俺はバカにされた
「…何しに来たの?」
「今回は聞きたいことがあってきたんだよ…」
「そう、ならいいけど」
ゼウスは前と同じように、高そうな椅子に座っていた。俺も対面する普通の椅子に腰掛け、聞きたかったことについて話を振る。
「…で、聞きたいんだけど『異能』って全員が持ってるもんじゃないのか?」
「ああ、そのこと。まあ珍しくはあるけど『異能』を持たない人もいるわ」
その時俺はゼウスからの『異能』の説明を思い出していた。その説明では『異能』は与えられた運命、そう話していたはずだ。
「運命がどうとか言ってなかったか?」
「まあ、神様ってやつの気まぐれなんじゃない?」
ゼウスは俺を見ることなく、髪をいじりながらそう答えた。あまりにも適当な説明に俺は頭にハテナを浮かべる。
「神様の気まぐれって…ゼウスがその神様なんじゃないか」
俺がそう言うとゼウスは鼻を鳴らすように笑った。
「フッ、そうね。まあ…何はともあれ…」
ゼウスはそう言ったあと、突然キメ顔をして俺の方を見た。何をするのか分からなかった俺が首をかしげていると、ゼウスから少しの悪意を感じ取った。
「そんなのよりも、それが無くても頑張ろうとする努力の方がよっぽど凄いと俺は思うぞ!(低い声)」
「なっ!?」
何をするかと思えば、ゼウスは俺がエイラに言った言葉をそのまま発言した。しかもバカにしてるような低い声で。いざ自分で聞いてみると、なかなか着飾った言葉を言っている。正直凄く恥ずかしい。
「な、なんで俺が言ったセリフ知ってるんだよ!?」
「なんでって…私が神様だからよ?アンタが悪いことしてないかたまに見てるの。そしたらカッコイイこと言ってたから…フフ」
「バ、バカにしやがって…!」
「フフ…そうかしら、いい言葉だと思うけど?」
してやったりとゼウスはニコニコと笑う。バカにされて恥ずかしい思いをした俺は、この話題を変えるために適当な話を振った。
「くっそ…あ、そうだ!もう1つ聞きたいことがあるんだった!」
「そう、なにかしら?」
「…胸を揉むトレーニングって聞いたことあるか?」
早く話題を変えたかった俺は、さっきエイラがやっていたトレーニングについて聞くことにした。これであのトレーニングをゼウスが知らなければ、多分エイラは友達に騙されているのだろう。
「む、胸を揉む…?あぁ、彼女がやってたやつね。少なくとも私は聞いたことないけど…」
「だよな…」
これは戻った後であのトレーニングは騙されてるだけだと、一度エイラに言った方がいいだろう。もしこのまま続けられてしまったら、俺は毎晩席を外さなければならなくなる。
「よし…じゃあ、そろそろ戻るかな」
「そう。じゃ、引き続き頑張って」
「おう」
俺はゼウスに別れを告げて、蒼い石を使って宿屋に戻った。そしてトレーニングのことを話そうとベッドを見る。しかし、エイラはすでにベッドに横になり寝息を立てていた。
「…まあ、また今度でいいか」
わざわざ起こすほどの事でもないので、俺もベッドに横になりエイラに背を向けた。初めての戦闘を経験したからか、俺は疲れが溜まっていて比較的すぐに寝付くことができた。
「…ん…」
日の光とともに、俺は寝苦しさを感じ目を覚ました。姿勢が悪いのかと思った俺は、寝返りをして天井を向く。しかしまだ寝苦しさが残っており、顔だけ動かして周りをみる。するとエイラが俺に抱きつきながら、涎を垂らしている。寝苦しさの正体はこれのようだ。
「お、おい…!」
「んー…」
エイラの肩を軽く押して離そうとしたが、エイラは余計に強く抱きついてくる。俺の体にエイラの少し成長した胸が、押し当てられ暖かく柔らかい。
「…ダメだ、全然離れない…!」
何度か押し離そうとしたが、エイラは全く離れる気配がない。そして寝付くこともできない俺は、動くこともできずエイラが起きるまで待つことになった。
(それにしても…割りと大きいな…)




