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人生山なし谷あり 〈前世〉

小説紹介の部分を改稿しました。今後は大筋が変わらないよう頑張ります!

 俺は今、猛烈に興奮している。それはなぜか、答えは簡単。くそみたいな人生から抜け出すことができたからだ。





 幼少期は活発な男の子だった。

 異変に気付いたのは小学校中学年ごろ。みんなよりもぽっちゃりだった俺はみんなから豚呼ばわりされるようになった。(豚は結構ヘルシーなんだぞ!)

 「やーい、豚さ~ん!ここまでおいで~」

 そう言いながらケラケラと笑うクラスメイト達へ日に日に殺意だけが増していった。

 ただまあ、そこで俺が「ほらほら~!豚さんだよ~!ぶひぶひひh」とでも言えたなら、いじられキャラの立ち位置をゲットできたかもしれない。

 だがそれだけではなかった、俺はよほど前世で悪徳を積んだらしい。顔もイケてなかったのだ。

 鏡を見て絶望した。細く吊り上がった目、ぷくりと腫れた唇、弁当箱みたいに四角い顔の輪郭、モテる要素が皆無なこの身体、神からのいじめである。

 

 そしてとうとう、俺はグレた。

 

「やーい、豚sって痛っ!!」

 中学生にもなって低レベルないじりをかましてくる奴に、カウンターとして一発ぶん殴ってやった。

 それが原因で一週間の謹慎処分を食らう羽目に。

 親も出勤してたった一人、ベットの中で瞑想する。

 『このまま適当に高校、大学と進学し、適当に就職する。そんな当たり前の人生すら俺にとってはハードモードだろう。そんな人生まっぴらごめんだ!好きなことで生きる!そうだ、ヒカ〇ンさんもそう言っていたじゃないか!』

 とがった俺は一週間たった後も自宅警備に勤しんだ。

 親父にはたまにぶたれたが、これ以上腫れようのないこの顔は無敵である。しばらくすると親は何も言わなくなった。

 

 そんな俺にも唯一の趣味があった。それが野球観戦である。

 一応俺は小学校の頃に少しだけみんなと混ざって野球をしていた。(ドカベンみたいな俺はキャッチャーばかりやらされていたが・・・)

 中学校に進学するころにはプレーを辞めていたものの、テレビのプロ野球中継はよく見ていた。学校に行かなくなると、それで得た大量の時間を野球中継の視聴に当てた。

 

死んでも働きたくない俺はとりあえず野球解説の動画をネットにアップロードし、小銭を稼いでいた。(親からお小遣いを恵んでもらえなくなったからだ)

それが思ったよりも上手くいったのでどんどん投稿。プロ野球の中継を見ながら解説者のまねごとをする様子を生配信することもしばしばだった。

 プロ野球の放映権がD〇ZNに移り、地上波でプロ野球がなかなか放映されなくなったことも幸いして、生放送の同時接続者はうなぎ登り。見事一歩も動かずに生計を立てることに成功した俺だった。

 「人生ってイージーだなぁ」

 調子に乗った俺はある企画を思いつく。

 『そうだ!プロ野球のOBに直接インタビューしてその様子を動画にしよう!』

 これが俺の人生崩壊の始まりだった。


 結果として動画自体のできは良かった。そこに関しては結構好評だった。そこに関しては・・・

 「ふざんけんなよ!!」

 俺は手当たり次第に暴れまわった。原因はその動画の一つのコメント。

 『主の顔、化け物で草www』

 よみがえる悪しき記憶。手足が震え、鳥肌が止まらない。それを誤魔化すため、俺はモノに当たった。そうでもしなければ自分を保てないような気がした。


 それからしばらくは何をやるにしてもやる気が起きなかった。更新の止まったチャンネルのフォロワーはみるみる減っていく。

 『結局俺の居場所はどこにもなかったんだ』

 


そして俺は自殺を決意する。


最期に俺という存在をこの社会に知らしめてやりたい。そう思い、手ごろな高さのビルから飛び降りることにした。

久しぶりに家の外に出てみると随分と様子が違っていた。見たこともない家が隣に立っているし、最寄り駅は新しくなっていた。

「俺だけ世界から取り残されてたって感じだなぁ」

これまた見たこともないデザインをした電車に乗り込み、繁華街のほうへ向かう。

「ほんとに売ってたのか、タピオカって。都市伝説かと思った」

駅前の店も見たことないものばかりだが、一周回って楽しめる余裕まである。


その時だった。視界の隅に信号を無視して交差点を渡ろうとする少女の姿が見えた。その向こうからは大型トラックが迫っている。

考えるよりも身体が動いた。

「最期くらい!カッコつけて死にたいんじゃぁあ!!!!!」

少女を突き飛ばした直後、身体にとてつもない衝撃が襲う。だが少女は助けることができたようだった。

俺というゴミ以下の存在が未来ある一人の少女を救った。もう、それで十分だ。

見てるか世界!!!俺という存在を!!!

見てるか神よ!!!俺の雄姿を!!!

もし見ているんだったらなぁ!俺をイケメンに生まれ変わらせろ!!!!!!


 次の人生ではやりたいことを心ゆくまでやり切りてぇなぁ



 沈みゆく意識の中で「うむ、聞き届けようではないか」という声が聞こえた気がした。



?「タピオカは都市伝説」

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