科学の世界
トンネルを抜けるとすぐ駅についた。
見たところ、日本でよく見る普通の駅だった。
外は暗く、夜だからか、人が少ない。
「停まりそうだが降りるのか?」
「うん。でもなんでにほ…うぅん!とにかく、なんでこんなことに!」
「日本」と言おうとしたが、あまり勘づかれてもいけないと言葉を濁す。
「そうね。これはおそらく極めて稀な現状ね。」
まさしくナセリーの言う通りだった。異世界転移なんて頻発されても迷惑そのものである。
「もしかしたら、ここは異世界かもしれない。マンガで見た。」
俺はまさしくその通りのことを濁した発言をし、三人は黙ってしまった。
ドアが開き、エディとペナロンのみ降りた。それに続いてナセリーも降りる。
「マイクさん?」
ペナロンに声をかけられてはっとした。
「お、降りる!ちょっと考え事を…」
電車はすぐ発進し、それを見たエディは目を丸くしている。
エディは勝手に「出口」と書かれた道に進んだ。
三人も出口に向かうと、改札を不思議そうに見ているエディを発見した。
「なんだこれ。手すりか?バリケードか?それとも魔道具…」
俺はズバッと「普通に通れるよ。」と言った。が、エディは跳び箱のように改札を飛び越えた。
ペナロンもそれに続いて跳んだ。が、足が引っ掛かって転んだ。
「ペナロン大丈夫?!」
「うう…大丈夫です…」
そう言っているが、手の皮が少々剥けている。
ナセリーと俺は素直に改札を素通りした。
深夜なのか、幸い駅員はいなかった。
ようやくまとまって行動できると思った矢先、今度はペナロンが自販機に向かって走りだした。
ペナロンは自販機のボタンをポチポチ押している。
「見てください!鮮やかなビンがこんなにたくさんありますよ!」
「ビン…?ああ。そういえば科学が発展しなさすぎてプラスチックがなかったな。」
「科学?プラスチック?」
エディにとって俺の発見は異質だったらしく、鋭い指摘だけが帰ってくる…当たり前だが。
「ほ、ほら!マンガにあっただろ!科学中心のマンガが!」
「そういえば、ナセリーはおとなしいな。そのマンガとやらを見たのか?」
「ええ。魔法が迷信だって言われているマンガでしょ?」
俺は即座に嘘を付いたが、ナセリー曰く、本当にあるらしい。
四人は駅を出た。
瞬間、三人は足を止め、目を輝かせた。
「なんなんだ、夜なのに眩しいくらい明るい。?!何だあれ、緑から黄色に、あれ?赤になったぞ!」
「す、凄いです!あれだけの魔石を飾りにするなんて…大規模なお祭りでしょうか。」
「やっぱり見慣れない場所ね…キレイだわ。」
エディは信号機を指差している。
「ねえ、暗いし疲れたからどこかで寝ようよ。」
俺は立ち止まっている三人を動かそうと、発言する。
「じゃあ宿屋に行くか。ほら、あそこにホテルってあるぞ。」
俺は「うんそうだね」と発言してから「ちょっと待って!」と訂正する。
「なんで読めるの!?」
「ええ…ホテルって言葉を知らないのか?」
「いや、そうじゃないけど!」
俺たちが道で騒いでいると
「君たち、今何時だと思ってるんスか?」
後ろから一人の男性に声をかけられた。金髪で革ジャンを着て、耳にはいくつものピアスが付いている。
いかにもチャラ男という感じだ。
「いま、1時っスよ?そんな夜遅くに外でギャんギャン騒がれたら、すんごい迷惑だと思うんスけど。」
(この男、モラルもマナーもなさそうなのに、ちゃんとした正論言ったぞ…)
そのことに驚きつつ、
「まあまあ、あの人の言う通りだよ。夜遅いし、この話はおしまい!」
ナセリーは二人の背中をホテル方向に押した。が、俺はしれっと「お金が…」と言った。
「金貨じゃダメなのか?」
エディがそう言うと、チャラ男がたまたま近くにいた行商を呼んできてくれた。
「ありがとうございます!」
金貨5枚で20万円にしてくれた。
「なぁ、さっきの人、ゴブリンだった気がする。」
「え?エディそれ本当!?」
「でも襲ってくる気配がなかったから…」
俺はさっきの後ろ姿を鑑定する。
『名称 ホブゴブリン 無害 人に友好的な魔物。』
俺はふと感じた。魔物でも無害なら見逃してくれるエディの優しさを。
ホテルにチェックインして4人部屋を借りた。
「凄い…まるで貴族のお部屋みたいです!」
ペナロンは目を輝かせている。
「確かに…。こんな豪華な部屋は王宮でしか見たことがない!」
「今日は疲れたからもう寝よう。」
俺とエディはすぐさまベッドに寝転がったが、ナセリーとペナロンはシャワーを浴びにいった。
「ところで、ここは異世界ってことでいいのか?」
「うん。ここは科学が発展した世界だ。空を飛ぶ大型の馬車があったり、なんなら宇宙にも行けたり…」
「科学って凄いな…もはや魔法を越えている…」
しばらくの沈黙の後、
「帰れるよね…」
「わからない。明日、色々調べてみよう。」
と、空気が悪くなったが、二人はすぐに眠りについた。
「エディの隣で寝ていい?」
ナセリーの突然の攻めた言葉を聞いて、ペナロンは多少戸惑った。
「い、いいですよ!えっと、頑張ってください!」
「う、うん。」
そんなこんなで、突然の日本での滞在が決まったのだった…




