サッカー王に、俺はなる!!
お待たせしました!
「俺はまだお前を認めたわけじゃないからな。友也が言うから仕方なく友達になってやってるんだからな」
「わかってるよっ」
入学式から経つこと一カ月、俺は二週目の学校生活を謳歌している。
顔が良くなってくれたおかげで周りからの迫害も無い。
だが、もし顔が前世のままだったとしたら俺はどうなっていたんだろう?俺はまた引きこもっていたんだろうか?
いや、そんな未来は絶対にないーーー今なら断言できる。
俺には友達がいる、外の世界に友達がいる。
あぁ、世界ってこんなにも楽しかったのか。人の目から逃げて逃げて逃げて、それでも神様は最後のチャンスを与えてくれた。俺に前を向けと背中を押してくれた。
前世の経験なんて大したことないんだ。どうせならなんでも挑戦してやる!
そのためにもまずは・・・
「なぁ友也」
「どうしたの?」
「一緒に習い事とかしてみない?たとえば、サッカーとか」
「なんでお前が居るんだよ」
「居ちゃ悪いかよ」
「あれ、ヒロ君知らなかったの?清君はこの流星ユナイテッドのエースなんだよ!」
まるで自分のことのように誇らしげに胸を張る友也。か、かわいい。思わず頭をナデナデ
「もうっ、やめてよ~」
嫌がる言葉を発しながらも頬は緩み切っている。なんだこれ、一家に一台欲しい・・・いや、独占欲が邪魔をする。誰にも渡してやるもんか!!
「おい!俺を差し置いていちゃつくんじゃねぇ!!いい加減に友也から手を放しやがれ!」
「えー、パワハラですよー」
「うっせぇ!お前の敬語気持ち悪いんだよ」
俺たちがわちゃわちゃしていると向こうからおっさんがやってきた。年齢は五十歳くらいかな?白髪交じりのソフトモヒカンにサングラス。まだ五月なのに半袖短パンのナイスガイ。めっちゃ怖そう。
「君たちが体験にきた鳴瀬くんと梶田くんかな?」
「「はい!」」
「うん。元気があって何よりだ。僕は内田という者だ。ここの監督をしている。君たちを歓迎しよう!これからよろしく」
そう言って手を差し出してきた。訂正、めっちゃいい人じゃん。怖いなんて言ってごめんなさい
「こちらこそよろしくお願いします!」
こうして俺のサッカー人生が始まった。どうせサッカーやるなら目指すは世界!メッシやクリロナをはじめとするトッププレイヤーたちよ!そこで震えて待ってろよ!!
「ところで君たちは清と話していたみたいだが、もしかすると友達だったかい?」
「ちょっ、監督!」
「はい!僕たちみんな友達です!!」「です!」
「そうかいそうかい。それは良かった。清に友達がいないのかと思って心配していたんだ。それも杞憂だったみたいだな。しかも二人とも美少年!君たちもしよかったら「ねー監督ー!こっちきてくださーい!」」
「くそっ、邪魔が入ったか。じゃあ僕はあっちの方に行くから、練習の事なんかは清に聞いて、あとは好きにしていなさい」
「「はーい」」
「おい!俺はまだいいって言ってないぞ!ってあれ、監督は?」
「監督ならもう向こうの方に走って行ったよ」
「とってもパワフルなひとだなぁ」
「そんな暢気なこと言ってられるか!」
「まぁいいじゃないか。」
分かり易く項垂れる清
「で、清く~ん」
俺はゆっくりと清の肩に手を伸ばす。
「な、なんだよ。気持ち悪いぞ」
「もしかして、チームに友達いないの?」
一瞬で清の顔が真っ赤に染まる。
「う、うるせぇ!い、いるよ!友達なんていっぱい!」
「たとえば?」
「たとえば・・・あつしとか?」
「それはクラスのやつだろ。いやぁ、変だと思ったんだよ。ここで会ったときも一人でいたし」
「あ、それは僕も気になってた」
うんうんと友也も同調する。
「・・・嫌なんだよ。下手な奴と馴れ合うのが」
ぽつりと清が言葉を溢す。(うわっ、こいつしれっと腕を払いやがった)
「俺は何としてでも一流のトップ選手にならなくちゃならない。だけどこのクラブのモットーは『楽しくサッカー』だからよ、練習メニューも下手な子に合わせて作られてる。監督も適当だし、雰囲気もどこか緩い。確かに友也やお前みたいな初心者の子にはにはぴったりのチームだよ」
「けど、」と清は続ける。
「俺は上手くなりてぇんだ。誰よりも。だから、俺についてこれない奴に合わせる必要は無い」
「そうか、」
「清君、」
「だからお前も俺にまとわりついてくんな。俺は一人で練習してるからよ」
こいつをここまでサッカーに駆り立てるものが何なのか俺には分からない。この歳でこんなにも熱中するものがあるなんて普通じゃないだろう。
でもな、俺の精神年齢はとっくに成人してんだ。小坊なんかに気持ちで負けてたまるか!
「奇遇だな清!俺もついさっきサッカーで天辺目指すって決めたんだ。そんでもって俺は負けず嫌いなんだ!」
「だ、だからなんだよ!ていうかお前サッカー始めたばっかりだろ!?」
「あぁ、まだまともにボールにも触ってねぇ」
「じゃあなんで」
「俺にもな!譲れないものがあるんだよ!」
「っ!!!」
「俺は他の誰でもなくお前にサッカーを教えて欲しいんだ。”友達の清君”にな」
「い、意味わかんねぇ。どうしてお前はそんなに構ってくるんだよ!う、鬱陶しいぞ!」
「声が震えてるぜ清よ。さっきも言ったじゃねぇか、俺たちは友達だって。友達にサッカーを教えてもらうのなんて普通のことじゃねえか」
「お前のそういう分かった気になってるとこが一番気に食わないんだよ!」
「あぁ、俺はお前の事情なんて一ミリも分かりはしない」
「は、はぁ!?」
「だけど現状に抗おうと必死に努力してることはわかる。お前のスパイクはボロボロだし、ボールも剝げだらけだ。そんなやつがサッカー下手なわけがない。俺は上手くなりたいんだ。そのためにも、清、お前の力を貸してくれ。この通りだ」
俺は頭を下げる。となりで友也も「僕からもお願い!清君!」と頭を下げる。
「・・・ほんとにいいのか?俺の指導はスパルタだぞ」
「あぁ、望むところだ」
「お前みたいなことを言うやつは初めてだぞ」
「へっ。照れてるくせに。顔が赤いぞ清君っ」
「う、うるせぇ!」
「あとさ、俺の名前は”お前”じゃなくて稔浩だから」
「ッ!・・・ヒロ、これでいいかよ」
「フフッ」
「おい今笑っただろ!!もう一生お前って呼んでやるからな!!!」
「ごめんごめん・・・フフッ」
「お前ぇえええええ!!!」
それから清によるスパルタ特訓が始まった。監督の練習を無視していいのかと思わなくもないが、まぁ何とかなるだろう。もちろん友也も俺たちと一緒に猛特訓だ。
『さぁ!目指すは頂点!サッカー王に、俺はなる!!』
私が好きなサッカー選手はエジルとかアザールとかですね。日本人だと佐藤寿人と柿谷曜一朗が好きです。