悪魔のいる協会
「す、凄いな…ん?」
アレンから贈られた大量の金貨に驚いていると、『警戒心』が奥の扉から悪意を感じ取った。その扉を見ると一人の女性が出てきて、こちらに寄ってきていた。その女性は俺のことを見ると、眉間にシワを寄せてダインの方を見る。
「ちょっとダイン!また無理矢理に連れてきたの!?」
「げ…、ルシア…」
「げ…じゃないでしょ!」
ルシアと呼ばれた女性はダインを叱ると、俺の方を向いて頭を下げた。
「本当にごめんなさい!私、ダインの幼馴染みのルシアです!急に殴られたでしょう?怪我はないですか?」
「あ、はい…なんとか…」
「あ、そうだ!今ちょうどご飯を作ってたんです!よろしければ一緒にどうですか?」
「お、おい…ルシア…」
「ダインは静かにしてて!」
不安な表情で遮ろうとしたダインの口を、ルシアは力強く押さえた。悪意を感じたこともあり少し嫌な予感がしたが、せっかくの誘いを断ることができず、俺はルシアとダイン、そして子供達と一緒に食卓を囲むことになった。
「いただきま~す!」
「いただきます…」
俺はさっきダインが引き止めていた料理に手を付けた。恐る恐るスープを口に運ぶと、その味はギルドのものと遜色ないもので、非常に美味しかった。
「お口に合いますか?」
「はい!すごく美味しいです!」
そう言って俺は次の一口を運んだ。そして咀嚼しようとしたとき、ガチンという音とともに俺は硬い何かを噛んだ。歯の痛みを感じ、ティッシュに硬いそれを吐き出すと、その正体はナットだった。
(な、ナット…?なんで?)
周りの子供達を見るが、皆楽しそうに食事をしている。俺のだけに入っていたのだろうか。
(嫌がらせ…?それとも、この世界流のおもてなし…なのか…?)
ナットが入っていた理由に見当も付かず、手を止めているとダインが俺と目を合わせた。そしてトイレの方に視線を送る。
「お、お手洗い行ってきます…」
ダインの意図を理解し、俺はトイレでダインと合流した。そして俺はダインにティッシュに包んだナットを見せる。
「な、なあ…これスープに入ってたんだけど…」
「あぁ、すまない…。…実は、ルシアは悪魔に憑かれててな…」
「えっ!?」
「そのせいで、たまに身体が言うことを聞かなくなるみたいなんだ…。だから子供達のご飯は俺が作ってるんだが…他のご飯にはたまにそういうのが入ってたりするんだ…」
どうやらルシアから感じていた悪意は、それによるものだったようだ。しかしダインは『威光』で悪魔を祓うことができるはずだ。俺は何故そうしないのか聞くことにした。
「『威光』で祓わないのか…?」
「祓えるならとっくにしてるさ…。でも、ルシアはもう長いこと悪魔に憑かれてて…悪魔が心の奥にまで侵食してる…。もし今祓えば…ルシアも…」
ダインはそう言って視線を落とした。そして再び俺の顔を見ると、少し歪な笑顔を見せた。
「…っと、暗くなっちまったな。ヒロキ、今日は色々迷惑かけてすまなかった。ルシアには俺から説明するから、もう帰っていいぞ」
「…わかった。じゃあまた明日来るよ」
「…は?な、なんでまた来るんだよ…?」
「協力させてほしいんだ。それ以外に理由はない」
俺がそう言うと、ダインはまた視線を落とした。
「…気持ちはありがたいが…これは俺がなんとかしないといけないことだ…」
「そんなこと知るか!」
「な…」
「目の前にいる人が死ぬかもしれないのに、見殺しにするなんて俺にはできない!とにかく、絶対に明日も来るからな!」
俺はそう言い残してトイレから立ち去った。取り残されたダインは笑みを浮かべながらため息をついた。
(アレンといい…ヒロキといい…、妙なやつばっかだな…)




