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運命の転生者  作者: apple-pie
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変わる運命

全身を棘に貫かれ、俺は地面に倒れ伏す。


「く、そ…」


「ヒロキさん、しっかり…!」


霞んでいく視界のなか、エイラが必死に回復魔法を使いながら俺の名前を呼んでいる。なんとか立ちあがろうとするも、俺は意識を失ってしまった。


(あれ…なんだ、この感じ…)


気がつくと俺は妙な浮遊感と共に、真っ白な世界にいた。何も無い空間、しかしどこか懐かしさのようなものを感じる。


(…音?)


耳をすますと微かに音が聞こえる。規則的な電子音のような高い音。その方向に意識を向けるとそこにはベッドがあり、誰かがそこに眠っている。


(これは…)


今何が起こっているのか理解が追いつかず困惑していると、突然体に感じていた浮遊感がなくなり体がベッドに吸い寄せられていく。


「…さん!ヒロキさん!」


「…っ!?」


俺は名前を呼ばれて目を覚ました。まだ悪魔はその場から動いておらず、意識を失ってからそこまで時間は経っていないようだった。


「く…」


血は完全に止まってはいなかったが、エイラの魔法により立てる程度には回復していた。


「ダインは…」


ゆっくりと起き上がり、ダインがいた方を向く。そこにはしゃがみ込み、涙を流しているダインがいた。ルシアを守れず、周りに危害が加わったことでダインは精神にダメージを負ってしまったようだ。


「エイラ…ありがとう、ダインを頼む…!」


「で、でもまだ血が!」


「そうだぞ!」


「平気だ…!」


俺は悪魔に視線を向ける。そして意識を失っている間に感じた感覚を思い出した。


(『憑依』なら…ルシアさんを救えるかもしれない!)


「フフ、倒れてれば良かったのに。そんなに死にたいの?」


余裕の笑みを浮かべる悪魔に俺は歩み寄る。『憑依』が成功しルシアの心に干渉できれば、オーメンの力でルシアの心から悪魔を追い出す事ができるかもしれない。


「『憑依』!」


「なに…!」


悪魔に向かい『憑依』を発動する。悪魔に吸い込まれるような感覚を感じ、俺は成功したと思った。しかし途中で何かに阻まれ、俺は衝撃と共に尻餅をつく。


「うっ、ダメか…!」


「へぇ…こいつの中に干渉しようとしたのね。でも残念、こいつの体も意識も私の支配下よ」


『憑依』は悪魔の意思により阻まれたようだ。悪魔は今俺の『憑依』を警戒している。不意打ちが効かなかった今、『憑依』でルシアに干渉するのは不可能だろう。


「フフ、万策尽きたようね」


悪魔はそう言うと俺たちを無視してダインの方に向かった。そしてしゃがみ込むダインを見下すと、ゆっくりと棘を纏った十字架を振り上げる。


「くっ…!」


苦し紛れにダインは『威光』を発動する。それを見ると悪魔は笑みを浮かべた。


「フフ、殴れるの?」


「…!」


「まず1人」


十字架を振り下ろそうとした時、エイラは悪魔の前に飛び出すとダインを庇うように両腕を広げた。それを見て悪魔は振り下ろした十字架を止める。


「くっ…!」


「アンタは…こいつの友達ね?あぁ…みんなこの女を心配してるのね…。ますます妬ましい…」


「ルシア!…教会で私に話してくれた事は嘘だったんですか…!」


エイラは悪魔を無視しルシアに呼びかけた。しかしそれを見た悪魔は頭を抱えるようにため息をつく。


「…はあ。どいつもこいつも…無駄だって言ってるでしょ」


「あなたに聞いてません…!」


「…へぇ」


エイラの発言が気に障ったのか、悪魔は翼を操りエイラの体に棘を巻きつけた。棘が食い込み、腕や足から血が流れる。


「くぅ…!ルシア…!」


「そういえば…あんた、『異能』持ってないらしいじゃない。神様とやらから運命を与えられなかったんでしょ?」


巻きつけた棘は更に増え、腹部や胸部からも出血する。しかしエイラは苦痛を浮かべながらも、ルシアに呼びかけ続ける。


「じゃあ私が与えてあげる。…ここで死ぬ運命をね!」


「…ルシア!!」


悪魔が十字架を突き刺そうとした時、エイラの呼びかけに応えるように悪魔の腕が止まった。


「ルシア…!」


「う、うそ…!そんな…ありえない…!?なんで…!」


悪魔は完全に動揺している。俺はその一瞬の隙を逃すまいと立ち上がった。


「『憑依』…!」


「しまっ…」


体が吸い込まれ俺の体はその場から消えた。


「…これ」


「え…花冠?」


教会の椅子に座り、ダインはルシアと目を合わさずボアの花冠をルシアに渡した。これはルシアの記憶の一部のようだ。


「俺がなんとかしてみせる。なんとかなるはずだ、きっと」


「…フフ、ありがとう」


ルシアが微笑むと、様々な会話や生活が早送りのように流れる。そして大きな衝撃音から次の記憶が流れ始めた。


「う…ルシア…」


「ダイン…助け…て…」


ボロボロになった夜の教会に、棘の片翼を広げたルシアが立っている。崩れた教会の瓦礫に挟まれ、ダインは身動きが取れないようだ。よく見るとダインから少し離れた場所に同様の瓦礫があり、そこから血が流れ出ている。


「私…、私…!」


「落ち着け!ルシア!!」


再び記憶が流れ、ダインがルシアを抱きしめていた。涙を流すルシアの手にはナイフが握られていた。


「ダイン…、お願い…離してよ…」


「ダメだ…!絶対なんとかしてみせるから…!こんな事やめてくれ…!」


記憶はここで止まった。閉じていた目から涙が流れる。


「干渉は許しちゃったけど、ここは私のテリトリーよ?この場であんたを…


「ここは…お前が入っていいような場所じゃない…!」


俺はゆっくりと目を開き、オーメンの力を発動した。


「…ッ!?」


花の咲き乱れる丘の上、ルシアの体から角の生えた女型の悪魔が飛び出した。


「ハァ…!ハァ…、そ、その体は返すわ…!だから許して…!」


俺は『憑依』を解き、倒れそうになったルシアの体を支えた。息も絶え絶えに這いつくばり、逃げようとする悪魔の先にダインが立っている。


「…!お、お願い!命だけは…


悪魔の声には耳を貸さず、ダインは『威光』を纏った拳を振り下ろした。

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