久々の食事
自分の魔力の量に落胆したあと、俺達はギルドに夕食を食べに来ていた。しかしこの3日間ずっと寝てしまっていた俺は、今日の食事になんとなく申し訳無さを感じていた。エイラはそれに気づいたらしく、俺に声をかけた。
「ヒロキさん、食べないんですか?」
「…いや、なんか3日も寝てたのに申し訳ないな…と」
それを聞くとエイラは頼んだ料理をフォークで刺すと、それを俺の口に無理矢理運んだ。突然の間接キスに驚愕しつつも、俺は運ばれた料理を食べる。
「美味しいですか?」
「お、美味しいです…」
「前も言いましたが…パーティなんですから助け合うのは当然です!それに…」
エイラはそれまで笑顔だったが、不意に言い淀んで少し視線を落とした。
「あの時の戦いで感じたんです…。私いつも逃げてばかりで…ヒロキさんに助けられてばかりだな…って。でも!もう今までの私とは違いますよ!」
そう言うとエイラは腰に手を当てて、何やら自慢気に胸を張った。
「今、ヒムロさんに魔法の特訓をしてもらってるんです!」
「そ、そうなのか?」
ヒムロとはそこまで深く関わった訳ではないが、彼女の第一印象は一匹狼のような人だった。それ故に弟子を取るような事はしないと思っており、俺は確認するようにレムに聞く。
「ん?そうだぞ、お前のために頑張るんだって言ってたな」
「ちょ、ちょっと!?どうしてそれを言っちゃうんですか!?」
エイラは頬を赤らめて恥ずかしそうにすると、レムの口を塞ごうとした。その様子を見て、俺のためにエイラが頑張ってくれている事を知り、俺はただただ喜びを感じていた。
「…エイラ、ありがとな。俺も負けないように頑張るよ」
「…!」
エイラはより一層顔を赤くすると、恥ずかしがるように俯き、凄い勢いで食事を完食した。そして手を合わせてごちそうさまを言うと、食事分の銅貨を机に置いた。
「さ、先に宿屋に戻ってます!」
「お、おう」
俺もエイラの後を追うべく、なるべく急いで食事を済ませた。その時レムが何も食べていない事に気づき、俺は何か食べたのか聞くことにした。
「レムは何も食ってないけど、来る前に何か食ったのか?」
「いや、私は魔剣だからな。人のご飯は食べないぞ」
「へー、やっぱり魔力を食ったりするのか?」
「ああ、今はエイラの魔力を貰ってるぞ。あいつの魔力は結構美味しいし、なにより…お前から貰ったら間違いなく足りないしな」
「そうですかい…」
レムの余計な一言には傷付いたが、俺は笑顔を崩さず会話を続けた。
「魔力って味があるのか?」
「人によってかなり違うぞ、例えば…
魔力について話をしていると、レムのお腹が大きな音で鳴った。そして若干不機嫌そうな表情でお腹を擦り、俺の顔を見つめる。
「ご飯の話してたらお腹すいちゃった…」
「ハハ…じゃあ宿屋に戻るか」
マイペースで可愛らしいなと感じながら、俺はギルドのカウンターに向かい支払いを済ませた。そしてギルドから出ようとしたとき、丁度ヒムロとすれ違った。
「こんばんは、ヒロキさん。具合はどうですか?」
「ヒムロさん、体はもうこの通り何ともないですよ」
俺は元気であることを伝えるために、大袈裟に体を動かしながら答えた。
「フフ、それは良かったです。…ところで、エイラさんは一緒ではないんですね。特訓の事で話があったのですが…」
「あ…ちょっと先に帰っちゃってて…。伝えときましょうか?」
「いえ、急な用では無いので明日伝えることにします。…では、失礼しますね」
ヒムロはそう言ってその場を去ろうとした。その時、俺も特訓に混ぜてもらえれば強くなれるのではと思い、呼び止めて聞いてみることにした。
「あ、あの!ヒムロさん、俺もその特訓に参加したいんですけど…」
「ヒロキさんも?…兄さんに相談してから決めてもいいですか?」
「…?なんで…アレンに?」
「エイラさんの特訓は兄さんが勧めたものなので、確認してみないと…」
話を聞き、やはりヒムロが主体的に行っているのではないのだなと思っていると、突然誰かに服の袖を引っ張られた。そこを見ると俺の顔を見上げるレムがいた。
「なあ、ヒロキ…まだ帰らないのか?」
「あ、悪い…」
「では、今日のうちに兄さんに確認しておきますね。明日の朝、ここでまた話しましょう」
そう言うとヒムロはギルドの中央へと歩いて行った。それを見送りレムの方を見ると、相当腹を空かせているのか眉を下げて困ったような顔をしていた。
「…お腹すいた、動けない…」
レムはそう言うと、困った顔のまま俺の顔を見つめる。
「ちょっとでいいから、お前の魔力ほしい…」
遅れたのは俺のせいでもあるし、何より服の袖を引っ張りながら頼むレムに断れず俺はその場で屈んでレムに視線を合わせる。
「わかった…それで、どうすればいいんだ?」
俺が聞くとレムは黙って俺の右手を持ち、人差し指だけ立てるように握った。そして突然俺の人差し指を口に咥えた。
(…っ!?)
ギルドの入口前の開けた空間で、指を加えられ俺は恥ずかしさのあまり周りを見回してしまった。誰も見ていないことを確認し、もう一度レムの顔を見るとレムは目を輝かせて俺を見ていた。
「美味ひい…!!」
「お、おう…良かったな。と、とりあえず…その、帰ってからにしないか…?」
「…?わかった…」
レムは少し残念そうに俺の指から口を離し、早く帰ろうと俺の腕を引いてギルドの出口へ向かった。




