ヒロキvsヴァイク
エイラがバスタと戦っている中、俺は『エア遺跡』の前でヴァイクと鍔迫り合いをしていた。早く決着を着けて、エイラを探しに行こうと必死になっていた俺は、畳み掛けるように攻撃を繰り出す。
「ハァ!」
「ハハッ、必死だね。…『ルフト』」
ヴァイクは俺の縦斬りに向かって、恐れもせずに斬り掛かってきた。そして互いの剣が相手に触れる瞬間、俺の剣はあの見えない壁に阻まれた。
「残念」
「またこれか…!」
ヴァイクの見えない剣は俺の腹部を切り裂き、痛みとともに血が流れる。幸い深くはなく、俺は一度後ろに引き体制を立て直した。
(クソ…!あの壁が邪魔で攻撃が当たらない…!)
当たる直前に壁が出現し、俺の攻撃を防いでくる。あれをどうにかするには、より速い攻撃かフェイントで壁を交わす他ないだろう。
(アレンみたいに戦えれば…。でも…)
俺は特訓で見たアレンの剣捌きを思い出していた。しかし攻撃と見せかけてガードを崩したり、素早い連撃で翻弄したりと、少し剣を振りなれた程度の俺では到底真似のできない熟練の戦術だった。
(いや…やる前から諦めてどうする!)
俺は再びヴァイクのもとへ走り出し、振り下ろすように剣を振った。防げると分かっているのか、ヴァイクは余裕の笑みを浮かべている。そして俺の剣がヴァイクの体に当たるより前に、俺は剣を左に逸らし体を捻って回転させ攻撃を横向きに切り替えた。
「そんな遅いフェイントじゃ、当たらないよ」
(間に合わない…!)
縦に振る攻撃にかけた力を素早く横に切り替えるのは想像より難しく、俺は咄嗟に『憑依』を剣に使ってヴァイクの攻撃を躱した。そしてすぐに解除し剣を振って反撃をするが、またしてもあの壁に防がれてしまった。
(ダメだ…!こんなんじゃ当たらない…!)
「さて、次はこっちの番だ…!」
ヴァイクは見えない剣を地面に這わせながら距離を詰めてくる。『警戒心』で振り上げる攻撃が来ると分かった俺は、一度後ろに下がろうとステップをした。しかし俺の背後には既にあの壁があり、距離を取ることができなかった。
避けられないと感じた俺は剣をヴァイクの後方に向かって投げ、『憑依』で背後に回り攻撃を避ける。
「へー…いい反応だね」
(確かにまだなんとか反応して避けれてる…。でも、さっきから避けることしかできてない…!いや、待てよ…?)
俺はそのとき避けるために使った『憑依』を使えばフェイントや連撃も、可能なのではないかと思いついた。他に策もない俺は、剣を再び構えてヴァイクに走り寄った。
「何度やっても、変わらないよ…!」
(ここだ…!)
俺は右手に持った剣を右上から斜めに振り下ろし、ヴァイクに当たるより前に『憑依』を剣に使った。そしてすぐに『憑依』を解き、ヴァイクの横に立って左手で剣を掴む。
「なにっ!?」
「ハァッ!」
「そんなもん壁で防いで…
俺は体を回転させてヴァイクの背後に回り、その勢いのまま剣を振った。壁で防がれると直感した俺は剣がヴァイクの背に命中する直前で再び剣に『憑依』し、更にヴァイクの背をとりダメージを与えることに成功した。
「チッ…!」
「よし…これなら、いける…!」
俺は休む隙を与えないよう、再び剣を振った。するとヴァイクはさっきまでと違い、『ルフト』で防ぐことはせずにステップで避け始めた。
(なんだ…?なんで反撃しない…?)
ヴァイクは当たる攻撃だけに『ルフト』を使い、攻撃を防ぎながら後ろに下がっていく。そして俺は攻撃を繰り返し、遺跡の壁にヴァイクを追い詰めた。ここまでくれば、もはやフェイントも必要ないだろう。
(勝てる…!)
「…『ルフト』」
ヴァイクは俺の攻撃を防ぐと、素早い動きで俺の背後に回った。そして俺に小さな石を投げつけ、『ルフト』で俺を遺跡の壁に押し付けた。その見えない壁の中には、さっき投げられた小さな石が入っている。
「ヒヒ…、その石な…火に触れると爆発するんだぜ…!」
そう言うとヴァイクは、俺に向けて開いていた手をグッと握った。すると俺を押さえつけていた『ルフト』は小さくなり、中に入っていた石が大きな爆発を引き起こした。
「うぐッ…!?」
空気は急激に圧縮されると内部温度が上昇する。その温度が着火材となった、あの石の発火する温度まで上昇し爆発を起こしたのだろう。爆発に巻き込まれ吹き飛ばされた俺は、血を流して地面に倒れ伏せた。それを見たレムは俺に近付くと体を揺する。
「お、おい!ヒロキ!しっかりしろ!」
「まだ生きてんのか?じゃあ…トドメ指してやるよ!」
そう言ったヴァイクの手には、あの石が握られていた。




