初めての友達
桜が咲き乱れる校門前で母と写真を撮り、そのまま帰路に就く。俺はこの日をもって二度目の小学生の道を歩むことになる。
だがしかし!前世との圧倒的な違い!それは!
「よかったわねヒロ!いっぱいお友達が出来て」
「うん!」
そう、何を隠そう俺は二度目の人生で初めて友達ができたのだ!!!
時は二時間ほどさかのぼる。
どこぞの議員や校長の話が終わり入学式が閉幕すると、各クラスごとに分かれて教室に移動することになった。式の途中に周りを見渡してみたが全校生徒はざっと百五十人くらいだろうか。いたって普通の地方の小学校といったところか。教室では担任の軽い挨拶と荷物の確認などが一時間くらいあって解散となった。ちなみに担任は三十歳くらいの女性教師だった。
先生が教室から出ると周りががやがやし始める。教室の後ろで待機していたママパパたちも談笑し始め、うちの美人ママもしっかりとママ友ネットワークを構築していた。抜け目ねぇ。あの目は狩りをする猛獣の目だ。ライオンは狩りをメスがするという。つまり、まぁそういうことだ。
その時だった。
「ねえ君!」
元気のいい声とともに何者かに肩をたたかれた。俺が背後を取られただと!?
俺はビビり散らかして「うひゃっ!」と情けない声を出した挙句、もたれていた椅子から転げ落ちてしまった。急いで周りを見渡してみるものの、幸い目立たずに済んだようだった。
安心したのもつかの間、誰かがしりもちをついている俺の顔を覗き込んできた。どうやらクラスメイトの子のようだ。
「大丈夫?」
その声でさっき声をかけてきたやつだと気づき、俺は慌てて立ち上がった。
「ご、ごめん。ついびっくりしちゃって」
俺はなんといっていいのか分からず、おどおどしながら答えた。
「いや、こっちこそいきなり声かけてごめんね。迷惑だったかな?」
”迷惑”、この言葉は俺の目を覚まさせるに十分だった。
あぁもう!こんな小さな子に何言わせてんだ俺!人から存在を否定される苦しみを俺が誰よりも知っているだろう!それがたとえ些細なことでも、ファーストコンタクトで拒絶されることはとっても苦しくて辛いんだ。人との会話を恐れるな!!戦争をしているのはママだけじゃない!今、この友達作りという史上最大の難問が俺の前に立ちはだかっているのだ。こいつを越えなければ!俺は何も変わらないじゃないか!
「全然!迷惑じゃないよ!むしろうれしい!話しかけてくれて。どうかしたの?」
努めて優しく話しかける。精神年齢は俺のほうが上なんだ。
俺の言葉を聞いてぱぁっと顔に笑顔を咲かせる少年。笑顔が似合ってて可愛い。っは!俺にショタの属性はない。俺にショタの属性はない。俺にショタの属性はn・・・
「いやさ、先生の話の時にさ、君ずっと背筋伸びてたじゃん?とってもかっこいいなって思ってさ!それでね、もしよかったら僕と友達になってくれないかな?」
低俗な思考がループしていた俺の脳に一つの爆薬が投げ込まれた。
”僕と友達になってください”だとお!?なんていい子なんだ!おじさん感激のあまりもう一回死ぬかと思ったよ。あ、これ転生者ジョークね。
「もちろん!こちらこそよろしくね!!」
とびっきりの笑顔をかましてやった。心なしか彼の顔が赤くなっていたけど気のせいだろう。
「そうだ、僕は鳴瀬 稔浩。気軽にヒロって呼んでね。よかったら君の名前も教えてくれない?」
「っは!えっと、僕は梶田 友也≪かじた ともや≫って言うんだ!友也でいいよ!」
「わかった。友也君だね!これからもよろしくね!」
「うん!こちらこそ!ヒロ君!」
なんと良い子を友達を持つことができたのだろうか。友也も将来イケメンになりそうなオーラが漂っている。だってこんなにも可愛いんだもの。
俺が人生初の友人に感動していると、今度は少し太めの腕で誰かが肩を組んできた。また俺が背後を取られただとお!?誰だ?俺のアオハルを邪魔する奴は?ゆっくりと振り返ると、そこには・・・
ジャイアンがいた。しかも仲間をいっぱい引き連れて、
「おいお前!うちの友也になにしてんだ!!」
ジャイアンに伏字を使うか否か、これはなんちゃらの最終定理よりも難解だ。固有名詞としてとることも可能ではあるが、それにしたって大きいからジャイアンってのはいくら何でも安直すぎやしないだろうか。安直といえばブタゴリラなんかはもっとひどい。豚なのか、ゴリラなのか、それともキメラ(合成獣)なのか、はっきりしてほしいところだ。しかし、それらの漫画は何世代にもわたって人気であることも事実。つまり、親しみやすければいいのだ。私も親しみやすい小説を目指している。この話を読んでくれたあなたはきっと、大企業からの著作権という鉄槌を恐れない私の魂の作品に胸打たれ、ついでにポイントを入れてくれること間違いないだろう。なんてったってジャイアンをジャイアンとして書いているのだから。
よってこの命題は真。ジャイアンは私の評価ポイントのいけにえとして伏字なしで投稿します。