転生
「…じゃ、『異能』も決まったことだし…そろそろ転生を始めるわね」
女の子がそう言うと地面に魔方陣が浮かび上がり、俺は青い光に包まれた。いよいよ始まる新しい人生に俺は胸を踊らせる。
「向こうについたらまず腰についたポーチの中を見なさい。色々役に立つものを入れとくから」
転生が始まり辺りは強い光に包まれた。俺は眩しい光に目を閉じ、光が弱くなった後でゆっくりと目を開ける。するとそこはもうさっきまでの真っ暗な空間ではなく、大きな噴水の周りに商店のような建物が立ち並ぶ光景が広がっていた。
「転生…できたみたいだな…!」
突然変わった目の前の景色に、転生が成功したことを確信する。しかし変わっていたのは目の前の景色だけではない、俺の服装も異世界ものっぽくガラッと変わっていたのだ。
マフラー、パーカー、貼るカイロという完全装備は外され、黄土色の上着とズボン、金属でできた胸当てとなっていた。
「…ま、初期装備って感じだな…」
お世辞にも強そうとはいえない装備を眺めていると、腰に金属でできた剣と布地のポーチがあることに気づいた。
このポーチは女の子が言っていた、役に立つものが入ってるとかいうやつだろう。ポーチを開き中を確認すると、そこにはメモ書きと蒼い綺麗な石が入っていた。石の方は何に使うものかよくわからなかったので、ひとまずメモ書きの方から確認することにする。
「えー…なになに…?」
そのメモにはポーチに入っていた蒼い石の説明と、俺が手に入れた『憑依』と『警戒心』の2つの『異能』の説明が書かれていた。
説明によると、この蒼い石は女の子のいたあの空間に行くための道具らしい。
『異能』については基本的に『異能』の名称を念じたり唱えたりすることで発動するらしい。そして肝心なのは俺の『異能』の能力、『憑依』は物に乗り移ることができる能力で、『警戒心』は常に発動しており、生物の悪意や殺意への反応が強くなる能力のようだ。
「書かれただけじゃよくわからないな…。まあ、習うより慣れろだな…。ひとまず使ってみるか…『憑依』!」
辺りを見渡し、俺はひとまず噴水の近くにあったベンチに『憑依』を使うことにした。発動すると俺の体はその場から消え、視界は広い青空に変わっていた。
(おー…!本当にベンチに乗り移ったみたいだ!…でも動いたりとかはできないのか)
『憑依』の確認も終わり、そろそろ元に戻ろうとした時、右側から冒険者と思われる短いスカートを履いた女の子が駆け寄ってくる。かなり全力で走ったのか、ベンチの前で立ち止まると前屈みになり息を切らしていた。
「ハァ…ハァ…ち、ちょっと休憩…!」
(…!おいおいおいおい…!)
短いスカートの中から覗く純白の布が、小振りで柔らかい肉と共に目の前に迫ってくる。そして顔面に重く暖かい圧がのし掛かる。
(す、すごい…!すごいけど…ちょっと重いし苦しい…!)
全身にかかる重さと息苦しさに体の限界がきてしまい、俺は仕方なく『憑依』を解いてベンチから抜けることにした。
『憑依』を解いたときは乗り移っていたものの近くに体が現れるらしく、俺の体はベンチの側に突如として姿を見せた。
「うわっ!?誰!?どこから出てきたんですか!?」
(なるほど…『憑依』してるときも感覚は共通で…抜けるときは『憑依』したものの側に出るのか…にしても良い柔らかさだったな…)
「あの…?」
ベンチから出た俺は今の体験をまとめ、自分の『異能』と尻について軽く解析した。そして颯爽と来て『憑依』と尻のなんたるかを理解させてくれた女の子に、俺は感謝を送るため後ろを振り向く。
「ありがと!えーっと…白パンツの君!あっ…」
「…え?何で私のパンツ…!?」
失言した、そう思った瞬間に女の子からただならぬ気配を感じ取った。どうやらもう1つの『異能』である『警戒心』が発動したようだ。
女の子は弁明する俺を無視して敵意むき出しで近付いてくる。そして女の子が俺の目の前に立ったとき『警戒心』がより強まり、殺意が俺の右頬に近付いてくるのがわかった。
(ビ、ビンタ…!)
自分の今の状況に気付きガードしようとしたが遅く、俺は甲高い音と共に地面に倒れ伏せた。そんな俺を置き去りにして、女の子は怒った顔のまま何処かへ行ってしまう。
「ぐ、ぐふ…」




