世界の話
「エリーが『異能』を持ってないのはこの世界の話と関係してるんだ、だから俺が説明するよ」
困惑している俺の肩を叩くと、アレンはニコッと笑った。説明を聞くために、俺はアレンの方へと向き直る。
「さっき女神様が『異能』をくれたことは説明したよね?」
俺はその質問に対して頷き、返事をする。
「良かれと思って送ったものが悪用されるっていう失敗を、女神様はなんとかしないとって考えたんだろう。十数年前、悪用を止めるためにあるものを使っ たんだ」
「あるもの…?」
「強い『異能』を持った転生者さ。彼が持っていたのは触れた人の『異能』を奪い取る『強奪』」
そこまでの説明だけで大まかな話は分かった。転生者はその『異能』を使ってエリーから『異能』を奪い取り、見事に世界を救ったということだろう。
「…あれ?じゃあ、なんで俺はこの世界に…?」
「おっ、鋭いね?」
アレンは少し嬉しそうな顔で俺を見た。そして俺の疑問にエリーが答える。
「今度はその転生者が『異能』を悪用しちゃったんだよ、私と同じようにね」
「じゃあ…俺はその転生者を倒すために?」
「そう…俺もできる限り協力する。やってくれるかい?」
アレンは微笑みながらそう言った。俺は断るつもりなんて全く無かった。俺は元々世界を救うように言われて来た転生者だ、そんな大きな目標を前に尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない。
「もちろん!」
「…ありがとう」
俺の返事にアレンは感謝を告げる。いよいよ本格的になってきた、転生して世界を救うというイベントに興奮していると、下から俺を呼ぶ声が響いた。ベランダから下を覗くとそこにはエイラがいて、大きく手を振っていた。
「エイラ?どうしたんだ?」
「早く寝ないと明日に響くと思って、迎えに来ました!」
相変わらず元気なエイラに手を振り返しながら、俺はすぐに下に降りることを伝えた。そしてアレンとエリーにひと声かけたあと、外で待つエイラと合流した。
「よくギルドにいるってわかったな」
「色んな人に聞いて回りましたからね!ふふん、さあ!早く宿屋に戻りましょう!」
「あっ、おい!」
エイラは俺の手を引くと宿屋に向かって走り出した。急に引っ張られ、バランスを崩しながら俺も一緒に走る。
そんな俺とエイラをギルドの2階で、アレンとエリーが眺めていた。
「いやー、若いねー」
「…そうだな」
「とても世界を救うなんて年じゃないねー」
「…お前はいつも俺の気に障るようなことを言うな…」
アレンがそう言うと、エリーはニヤニヤしながらアレンの表情を伺う。少しの時間二人の間に沈黙が流れた。先に口を開いたのはエリーだった。
「そういえばヒロキ君に全部話してなかったね?」
「何度言ったら分かるんだ。これは俺の問題だ、彼に頼るわけにはいかない」
アレンは左側の一部白くなった髪を触りながらそう言った。
「とか言って、最後は頼っちゃうくせに?」
エリーがそう言うと、アレンは眉間にシワを寄せてエリーを睨み付けた。その表情と殺気にエリーはすくみ上がり、両手を上げて引きつった笑顔を見せる。
「じょ、冗談!冗談だから!…怒んないで?」
「…まあいい、俺もそろそろ帰らないと」
エリーに背を向けて、アレンはギルドの階段を降りていく。その背中を見届けたエリーはホッと胸を撫で下ろした。




