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俺、友達のために鍛えようと思います

 最近友也がめちゃくちゃグイグイくる。具体的には授業や宿題の分からないところだったり、サッカーの難しいテクニックなんかをよく質問してくる。

 サッカーに関してはまぁいいとしてさ、勉強の質問とか友也さんどれだけ真面目なんですか!?しかも小学一年生だよ?質問の内容も漠然としてるわけ。『0と0を足したらどうして0のままなの?教えて!』って知るわけないだろッ!!

 だがここは兄貴分としてバシッと答えなくては!


 

 『ッイタタタタタ!ごめん友也、僕急にお腹痛くなってきちゃったからまた明日でいいかな?』


 結論、俺は人に何かを説明するなんてことはできなかった。

 仕方なく家に帰って父親のパソコンを拝借、ネットで証明を見漁り、自分なりにノートにまとめていく。あとはこのノートに書いてあることを読み上げればいいんだ。僕ちゃん天才!!

 ふむふむなるほどなるほど、ゼロの定義がほにゃららで数は拡張されていきX=0が成り立つと、なるほどなるほど・・・ってわかるか!!!まず定義からして読めんわ!!数学科の連中は小学一年生の国語からやり直したほうがええんちゃういか!!難しい言葉使って頭いいアピールとは片腹痛いわ!!



 「中身は低学歴だもんなぁ」

 悔しい、せっかく友人が頼ってくれているのに俺があほなせいで。すまん友也、卑怯で馬鹿で、ついでに中卒の俺を許しておくれ・・・と、前までの俺だったら思っていただろう。

 今の俺は身体も心も生まれ変わった鳴瀬稔浩だ!諦めてたまるか!!そうと決めれば一からもう一回解読じゃ!!

 

 こうして俺は度重なる友也からの質問に答えるべく、寝る間も惜しんで勉強に励んだ。俺を突き動かす原動力は”友情”ただひとつ。だがその純白な思いはおれに思わぬ副産物を遺していった。

 そのスパイスは低学歴だった俺の勉強のスイッチに、そしてデブで体力がなかった俺の運動のスイッチに火をつけた。若い無尽蔵なスタミナを自分磨きのために費やし、大切な友人を前世同様失わないために。


 「おはよう友也!さっそく昨日の質問の答えなんだけどさ、やっぱり0ってまずなんなのかを考えるといいと思う。所謂定義ってやつ。そんないやそうな顔すんじゃねぇって、この概念は数学を学ぶ上で絶対に必要な知識だから。これ知っておくとめっちゃ楽になるぞ! よしっ、そうそうやる気出してこ!じゃあまず0っていうのはな・・・・・・・」




 

 

 


 「・・・君!ねぇヒロ君!聞いてるの!」

 「っとごめんごめん。考え事してただけだよ」

 今日も今日とて友也と給食を食べながら漫談。このクラスでは先生の提案で給食の時間のみ席の移動が許可されている。なんか派閥とかできちゃいそうだし、なんなら小学一年生からボッチ飯を経験しなければならない人が出てきそうなものだが・・・そこんところは先生がカバーしている。『この子入れてあげてね(圧)』って感じで。まぁ上手くやれてるみたいだし、俺はボッチには慣れてる。問題が起きていないならこのままでいいんだろう。

 

 「ふわぁ、今日もヒロ君はかっこいいね!考え事してるだけでも様になるよ!」

 「そ、そうかな?あんまり自覚ないけど」

 「だ・か・ら!もっと自信もってよ!」

 

 最近の悩みの種というか、困っていることといえばそれすなわち友也の態度。

 めちゃくちゃ褒めてくれる。うれしい反面、ここ数日は特に何をするわけでもないのに持ち上げられる。気分はジェットコースターのてっぺんにいる感じ。いつ突き落とされるか怖くて怖くて仕方がない。まぁ友也が突き落としてくるわけないけど。前世の記憶が悪く出るいい例だ。雑念は振り払え!

 自分の容姿が整っているといわれて悪い気がしないのも事実。とりあえず素直に受け取っておこう。

 

 「う、うん、そうだね。善処するよ。 ところでさ、何か言いかけてなかったっけ?」 

 「あっそいえば、えっとね、いざ言うとなると緊張するなぁ」

 「安心しなって、俺は友也が何言っても笑ったりしないから」

 そういって俺は友也の頭を撫でる。やばい、小動物みたいで癒される。

 「もう!そういうとこだよ!」

 「怒ってるみただけど顔は正直だな」

 友顔がとろけているんですけどー。よほど気持ちいいのだろうか。

 「まっ、お遊びはここまでにして」

 俺は友也の頭から手を離した。名残惜しそうにしゅんとしている姿は見なかったことにしよう。

 「教えてよ。いいニュースかな?」

 「え、えっとね、来月の隣町への遠征なんだけど・・・僕もメンバーに入れてくれるって!監督が!」

 「ッ!ほんとか!?やったな!!」

 「うん!これでやっと二人に追いつけるよ」

 これは冗談抜きですごい。この遠征では原則一年生は帯同しない。俺と清は例外として、普通一年生がほかの学年のやつと試合なんてしたら吹き飛ばされて終わりになるのが関の山だ。あまり体格がよくない友也がこっちの世界に来るためには並みの実力ではだめだ。それを実現したのだから、友也のこの遠征にかける本気度も伝わってくる。

 最近の友也は勉強だけじゃなくサッカーも頑張っていた。実力もメキメキつけていった。だがいくらなんでも早すぎる。前世のなけなしの貯金で上のカテゴリーに上がった俺や、もともと上にいた清に、この短期間で一から追いついてきたんだ。素直にすごいとしか言えない。

 

 友也はコツをつかむとすぐになんでも要領よくできてしまう。まったく、油断ならないライバルだぜ。

 

 「まじでうれしい!清も喜ぶだろうなぁ。ってそういえば清は?」

 「あぁ清君ならボールを蹴りに体育館へ走って行ったよ」

 「なんだって!?あいつ抜け駆けしやがって!許さん!ちょっと俺も行ってくる。友也も来るか?」

 「うーん、じゃあ僕もいこっかな!」

 「そうか!よし、まずは飯だ。速攻片付けて体育館にいくぞ!」

 「うん!いっぱい食べていっぱい走らないとね!」


 燃えてきた!まずは来月の遠征!絶対に活躍して見せる!!


 

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