僕の記憶をキミにあげる2話
「私、目、見えなくなっちゃったみたい」そ、そんな、彼女が、、。視力を失った、、、。なんで、なんで彼女が、、。僕は必死に先生にしがみつき、こう言う。「先生っ!僕の、僕の目を、彼女にっ!僕は目が見えなくてもいい!でも彼女はっ!!」はぁっはぁっ。苦しい。息ができなくなりそうだ。でも、それでも先生に頼む。「彼女にはこの世界をその目で見ていてほしいんだ!」「お願い、だからっ。」そう言っても、先生は悲しそうに「君は、もう、あまり長くないんだ。だが彼女にはこれからがある。」「それでも、それでもっ!」僕は大声で「彼女が見ている世界を、僕は知りたい!少しでも知れたなら、僕は安心してこの世を去れるっ!」パシンッッ!誰かに頬を叩かれた。それは、彼女だった。彼女は涙を流していた。「啓介のバカ!簡単にこの世を去れるとか言わないでよ!」彼女は目が見えていないはずなのに、僕の目をまっすぐ見る。その視線は、少しだってズレていない。「でもっ!キミが見る世界を僕は知りたい!だって僕の命はあと半年もないんだっ!目が見えなくなったって構わない!キミがこれからもこの目でこの世界を見てくれるなら、僕はそれだけで充分なんだ!それに、僕が生きていたって事を、キミが証明することになるんだ!それで構わない!」「でもこれは、運命なんだよ!きっと神様が決めたことなんだよ!」「そんな運命、ぶち壊してやる!こんな理不尽な運命を与えたのが神なら、僕は抗う!僕は死んでからも戦う!だからキミは、キミの面白い世界というのを見ていてほしいんだ!その為なら、僕はこの目をキミに捧げる!」「そんなの、、、ダメだよ。」「私は、啓介に生きてほしいよ、、、。神になんか抗わなくていい。私の、私のそばにいてよ!もっと生きようとしてよっ!生きることを、諦めないでよ。」彼女は僕にしがみついてそう言った。僕だって生きたい。でも僕には時間も、希望も、未来さえも、何もない。僕だって本当は死にたくない。でも、この記憶障害、いや、病名は記憶身体死滅障害そう、記憶も身体も死ぬって病気だ。
だが今はそんな事はどうだっていい。「先生、お願いだ!僕の目を!」「そんなの、ダメよ!」僕達が正反対なお願いをしたからか、先生はとても困っていた。「啓介くんは、良いのかい?それで、、」「いいんです!」先生は苦しい顔をしながら、「わかった。眼球移植をしよう。」「先生、だめ、ダメだよ!」「もちろんキミの言い分も分かる。それが正しいとも思う。だが、彼の気持ちも汲んであげたいんだ。」「そんな、」涙をボロボロ流す彼女に「大丈夫だよ、たとえ視力を失っても、僕にはキミが見えているよ。これからもずっと。」