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18 黄金の輝き


 流動する液体の黄金は一部は小鐘の鎧となり、残りは羽衣のように宙を漂う。

 それが小鐘の魔法の基本形態であり、黄金の輝きに惑わされたように魔物は一斉に牙を剥く。

 木々の間隙を縫い、茂みを突き抜け、迫り来る魔物。

 小鐘はそれを前にしても動かず、ただ宙を舞う黄金に銘を下す。

 瞬間、幾千の黄金の矢が魔物へと降り注いだ。


「こりゃ凄い」

「すっごく配信映えするね」


 光の粒が魔物を穿つ絶景。

 煌びやかで美しく、その元で血飛沫が舞う凄惨。

 相反するものの共演によって、得も言われぬ感情に心が支配される。

 尾の太刀を振るい、砕け散る太刀鼬鼠。口腔から尾鰭まで貫通した空魚。木の幹に縫い付けられ正しい位置に修正された逆さ蛇。

 戦闘の後に残る赤い光景は黄金に塗り潰されていた。


「ざっと、こんなものですわ」

「お見事」

「小鐘ちゃん格好いい!」

「ま、まぁ、お嬢様ですから。このくらいは当然ですわ。おーほっほっほ」


 いかにもお嬢様然とした、らしい笑い声が響く。

 それが照れ隠しなことはチャット欄でもバレバレだった。


§


「進む方向はこちらであっているのかしら? この辺りは緑が深くて視界が悪いですわね」

「そうだね。もうすこし歩けばまたあの遺骨が見えるようになると思うけど」

「じゃあ、ちょっと見てくるか」

「見て?」


 小首を傾げる小鐘の側で天翔空駆アイルを唱えて飛翔。

 頭上を覆う枝葉を突き抜けて遺骨が見える位置へ。

 どうやら方角は合っているようで、このまま進めば直に辿り着くはず。

 空を行けば短時間で到着しそうだけど、それじゃコラボの意味がない。

 なんでもかんでも早く済ませられればそれでいいなんて俺にとっては寂しいことだ。

 冒険者を楽しまないと。


「よっと。見て来たけど、こっちで合ってた」

「ありがとう。これで安心して進めるね」


 地面に降り立ち、両翼をしまう。


「あとどれくらいで付くかな?」

「そうだな……ここまでのペースだとあと二三時間くらいか」

「案外近くまで来てたんだ。それなら配信も冗長にならずに済むね」


 ちょうどいい尺で終わらせられそうだ。


「あの、もしかして、ですけれど」

「ん?」

「あなたはもしかして、戦場の天使と呼ばれていたりします?」

「え? あぁ、うん。最近はすっかりそれも馴染んで来たな」


 まぁ、元々戦場の天使の名はナイチンゲールのもので、本来の用途とは違うらしいけど。

 看護師と冒険者だ、恐れ多くも感じるけど、定着してしまったからもうどうしようもない。

 せめて名に恥じない自分を心掛けようと思うしだいだ。


「やはりそうでしたか。では……となると」


 ぶつぶつと小鐘は考えごとをし始める。

 その様子を不思議に思いながら凜々と顔を見合わせて首を傾げた。

 まぁ、深くは聞かないことにするか。

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