転生者
俺たちはギルドの帰りに路上ライブを見ていくことになった。16歳くらいの女の子がギターを弾きながら歌っている。
青い髪をポニーテールにしているが、どこかで見たことあるような見た目だ。
「みてみて!あれ最近話題のエワじゃない?」
「エワって誰?」
「知らんのかよ?!あいつは国王様にも認められた歌姫だぞ!」
「へー そんなに有名なんだね。」
それにしてもどの曲もJ-POPのような曲調だ。
「最後に大ヒット曲の『奇跡の仲間』を歌います」
エワがそういうと、周りから今までよりも大きな拍手が聞こえた。そして拍手が静まると…
「何も知らないでこの世界に降り立った僕は~」
「えええ?!」
俺は思わず声を上げてしまった。
「マイクさん どうしましたか?」
「この曲知ってたから…」
「やっぱり知ってるじゃん!」
いや そういうことじゃない。この曲は俺が好きだったアーティストの曲だ。彼女はなぜこの曲を…?
「ここには仲間がいる 偶然だからこその奇跡~」
そういえばあの人は数年前に交通事故で亡くなってる。俺はまさかと感じるも、何も言わなかった。
エワは歌い終わり、一礼して横にはけた。
「さあもう終わるし帰るか。」
「え、うん…」
今日は帰ることにした。
ちょっと残念だけどしょうがない。
ちょうど横にあったアーティスト紹介の看板によると、エワは短時間無料ライブをすることもあれば、2時間の本格的な有料ライブもするらしい。
「次の休みにダンジョンにいきたいよー。特にエディ 期待してるよ!」
「エディさんの力は凄いですからねー。」
「そうだな!次回も期待していてくれ!」
三人が楽しそうに会話しているなか、俺は一人黙っていた。
「…」
「あの!」
俺に声をかけてきたのは女の子だった。
振り替えると、ライブを終わらせてすぐに走ってきたであろう、エワがいた。
(エワさん!?)
「ちょっとごめん 先に行ってて」
俺がそういうと、三人は会話を中断してこっちに手を振ってきた。
そしてすぐ会話を再開して歩きだす。
「なんでしょうか?」
「いきなりごめんなさい。実はあなたの部屋の窓から何か小動物が飛んでいったのを見たんです!」
「え、いや、それは…」
「あれはもしかして天界の妖精でしょうか?」
俺はキョトンとした。
「え?」
「私…実は転生者です!」
「まさかあなたはアーティストの『歌野起亜』さんですか?」
「そうです!たまたまあなたが妖精と会話しているところを外から見てしまい…」
そう、エワは転生者であった。死後はこの世界で生きていたなんて誰も思っていなかっただろう。
「エワさんそろそろ時間です!」
「じゃあ私はそろそろ行くね。また会えるといいね。」
「うん。」
エワはマネージャーらしき人の元へへ走っていくが、途中で立ち止まる。
「あ!あなたの名前は?」
「マイクです!」
「よろしくね!」
エワはそう言うと急いで走っていく。
転生のことを知る唯一の人物である。
また会えるといいなと感じてしまう。