エイラvsバスタ
俺がヴァイクと戦闘しているとき、エイラは『エア遺跡』から少し離れた場所で戦闘していた。
「『フレイム』!」
エイラがそう唱え、杖から放たれた5つの炎の球はバスタへと向かった。バスタは余裕そうな顔をすると、まるで火の粉を払うかのように片手でいなした。
「き、効いてない…?」
「ヘッ、そんなチンケな魔法は俺には効かねえよ。なんたって、これがあるからな」
バスタはそう言うと首からかけていたネックレスのようなものを見せつけた。そのネックレスには黒い宝石が付いており、光に反射しキラキラと輝いていた。
「これは魔法耐性を上げる代物でよ、結構便利なんだぜ」
「そんな…。で、でも…耐性を上げるだけなら、より強い魔法を打てば…!」
確かに耐性を上げるというだけで、無効にしているわけではない。つまり耐性を上回ればダメージを与えられるとういことだ。
「『サンダー』!」
紫の魔法陣がバスタを囲んだが、バスタは避けようともせず雷に貫かれた。しかし効果はほとんどなく、余裕な表情を崩さなかった。
「少し痛む程度だな。で、この程度で限界か?…じゃ、こっちから行くぜ!」
バスタは距離を詰めると、大きく左の拳を振るった。かろうじてエイラは避けることができたが、バスタは続けて攻撃を繰り出し、エイラの腹部を殴りつけた。
「うぐっ…!?」
「ハッ、異能を使うまでもねえな」
腹をおさえてエイラは膝を付いた。そこに追い打ちをかけるようにバスタは蹴りを入れる。エイラは苦痛に耐えられず地面に倒れ、それを見てゆっくりとバスタが歩み寄った。
「ハァ…ハァ…『サン…ダー』…」
息も絶え絶えに放った『サンダー』は、バスタを数秒留まらせる程度に終わり、有効打となることはなかった。
「ヘッ、ゲームオーバーだな」
バスタはゆっくり右足を上げると、エイラ目掛けて叩きつけた。頭部に当たる寸前、エイラは体を回転させて攻撃を避けた。
「へぇ、まだ動くのか」
「…私は…、私は、ヒロキさんの役に立ちたいんです…!」
「はぁ?」
エイラは立ち上がると、手に持っていた杖を反対に持ち、まるで剣を持っているように構えを取り、バスタを睨みつけた。
「だから…退いてください…!」
それはエイラがヒムロと特訓していたときの事だった。エイラが魔法を唱えている隣で、ヒムロは刀の素振りをしていた。
「あの、ヒムロさん。質問してもいいですか?」
「はい…!平気…ですよ?」
ヒムロは素振りを続けながらエイラの質問を聞いた。
「もし戦いの中で接近戦になったら…どうしたらいいんですか?」
「…!」
ヒムロはその質問を聞くと素振りを止め、エイラの前に歩み寄った。
「その場合、近接攻撃のできる魔法を使うか、剣術や体術で対処するのが一般的です」
「やっぱりそうですよね…」
エイラは視線を落とした。元からそういった戦闘が苦手であったためだろう。しかし覚悟を決めたように頷くと、エイラはヒムロに頭を下げた。
「ヒムロさん、お願いします!私にも剣術を教えて下さい!」
エイラは痛みに耐えながらも、バスタに向かって走り寄った。
(…まだ未完成もいいところだけど…やるしかない!)
力任せに振られた杖は、バスタに当たることはなく空を斬った。まるで子供とのチャンバラのように、バスタは軽々と避ける。
(当たらない…!)
「ハハッ!なんだそりゃ、遊んでんじゃねーぞ!」
エイラの杖を避けると、バスタはがら空きになった腹部を再び殴り付けた。その衝撃にエイラは宙に浮き、倒れ込んだ。
「ぐぅ…!『フレイム』…!」
負けじとエイラはゆっくりと起き上がりながらも、『フレイム』を放ち牽制を飛ばした。しかしバスタは片手で防ぎ、容易く歩みを進める。
「お前、あの男のために頑張ってんのか?ハッ、そりゃまた無駄な努力してんな。どうせ今頃、アイツもヴァイクにボコられてるさ」
「…そんなこと、ありません…!ヒロキさんは、今まで何度も私を助けてくれました…!それに…もし仮にそうなっていたとしても…関係ありません!」
エイラは再び杖を剣のように構え、バスタに走り寄った。
「ヘッ、何したって変わりゃしねえよ!」
「『サンダー』!」
バスタの足元に紫色の魔法陣が描かれた。しかし、『サンダー』が大したダメージにならないことを知っていたバスタは勝ちを確信したように笑い、その場を動かなかった。
雷がバスタを貫き、バスタの動きが鈍る。その間にエイラは杖の届く範囲まで間合いを詰めた。
(フンッ。こんなガキの攻撃、喰らっても問題はない。次で終わりにしてやるぜ…!)
バスタは余裕を崩さず、その場を動かなかった。仮に杖が当たったとしても、そこから反撃など容易いからだ。
(…ん?これは…!?)
よく見ると放たれたはずの『サンダー』の魔法陣は、未だにバスタの足元に描かれていた。
「あなたを倒して…今度は私がヒロキさんを救ってみせます!」
動けないバスタの胸元に、エイラの杖が当たった。ダメージにはなっていなかったが、その杖の先はネックレスにぶつかり、黒い宝石を粉々に砕いた。
(二重詠唱!?『サンダー』を二重に!?まずい…!耐性がないまま食らっちまったら…!)
魔法に耐性のないバスタに『サンダー』が直撃した。これにはバスタも耐えきれず、膝を付いて倒れると気を失った。




