ボアの花
俺とルシアが買い物に行っている間、エイラとレムは孤児院の子供達と遊んでいた。
「エイラおねーちゃん!レムちゃん!こっちこっち!」
「わっ!?引っ張らなくても行きますよ!」
「早く早く!」
「お、おい!置いてくなよ!」
女の子集団に手を引かれ、エイラとレムは教会への道から外れた獣道に連れられた。そして林を少し歩いて抜けたその先には、綺麗な花々が咲き誇る少し高い丘が広がっていた。
「どう?綺麗でしょ?」
「は、はい!こんなところがあったんですね…!」
「それでね!エイラおねーちゃん達に見てほしいものがあるんだ!」
女の子達はエイラ達一緒に丘の中央に進むと、近くの岩場から何かを取り出した。その手には丘に咲いている花を組み合わせた色鮮やかな花冠が握られていた。
「じゃーん!」
「わぁ…!作ったんですか?凄いですね!」
「凄いでしょ!ルシアおねーちゃんが教えてくれたんだ!」
「前はルシアおねーちゃんが作ってくれてたの!でもね…最近は作ってくれないんだ」
「病気になっちゃって上手く作れないんだって…」
それを聞き、エイラは少し悲しげに眉を下げた。病気というのは悪魔に取り憑かれたことだろう。エイラが女の子達を励まそうとしたとき、その子達の一人が目を輝かせた。
「そうだ!ボアの花でルシアおねーちゃんに花冠作ろうよ!」
「いいね!作ろ作ろ!」
「ボアの花?どんな花なんですか?」
「えっとね…これ!」
子供達は一本の花を摘んでエイラとレムに見せた。その花は複数の白い花弁が天に向かって弧を描き、綺麗な球体を形作っていた。
「へぇー、綺麗な花ですね!」
「ボアの花はね、『希望』って花言葉があるんだって!ダインおにーちゃんが言ってた!」
「エイラおねーちゃんとレムちゃんも一緒に作ろ!」
「もちろんです!レムちゃんもやりますよね!」
「お、おう…仕方ないな」
そしてエイラとレムは、子供達と一緒に花冠を作り始めた。レムは子供達とボアの花を摘み、エイラは花冠を教わりながら作り上げた。
「そしたらそこに通して…」
「で、できました!」
「完成!」
エイラは美しい円を描く花冠を掲げるように持ち上げた。子供達と遊びながら作っていたため、完成した頃には既に日が傾いており、白い花弁は淡く橙に染まっていた。
「じゃあ、その花冠はルシアおねーちゃんに渡してね!」
「お前らが渡さないのか?」
「渡したいけど…もう日が暮れちゃったし…。門限過ぎたら教会には入っちゃダメって言われてるんだもん…」
「そうなんですか…わかりました!私が必ず渡します!」
「うん!ありがとう!」
花冠を受け取ったエイラは子供達とレムを連れ、教会の方に戻った。そして教会前の広間に着くと、子供達は元気一杯に手を振って孤児院に入る。それを見送り、エイラはレムと一緒に教会に入った。少し薄暗い教会の中にはルシアが一人、大きな女神像の前で祈りを捧げていた。
「…ルシア」
「エイラ…戻ったのね。ヒロキさんなら今ダインと一緒に夕飯を…」
「今は…ルシアとお話がしたいんです。…少しでいいので話しませんか?」
「はぁ…、わかったわ。どうせ言っても聞かないんでしょ?」
ルシアが微笑みながらそう言うと、エイラは嬉しそうに頷いた。
「えっと…レムちゃんだったかな?悪いんだけど…二人で話させてもらってもいい?」
「え…」
「ダインとヒロキさんが向こうのキッチンにいるから…ね?」
その頃、ルシアとの買い物を終えた俺はダインに頼まれ、キッチンで夕飯を作っていた。そして暫く経ち、子供達分の夕飯が出来上がりに近づいた時、入り口から不機嫌そうな顔をしたレムが入ってきた。
「お、レムか。…ど、どうした?」
「なんか…今日振り回されてばっかな気がする」
「…剣の話か?」




