17 頭蓋骨を目指して
「小鐘は配信歴長いのか?」
「いえ、ほんの三ヶ月程度ですわ」
「俺と一緒だな、同期ってわけだ」
「あら、そうでしたの。縁がありますわね」
「私は半年くらいになるから、二人よりちょっとだけ先輩だね」
「よっ、先輩」
「えっへん」
ノリがいい凜々だった。
「おっと、そうだ。手入れしとかないと」
香草焼きを切るのに使ったナイフを簡単に拭い、手入れ布で丁寧に汚れを落とす。
こうして置かないとすぐに切れ味が悪くなってしまう。
帰ったら研いでおかないと。
「あら、そのナイフ」
「これがどうかした?」
「いえ、私も同じものを使っていまして。ほら」
取り出されたナイフは、たしかに同じもの。
「お揃いか。いいよな、このナイフ。どこのブランドだっけ?」
「フェニックス、ですわ」
「そうそう。ほかの製品も品質いいし、この前見返したら結構ここのが多かったんだよな」
比率はフェニックスのブランドが一番だったはず。
「じゃあフェニックスにするの? スポンサー」
側に来た凜々の声は、撮影ドローンが音を拾わないくらい小さいもの。
配信上でその類いの話をするのは不味いと思っての配慮をしてくれていた。
たしかに配信上で明言するのは何かと問題が起こりそうだ。
「スポンサー、ですか?」
小鐘もそれに合わせてくれる。
「あぁ、いまそう言う話が来てて。たしかにフェニックスからも話が来てたな。でもなぁ」
迷いどころだ。
「……私もおすすめいたしますわ。なにを隠そう、この私のスポンサー様もフェニックスですから。装備の品質は保証いたしますわ」
「マジか。これは有力な意見が聞けたな」
いま身に纏っている絢爛な装備は流石にオーダーメイドだろうけれど。
「でも、そろそろひそひそ話は終わりだな」
チャット欄がこちらの話を聞きたがっている。
「なにか話題を反らせるようなこと言わないと」
「じゃあ、こう言うのはどうかな? 配信の醍醐味、突発コラボ」
「いいな、それ。あぁ、もちろん小鐘がいいって言えばの話だけど」
「もちろん、お引き受けいたしますわ。けれど、本当によろしくて? 出会いの形は良いものではなかったというのに」
「前にも言ったけど、俺たちは気にしてないから全然大丈夫だ」
「折角、出会えたんだから楽しまなきゃ損だよ」
「ありがとうございます。そうさせていただきますわ」
「よし、じゃあ発表と行くか」
すこし大げさな感じで、如何にもコラボについて話していました感を演出しつつ、突発コラボの発表をすると、チャット欄の視聴者たちはものの見事に騙されていた。
そうして角兎の絶品香草焼きの余韻も終わる頃、俺たちはセーフティーゾーンを抜け出し、第六階層の攻略に乗り出す。
「この階層に来たからには行ってみたいよな、あの頭蓋骨」
頭上を覆う枝葉の隙間から垣間見える巨大生物の遺骨。
肋骨のトンネルを抜けて、頭蓋骨の中に入ってみたいと思うのは俺だけじゃないのはチャット欄を見れば一目瞭然。視聴者もその絵がみたいんだ。
「では、行ってみましょうか。今回の目標にするといたしましょう」
「うん、尺的にも良い感じ」
「マジ? よし、俄然やる気が出て来たな」
巨大生物の遺骨は大きすぎて第六階層にいる限り、どこに居ても目に入る。
あれほど大きな目印があればどんな方向音痴でも迷いはしない。
間違えて獣道を進まないことだけを考えつつ木々の傷跡に従って歩く。
ただ正解の道を歩き続けてもダンジョンにいる以上、行き当たるのが魔物という存在。
第五階層にはいなかった魔物たちがありがた迷惑なことに、続々と姿を見せてにやってくる。
「太刀鼬鼠、空魚、逆さ蛇か」
三人で掛かればさほどの苦もなく斃せるはず。
「ここは私にお任せを」
「お、やる気だな」
「えぇ、お嬢様らしく、優雅に殲滅してご覧に入れますわ」
魔法は唱えられ、小鐘の周囲に黄金に輝く液体が溢れ出す。
「武装千金」
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