エワ
私はタタサに個室に案内された。その部屋の中央には大きな水晶が置いてあった。
「こちらをお使いしてください。この水晶は今の世界を見られます。見たい場所をイメージしてみてください。」
「えっと…」
私は誹謗中傷だらけのSNSのことしか思い浮かべられなかった。それもそのはず、私が歌手になったきっかけも死ぬきっかけになったのも全てはSNSだったからだ。私はまた涙を流した。
「ではこれで。また何かありましたらいつでも呼んでください。」
タタサは部屋から出ていった。私はしばらくひたすら涙を拭った。
「はあ はあ」
少し落ち着いてきた。そして、ある疑問が…
(私はひどく嫌われてた。だけどSNSのフォロワーはたくさんいたはず。本当にみんなは私のことを嫌いなのかな…)
そう考えていたら水晶が光り始めた。水晶には私が死んだ信号機の近くが映し出されていた。ガヤガヤしているけど一人一人の声がよく聞こえる。
『なんでこんなことに…』『起亜ちゃん…起亜ちゃん!』
「え?」
『この前のライブ楽しかったよ。今までありがとね。』『今はゆっくり眠ってね。起亜ちゃん。』
「これは…」
ガヤから批判的な声は何も聞こえない。みんな祈っている。よく見ると花束を信号機に置いていく人もいる。
「なんで…なんでよ…」
私はまた泣いた。
『また起亜ちゃんの曲を聴きたかったな…』『起亜ちゃんには生きていてほしかったよ…』
「…また歌いたい。」
私は泣きながらそう呟いた。私は自分が思っていたほどファンから愛されていたことがちょっと嬉しかったのだ。
「タタサ 生まれ変わりたい。また歌いたい…」
「わかりました。少しお待ち下さい。」
タタサが部屋に入ってきた。そして周りが暗くなる。そして、アリスが近づいてくると同時に周りが明るくなる。
「私はあなたのことが気に入りました。あなたの気持ちが変わらないように今までの記憶を持ったまま転生させることにします。」
「え?いいのですか?!ありがとうございます。」
また周りが暗くなっていく。
「よい人生を。」
(タタサ 女神様 ありがとう。)
あれから5年くらい経過した。現在はエワという名前が世界に順調に広がっている状態だ。そして、私はこっちの世界で私と同じく転生者であるマイクと出会い、友人となった。正直いって前世より楽しくやっている。
(タタサたち元気かな。)
私は久しぶりにタタサたちのことを思い浮かべた。
「エワさん そろそろ時間ですよ。」
「はーい」