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運命の転生者  作者: apple-pie
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理由

ダイン、ルシアの一件が無事に終わり、2人の笑顔を見届けた俺たちは宿屋に戻っていた。そしてエイラとレムにおやすみを言い、俺はベッドに横になる。


「あ…そうだ」


俺は思い出したようにベッドから起き上がり、ポーチから蒼い石を取り出した。ゼウスにこの一件を話したかったからだ。石を起動させ、椅子に座ろうと考えていたとき、俺は周りの様子がいつもと違う事に気づく。


「あ、あれ?椅子がない」


そこに椅子はなく、ただ暗い場所に俺は立っていた。何か間違えたのかと動揺していると、奥から足音が聞こえてくる。


「ゼウスか?ここって…って、だ、誰?」


ゼウスかと思って振り向いたが、そこにはゼウスと同じような金髪の女性がいた。白いローブに身を包み、言い表しようのない神々しさを放っている。


「サトウヒロキ…」


「え、はい…」


「なぜあの2人を助けたのですか」


その女性は全てを見透かすかのような鋭い視線でそう尋ねた。あの2人とは恐らくダインとルシアのことだろう。


「な、なぜって…人が困ってたら助けるのが普通なんじゃ…」


「…理由も無く助けたと?」


「…?理由がなきゃいけないのか?」


質問の意図が汲み取れず、俺はそう答えた。すると女性は俺を鼻で笑い、背を向けてゆっくりと暗闇へ歩き始めた。


「…彼女があなたを気にかける理由が、少し理解できた気がします」


「え…?」


そう言い残し、その女性は暗闇に消えてしまった。1人取り残された俺はどうすればいいか分からず、ゼウスに話す事を諦めて再び蒼い石を起動し、宿屋に戻った俺はベッドに横になった。


「…なんだったんだ」


「お母様に会ったのね」


突然横から話しかけられ、俺は飛び跳ねながら振り向いた。そこには腕を組んだゼウスが部屋のソファに座っていた。


「うおっ!?ゼウス!?なんでここに!?」


「なんでって…私に用があったんじゃないの?」


「そ、そうだけど…いきなり現れるなんて心臓に悪いぞ…」


そう言いながら俺は体を起こし、ソファに座るゼウスと対面するようにベッドに腰掛ける。


「というか、お母様って?」


「アンタが今会ったのは女神アルヴァリアス。私達のお母様よ。ま、平たく言えば1番偉い神様ってとこね」


「へー…」


俺の適当な返事にゼウスはぴくりと眉を動かし、俺を睨みつける。


「…失礼な事言ってないでしょうね」


「…言ってない、と思う…」


「はぁ…まあいいわ。お母様はなんか言ってた?」


そう言われ、俺はあの場の会話を思い返した。


「なんか…彼女が俺を気にかける理由がわかった…とかなんとか」


「…!」


ゼウスは少し頬を赤らめると驚いたような表情を浮かべた。不思議に思っていると、ゼウスは俺から視線を逸らす。


「どうした…?」


「な、なんでもないわよ」


「いやでも…


「それより、私になんの用だったの!…まあ予想はつくけど」


俺の言葉を遮るようにゼウスは話を切り上げる。そして俺は教会での出来事を話そうとしていたことを思い出した。


「そうそう、色々あったんだよ」


俺は教会で起こった出来事をゼウスに話した。その間ゼウスは微笑みながら聞いてくれている。そして2人の最後まで話したところで、ゼウスは組んでいた足を戻す。


「知らなかったとはいえ、流石のお人好しね」


「…?どういうことだ?」


「…一ついいものを見せてあげるわ」


そう言うとゼウスは手を広げて前に出す。すると俺の前に薄いモニターのようなものが現れ、そこには2人の子供が写っていた。その容姿はダイン、ルシアに似ており、2人の子供の頃のもののようだった。しかし2人はボロボロの洋服を着ており、汚れも酷く、誰も近くに寄りつこうとしていない。まるで捨てられた孤児かのようだった。


「……」


映像の2人は羨ましそうに何かをジッと見つめている。その視線の先には高貴な衣装を見に纏った親子が闊歩していた。周りにいた商人達はそれを囲うように近づき、へこへこと頭を下げて機嫌を伺う。


「…ルシア、いくぞ」


「…うん。でもずるいよ」


「言っても仕方ないだろ」


ダインはなだめようとしたが、ルシアは依然不服そうな顔をしている。


「…大丈夫だ、ルシア。俺がなんとかするからさ」


「うん…」


2人と家族との間を馬車が駆け抜けると、場面が変わった。先程の家族の子供とルシアが何かを言い合っている。周りに親はおらず、商人達も止める気配はない。


「…ごめんなさい」


「ハッ、そんな汚い服で僕にぶつかっといて謝って済むと思ってんのか?」


そう言うと子供はルシアを突き飛ばした。幼いルシアは衝撃に耐えられず、後方に飛ばされて倒れ込んでしまう。


「…っ!」


ルシアは歯を食いしばり痛みを耐えた。そして立ち上がると同時に手に棘を出し、反撃しようとしたその時だった。幼くまだ『異能』を使いこなせなかったルシアの棘は、道を走っていた馬車の馬に絡まり、暴れてしまったのだ。


「…!」


大きな衝撃音のあと、画面に写っていたのは馬と馬車に踏み潰され、血まみれで倒れるあの子供だった。ルシアは怯えてしまい、その場に座り込んでいる。


「ル、ルシア…!?」


そこに小さなカビの生えかかったパンを2つ抱えたダインが現れ、座り込むルシアに走り寄る。


「ルシア!何があった!?怪我は!?」


ルシアは放心してしまい、返事をしない。その様子を見てダインはルシアの体に触れ、怪我がない事を確認したあと、再び周りを見回した。その時ダインは、一枚の金貨が目の前に転がってくるのを見つけた。


「…!」


ダインは現状をある程度把握し、ゆっくりと倒れる子供の方を見る。大勢の大人が周りを囲っている。親や助けを呼ぶ声で音もよく聞こえない。


「俺がなんとか…する」


映像はここで終わってしまった。2人の過去を見た俺は少し驚いてしまい、何も言うことができなかった。


「…2人を助けたこと、間違いだったって思う?」


先に沈黙を破ったのはゼウスだった。


「それは…ないよ。2人を助けた事に、過去とか過ちとかは関係ないから」


「…そう」


ゼウスは微笑んでそう答えた。


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