」
氷から抜け出されたナセリーとナルは、驚きながらもエワを助けようとしたが時既に遅し。
エワは「やるしかない」と呟き、歌を歌った。
「♪︎~」
歌に合わせて刃物のような風が出現する。それが飛び交い次々に命中するも、やつは怯むばかりで倒れなかった。
「くっ…。やはり歌だけで戦うことなど不可能なのか…。」
魔力を消耗したエワはその場にしゃがみこんだ。
それを見てホッとした俺は剣を振るう前に戦闘モードで鑑定した。
『名称:クロノカタマリ 目以外は致命傷にならない』
「エディ!あいつは目が弱点だ!」
俺はエディに叫んだ…が、さっきまでそこにいたやつの姿はなかった。
ふと上を見ると、やつの大きな口は俺にめがけてかぶりついてくる。
(やばい、終わった、回避できない)
俺は諦めてその場に留まるも、オグの拳によってやつは吹き飛んだ。
「あ、ありがとうございます…」
「感情は食べられていないようでよかったです。」
「か、感情?!」
俺は困惑するも、すぐに剣を構える。
「もう一度やるわよ!」
「せーの!」
ナセリーとナルは同時に青い冷気を出現させ、もう一度やつを足止めする。
「今だ!みんな!」
二人のおかげでやつは再び身動きができない状態になった。
俺とエディとナタを持ったオグは、やつの中央の目に向けて跳んだ。
オキミも加勢しようとするも、ペナロンに腕を捕まれる。
「貴方怪我をしていますよ!すぐ治します!」
「このくらい平気だ。」
オキミは腕から離そうとするも、ペナロンの手からは離れられなかった。
「動かないでください!」
「…はい。」
オキミは諦め、素直に腕の切り傷を治療してもらった。
俺が先に剣をやつの目に突き刺すも、硬くて刺さりきらなかった。
「任せろ!」
俺が横に逸れるとエディとオグは各々の武器を目に刺し込んだ。そのまま左右に引き裂き、やつの体は消えていった。
正確に言えば、食べた感情が持ち主に還っていく。
「なんだったのか、あれは…」
「クロノカタマリは人間の感情を食べて成長します。今回は強かったのですが、知能がつくと喋ったりします。」
「モンスターがしゃべる?!」
エディは思わず大声をあげてしまった。
「ウヴン!とにかく、討伐できてよかったな。」
やつを倒すと共に、エディの脳内にメッセージが流れてきた。
『元の世界に戻れるようになりました。これで帰れます。』
メッセージはアリスの声だった。
メッセージが終わると同時に、ナセリーはエディに抱きついた。
「やったね!お疲れ様エディ!」
「はは…。だな。」
ペナロンたちもエディに近づいてくる。
「ではこれで。俺たちは帰ります。」
エディはオグたちに向けて言った。
「え、帰れるの?」
俺は振り返って完成した魔法陣を目にした。
目線の先には魔法陣とベンチしかなかった。役目を終えたククリは先に帰ったのだろう。
「じゃあ、一件落着ということで私たちも。お気をつけて。」
オグは一礼して公園を後にした。
続けて「またな!」と、ナルは手を振った。
「ありがとな…」と、オキミは治った腕をペナロンに見せてから前を向いた。
「いつの間に魔法陣が…」
ペナロンは疑問に思いながらも魔法陣に魔力を注ぐ。
「結構な魔力量が必要みたいね。」
ナセリーも魔力を注ぐ。
砂でできた魔法陣は紫色に変わり、人間一人入れるモヤの塊が出現した。
「これに入ればいいのかしら?」
ナセリーは躊躇なくモヤに入り込んだ。それに続いてエディとペナロンも入る。
「ここに入ればまた異世界かぁ…」
俺はそう呟き、エワは頷いた。
「そうだね…。久しぶりの日本もよかった。」
俺とエワは一回振り返り、日本の景色を目に焼き付けた。そして、エワと目を合わせて頷いてからからモヤの中に入っていった。
モヤは、ダンジョンの入り口の少し左側に繋がっていた。
夕日は日本と同じでキレイだった。
「さあ、帰ろうぜ!」
「うん!」
「ですね!」
「ちょっと待って!」
帰ろうとする俺たちをエワは止めた。
「ありがとね!おかげで帰ってこれたし、楽しかった!」
顔が赤くなったエワは笑顔でそう言った。
俺たちも微笑んで、その場を後にした。
幸いにも今日は月曜日だが祝日のため、明日からの生活に支障は出なかった。
それにしても、まさか日本でもモンスター退治をするなんて誰にも予想はできなかったであろう。
それはともかく、俺とエワにとっては良い思い出になったであろう…
オグ、ナル、オキミはボマー作品であるエスピトラの登場人物です
異世界帰還編はこれで終わりです
▼エスピトラはこちら▼
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一部文章が抜けていたので追加しました
(2025/2/17/8:30)




