エディの覚醒
俺たちは逃亡を試みるが、ドラゴンが逃げ道に向かって炎を吐き、通路が塞がれてしまった。地面が燃えているのだ。
「熱っ!」
ナセリーの足に炎が当たってしまった。
ナセリーはその場で転んだが、すぐにペナロンの肩を借りて立ち、なんとか歩いている。
「くっそ!こっちだ!」
俺たちはエディの指示で左の通路を進むことにした。しかし、またしてもドラゴンによって逃亡を邪魔された。もう進める道がない。あのドラゴンの強さは炎を見ればわかる。さすがにこれは勝てない。
「こうなったら…」
俺は奥の手である鑑定魔法を使うことにした。結果は『名称 ファイアドラゴン 水が苦手 代表的な倒し方は 翼の切断→トドメの一撃 初めての討伐の場合はドラゴンの動きを止めてから翼を切断するとよい』
「ファイアドラゴン!俺はまだ身体強化も付与魔法も使えない。絶体絶命だ!!」
「ファイアドラゴン…?」
俺は思わず叫んでいた。ナセリーとペナロンが心配そうにこちらを見ている。しかしエディは…
「絶体絶命、それはどうかな?」
「「え?」」
エディは凄いオーラを放っていた。しかも笑顔で。
「なぜだ、なぜこの状況で絶望しない?!」
「数年前、魔王テニーを倒した勇者がいたな。」
記憶のない俺にはよくわからない。後でククリに聞いてみることにする。
「あれは俺だ!」
「エディが勇者?!まさかそんなわけがない!」
エディは剣を持ちながらドラゴンに向かってジャンプした。エディが剣に大量の魔力を付与しているのがわかる。そして、空中でドラゴンの翼を片方切り落とす。
「凄いですね…」
「エディさすが!」
「…」
ドラゴンが落ちてきた。その上にはエディが乗っていた。
「トドメだ。」
エディはドラゴンの背中に剣を刺し、トドメの一撃を与えた。そして、エディがこっちに向かってくる。
「なんとかなったみたいだな。えっと…その…黙っててごめん。信じてくれないかと思って…」
「もう無茶しないでよ!」
ナセリーはエディを抱き締めた。エディは少し泣いている… そんな気がした。
「ナセリーありがとな。というか、ファイアドラゴンでよかった。何度か討伐しているから」
「炎吐いていたよ?」
「ああ、実はサンダードラゴンも炎を吐くことがあってな。サンダードラゴンは触れた瞬間に感電するから迂闊に動けなかった。だが、マイクが『ファイアドラゴン』と言ってくれて確信が持てた。マイクは魔物に詳しいからな。」
エディは自身のカミングアウトをし、俺たちに『勇者』だということを感じさせられる。
ひとまず、俺たちは上の階層に戻ることにした。