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運命の転生者  作者: apple-pie
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見いだせぬ希望

「急がないと…!」


『警戒心』が感じ取っている悪意を頼りに、俺はただひたすらに走っていた。


(もし止められなかったら…ダインは…)


今度こそ『威光』でルシアごと祓ってしまうだろう、それだけは何としてでも避けなければならない。そう考えながら走っていた時、感じていた悪意が急接近してきている事に気づき、俺は足を止める。


「なんだ…!?」


その瞬間轟音とともに禍々しい何かが壁を貫き、そのまま外に飛び出していった。


「ルシアさんなのか…!?」


大きく開いた壁の穴から、それが飛び出した方向を確認していると、後ろからダイン、エイラ、レムが走り寄ってくる。


「ヒロキさん!」


「ルシアの中の悪魔が暴走してる!どっち行ったか分かるか!」


「あ、ああ!あっちだ!」


俺は悪意の感じる方へと指を刺し、ルシアの行った方角を示した。するとダインは不安や焦りに顔を歪ませながら、すぐに走り出した。


「俺たちも行くぞ!」


「はい…!」


エイラも涙を堪えながら走り出す。俺も後を追おうとレムの手を引いた。するとレムは不安そうな顔で俺を見つめる。


「戦うのか…?」


「…そうするしか…ない」


レムの問いに俺は足を止めた。ルシアのところへ行けば間違いなく戦闘になる。戦って勝ったとしてもルシアが無事な保証もない。


「…とにかく行こう」


レムは視線を落として頷くと剣に変身する。ルシアを救う方法はまだ思いついていない。そんな焦りをかき消すように、俺もただルシアの方へと走り出した。

暫く走り獣道を抜け、たどり着いた場所は綺麗な花が咲き乱れる丘だった。


「ルシア…!」


ダインは丘の頂点に佇む何かに声をかけた。しかし返答はなく、それはゆっくりと振り返ると邪悪な笑みを浮かべた。


「フフフ…残念だけどアンタの声はこいつには届かないわ」


纏われていた黒いモヤは花と棘を形造った。そしてその背中に翼を生やし、手には棘の巻きついた十字架の剣を齎す。


「もうこいつの体は私のものよ」


悪魔はそう言うとルシアの体を抱きしめるように腕を回し、嬉しそうに微笑む。


「羨ましいわ…、誰かに愛されて…自身も誰かを愛して…。ほんと、妬ましい…!」


「絶対祓ってやる…!」


「ダイン!」


ダインは怒りに身を任せるように悪魔に詰め寄った。そして拳を強く握りしめると『威光』を発動させる。


「ウアアァ!!」


「フフ」


力任せの攻撃は容易く避けられ、翼から伸びた棘がダインの拳を避けるように両腕に絡みつく。宙吊りになったダインは取り払おうと暴れるが、棘が食い込み出血してしまう。


「ぐぅ…!」


「まるで自分が正義かのような振る舞いね?本当は気づいてるくせに」


悪魔はそう言うと翼の棘を操り、ダインの顔を自分の目線まで引き上げる。


「私とアンタ達は似たもの通しだって」


「ち、違う…俺達は!」


「あの孤児院で償ってるつもり?」


悪魔の問いにダインは苦しそうな表情を浮かべ、答える事ができずにいる。その頬を悪魔は優しく撫でるように触れた。


「可哀想に…どんな気分?この顔に殺されるのは」


悪魔は十字架の剣をダインの胸に当てる。


「やめろ!」


俺は剣を悪魔に投げつけ、『憑依』を使って距離を詰めた。そしてオーメンの力を発動し、その黒い手で翼の棘を握って引きちぎった。


「…!この力…」


驚いている悪魔から距離をとり、俺はダインの様子を見る。その表情は依然怒りに染まっており、『威光』も解除していない。


「ダイン!落ち着け!」


「どいてくれっ!俺が…俺が祓うんだ!」


「落ち着いてください!ダインさん!」


駆け寄ってきたエイラもダインを止めに入る。こんな状態で戦っても、あの悪魔には勝てないだろう。


(どうしたら…!)


その時、『警戒心』が殺気を感じ取った。振り返ると悪魔が距離を詰め、剣を振り翳していた。


「くっ!」


俺も剣をぶつけて鍔迫り合いの形になる。必死に受け止める俺に反し、悪魔は余裕を浮かべて俺に話しかける。


「ねえ、なんでその拳で殴らないの?」


「そんなの…!」


悪魔に取り憑かれているがその体はルシアのものだ。悪魔を倒したとき、同時にルシアも無事では済まないとしても俺には傷つけることはできなかった。


「まだ助かる方法がある。…なんて希望を抱いてるの?」


「くっ…!?」


悪魔は徐々に剣に込める力を強めていく。踏ん張っていた足が地面を抉り、足元に咲いていた白い花弁の花をへし折った。


「教えてあげる。希望なんてね、信じれば信じるほど足枷にしかならないのよ」


悪魔は翼を広げて無数の棘を操ると、それを俺の体に突き刺した。鍔迫り合いに必死だった俺は避けることもできず、全身から血を流し地面に倒れる。


「ッ…!」


「ヒロキさん…!?」

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