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運命の転生者  作者: apple-pie
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最初の転生者

十数年前。最初の転生者コウタは二人の仲間とともに、長き戦いを経て魔王を打ち倒した。しかし魔王はすでに『創造』を使い不老不死の肉体を持っていたため、『異能』を奪い縄で縛って城に連れ戻すことになったのだった。


「…あのー、歩きにくいからこの縄解いてほしいんですけどー…」


「解くわけ無いだろ、お前自分がどれだけ悪い事したか分かってんのか?そのままずっと歩いてろ」


エルダは魔王エリーを睨みながらそう言った。確かに『異能』が無いからといって、縄を解いたら何をされるか分からない。それにもうしばらく歩けば馬車が停まる場所があるはずだ。


「もう少し先に行けば馬車がありますから、そこまで我慢してください」


「ふーん…?流石は転生者様だねー。このヘンテコと違って優しいなー?」


「はぁ!?誰がヘンテコだって!?」


とても最終決戦の後とは思えない会話をしながら歩を進めていると、アイナが話を遮って前方を指差した。


「もう、言い合いはそこまでにしましょう?ほら、馬車が見えましたよ」


アイナの指の先には確かに馬車が見えた。2頭の白馬が純白の馬車を軽やかに引いている。


「ずいぶん豪華な馬車だな?来る時あんなだったか?」


(いや…あれは確か王家専用の馬車…?なんでこんなところに…?)


コウタが不思議に思っていると、馬車はゆっくりと目の前に停まる。すると扉が開き中から護衛の兵士3人、そしてその兵士に迎えられるように国王が現れた。


「ふむ…」


国王は捕らえられた魔王を見るとニヤリと笑い、拍手をしながら皆を称賛した。


「おお、勇敢なる勇者達よ。よくぞ魔王を捕らえてくれた。歩いて戻るのは辛いだろう?さあ、馬車に乗るといい」


国王がそう言うと、兵士達が皆を囲み半ば強引に馬車へと乗せる。馬車は国王、兵士達3人を合わせて丁度8席用意されており、魔王もその柔らかい席を堪能していた。


「丁度8席なんて気が利いてるねー、兵士さん?」


「ち、近寄るな」


魔王はそう言いながら、隣りに座っていた兵士に体を擦り付ける。兵士は少し戸惑いながらも魔王を押し返し、ゴホンと咳払いをした。


(なんだ、この感じ…)


拭いきれない違和感を感じながらも、しばらく馬車に揺られていると、国王が兵士と目を合わせ黙って首を縦に振る。すると突然、馬車の中に謎のガスが放たれた。


「なっ!?」


「なんだ!?ガス!?」


ガスに驚いている間に、国王と兵士はガスマスクを顔につけていた。しかし1人の兵士はガスマスクをつけておらず、代わりに隣りにいた魔王がつけている。体を擦り付けたときにガスマスクを奪ったのだろう。更に驚くことに、縛られていた手の縄が解けて地面に落ちている。


「魔王…一体どうやって…!?」


「フフ…ヘンテコの縛った縄なんて簡単に解けるよ。じゃあ、おやすみー」


逃げていく魔王を見つめる視界が薄れ、段々と意識が遠のいていく。兵士が1人魔王を追いかけていくのを最後に、コウタは意識を手放した。


「…うっ…」


激しい頭痛とともに目を覚ます。霞む視界で見回すと、周りは塀で覆われ兵士達が取り囲むように佇んでいた。何故こんな事をしたのか、兵士達を問いただそうとした時、


「…!?」


コウタは自身の四肢を動かす事ができないことに気づいた。体に目を向けると装備は取り上げられ、乱雑に組まれた角材と、縄で磔にされている事に気づく。


「な、なんだこれ…!?」


現状に困惑しながら再度辺りを見回すと、コウタの左右にエルダとアイナが、同様に磔にされて意識を失っている。


「エ、エルダ、アイナ!起きて!」


「…!」


大声で二人に呼びかけると二人は目を覚まし、辺りを見回す。そして困惑しながら必死に体を捩り、拘束を解こうとする。


「ようやく起きたかね」


「この声…!」


塀の奥から気怠そうな声が聞こえた。すると兵士が道を開け、国王が間を割ってのそのそと現れる。


「これはどういう…


「早速で悪いが…君達には死んでもらう」


「…は、はぁ!?なんでだよ!?魔王を倒したんだぞ!?」


「君達のような他所者にそんな功績は与えられんのだよ。だから…始末して我が息子が倒したことにしようと思ってね。まあなんだ…」


国王は3人の顔を見ると、醜い笑みを浮かべた。


「ご苦労だったな…くくく」


国王は背を向けて何処かへ行ってしまった。そしてそれを合図にするかのように、兵士達が各々武器を手に近づいて来る。


(く、くそ…!)


「ぐあっ!?」


「……!」


エイダから痛みに苦しむ声が上がる。アイナも声にならない悲鳴を上げている。それに気を取る間も無く、兵士の向けた刃がコウタの腹部を貫く。


「グッ…!?」


次々と迫る攻撃と激痛に、頭が回らなくなっていく。三人磔にされ周りは塀と兵士に囲まれ、全員傷を負い脱出は絶望的。そんな中、コウタは馬車に乗った時の事を思い返していた。


(あの時…あの違和感に気づいていたら…)


「フレイム…!」


そんな後悔をかき消すかのように、アイナの振り絞るような魔法が俺の拘束を焼き払うと同時に辺りの兵士を怯ませる。


「ア…アイナ…」


「チッ。拘束が解けたとこで、なんも変わんねえよ!」


兵士達は再び武器を手に集まって来る。兵士達の言う通りだ。この傷で、この窮地を抜け出す方法なんて無い。一人の兵士が振り下ろした剣が、コウタの体を貫き鮮血を纏う。赤く染まる視界に、エイダとアイナの苦痛に歪む顔が映る。


(…そうだ。無いなら…創ればいいんだ…)


コウタは右手で兵士の胸に触れる。すると突然兵士は口から血を吹き出して倒れ、触れていたコウタの手には綺麗な実をつけた薬草が握られていた。


「『創造』」


体を貫いた剣を引き抜き、薬草を貪ると傷口は瞬く間に塞がった。兵士達はその様子に恐怖しながらも、円滑に連携し、エルダやアイナを攻撃していた兵士達もコウタを取り囲む。


「…時間が無いんだ」


「ひっ…!?」


兵士に近づくとコウタは再び兵士に触れ、その命を代償に一振りの刀を生み出す。そしてその刀を軽く振るうと目の前の兵士、後方の塀もろとも一刀両断した。


「テメェ…!」


一人の兵士が背後から近づき、背部を斬りつける。しかしコウタは怯む事なく振り返ると、その手で兵士に触れてその命を薬草へと変換する。返り血を浴びながら薬草を貪り、兵士を殺していくその様はまさに悪魔のようだった。


「……」


圧倒的な力を手に、兵士達を片付けるには数分と経たなかった。惨たらしい死体の山と、磔にされたまま虫の息となったエルダとアイナを前に、コウタは呆然と立っている。


「エルダ…アイナ…」


『創造』を使えば二人を生き返らせることは可能だろう。しかしこの傷を治すには薬草では補いきれないし、二人は食べられる状況ではない。


「ごめん…」


コウタは2人を救うため、二人の『異能』と自らの寿命を代償に『創造』を使い何かを生み出した。その途端体に痛みが走り、頭の中に誰かの声が聞こえる。


『その身を預けるといい、この者どもを救ってやろう』


(だ、誰…だ…?ぐっ…体が痛い…)


『我は、悪魔オーメン』


悪魔なんていう非科学的なものは信じてこなかったが、もう二人を救えるのならば何でも良かった。ゆっくりと首を縦に振ると、黒い雫が二人の胸元にゆっくりと零れ落ちる。


「ぐっ…!?」


「…!」


雫が二人に沁み込むと、二人は目を覚ました。それを見てコウタは、安心したように微笑むと二人の拘束を解く。


「コウタ…なのか?」


「その姿は…一体…」


アイナとエイダが悪魔に身を捧げた姿に心配していたが、今は何も聞こえなかった。ただただ力が溢れてくると同時に、体の痛みが強くなっていく。


「くっ…」


『人間は脆いな、この程度で限界か』


もう体が痛みに耐えられるだけの時間がない。直感でそう感じ取り、コウタは塀を突き破りながら国王を探した。二人が死んでいない事を知れば、国王が二人に何をするかわからない。


(どこだ…まだ遠くには行ってないはず…!)


数秒程進むと呑気に歩いている国王を見つけた。コウタは即座に詰め寄ると背後から黒い剣を突き立て、壁に追いやる。


「な、なんだ!?貴様は…転生者なのか…!?」


(オーメン…!コイツにあの二人が関わったら…死ぬ呪いをかけてほしい…!)


『フン。構わないが、呪いの力は強力だ。今度こそ力を制御できなくなるかもしれんぞ』


(そんなの…どうでもいい…!!)


体の痛みが限界に近くなった。どうやら呪いがかけられたようだ。


「死にたくなかったら…これ以上二人に関わるな!」


「わ、わかった!だから…命だけは…」


国王に二人に関わらないよう伝えると、来た道からアイナとエルダが走ってくるのが見えた。


(ダメだ…こっちに来たら…)


このままでは力を制御しきれなくなり、二人を襲ってしまうかもしれない。コウタは精神を擦り減らしながら二人から逃げるように飛び去り、城から遥か遠くに向かう。


(もう限界だ…。オーメンは…この後どうするんだ…?)


『ふむ…そうだな…。手始めにこの世界を我ら悪魔の物にするとしよう。ククク…』


(そう…か…)


限界まで力を使い二人を助けた、もうできることはないだろう。そして、二人の安全を願いながらゆっくりと目を閉じる。

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