転生
『もし、貴方が望むのなら…』
『君に幸あれ…』
「朝だよ」
『正太くん、君は…』
『任せましょう。彼は…』
「正太?」
謎の声とともに、お母さんの声が次第に大きくなる。
「おーい朝だぞー」
とお母さんが俺を起こしに来る。
今日もいつものように学校にいく予定だ。
「朝!?やばい!遅刻する!」
俺はベッドから素早く飛び降り、朝食を取ろうとする。
時計を見ると、さほど遅刻はしていなかった。が、学校というものは早めに行動しても損はない。
朝食は焼いたパンと牛乳だ。昨日と変わらない。
「それで、数学の問題集終わったの?」
「あ、でも2日あるから大丈夫だよ。」
「まーたそうやって言い訳を…。」
何気ない日常の会話だ。
しかし今日は変な夢を見た。神様のような妖精のような… とにかくゲームに出てきそうなキャラが出てきた何を言われたのかは覚えていない。
制服に着替えた後、いそいそ、カバンにノートを詰め込んでいると、
「今日テストだよね。赤点取ったらお小遣い減らすよ。」
お母さんが少しキレ気味に話しかけてきた。
今日はテストだ。お母さんが地味にプレッシャーをかけてくる。
俺は最近赤点を繰り返している。前回は毎日トイレ掃除というペナルティを受けた。今回はお小遣い減少という危機を乗り越えたいが…
「行ってきます。」
と言って家を出た。腕時計を見ると、バスの時間までまだ時間ががあるから横断歩道の向かいにあるコンビニに行くことにした。
朝早いため人は少ない。俺はこの時間なら普段車が通らない横断歩道に直進した。
俺はどうせ車はいないだろうと思って周りを見ていなかった。
コンビニに行ってみようとしたそのとき突然周りが暗くなった。何が起こったのかは自分にもわからない。ただ、全身が悲鳴をあげているようだ。しばらくすると救急車の音が聞こえてきた。そのまま、俺は意識を失った。
ここはどこだ。
俺は暗い空間にいた。無音で不気味なところである。俺はドキドキしながらその場に留まった。
しばらくするとコツコツと足音が聞こえてきた。目を細めると、青い髪をした女の子がやって来たことがわかる。純白のドレスを着ている。見た目は俺と同じくらいの年齢。しかし、品のある仕草をしている。
「高橋正太。あなたは17歳という若さで死亡してしまいました。」
(あ、やっぱり俺、死んだのか。)
「あなたは横断歩道を渡ろうとしていたとき、居眠り運転中の車に跳ねられてしまいました。覚えていますか?」
あまりにも早い出来事だったので覚えていない。しかし、ここは天界らしきところである。
「ここはどこですか?あなたは誰?」
「私は女神 アリスです。ここは死んだ人を案内する場所、天界です。」
やはり天界であった。アニメではよくある展開だったため、俺は驚きもしなかった。
「今からあなたに問います。もう一度人生を始めるか、これからの地球を眺めてみるか。どちらがいいですか?」
「もう一度人生を始めたいです!」
今まで何気ない日常を過ごしていて正直退屈だった。正直眺めているだけはいやだ。俺は今までにないことを体験したいと思って即答した。
「あなたは特別な体験を求めたいようですね。それに、自殺ではないのに何の未練もないなんて珍しいですね。あなたを気に入りました。前世の記憶を残して転生させてあげましょう!」
アリスは女神らしい微笑みを浮かべた。
「え、いいのですか?!」
(まさかの転生というやつ?!なんかラッキー。楽しい人生になりますように。)
俺は期待した。来世では面白い人生になることを。
「じゃあお願いします!」
俺がそう言うと辺りが白くなっていく…
よく見ると俺の足元には魔法陣らしきものが描かれている。
「よい人生を。」
ああ、これからの生活が楽しみだ。
俺の意識はそのまま消えていった。