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運命の転生者  作者: apple-pie
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決着

痛む左腕を押さえながら、俺はさっき起こった現象を思い返していた。次あれをまともに喰らえば、確実に死ぬだろう。


(アイツが『ショック』を使ったとき、俺の体と剣だけが引き寄せられてた…)


推測だが実際に引き寄せられたのは俺の体ではなく、俺の付けている胸当ての方だろう。恐らくハンスは『ショック』を使って螺旋状に電流を流し、自分の前に強力な電磁石を作って俺を引き寄せたのだ。


(もし俺の考えが合ってるなら…)


俺は背中に手を回し、胸当ての留め具を外した。手前の地面に落ちた胸当てを拾い上げ、引き寄せられないように遥か後方に投げる。危険ではあるが体の自由が利かないよりはマシだろう。剣を構え、大きく深呼吸をする。


「…やってやる!」


「意外と冷静なんだな?でも…気付いたって無駄だ、『ショック』!」


考えていた通り俺の体は引き寄せられない、がしかし構えた剣がハンスの手に引き寄せられていく。その強い引力に剣を持っていられなくなった俺は、これを利用しようとあえて手を離した。


(『憑依』!)


引き寄せられた剣は勢いよくハンスに向かい、広げられた手の平の前でピタリと止まった。その瞬間に『憑依』を解き、空中に静止した剣を足場にしてハンスの顔に蹴りかかる。


「くっ…!?」


ハンスは『憑依』に合わせて剣を振ろうとしていたが、俺の蹴りの方が速いと判断したのか『ショック』を止めて後方にステップして蹴りを避ける。


(…!今なら…やれる…!)


確実に当たると想定していた攻撃を中断して無理に避けたハンスは、今バランスを崩している。すぐに『ショック』は使えないだろう。俺は地面に落ちた剣をすぐに拾い、畳み掛けるようにハンスに向かって投げる。


「『憑依』!」


『異能』の使い方、確かにハンスの言う通りだ。物に乗り移る力を持ったやつが剣を投げる、そうすれば剣を注意するのが普通だ。


「ヘッ…バカが…!それは喰らわねぇよ!」


(…それを利用する…!)


ハンスは咄嗟にしゃがんで剣を避けると、しゃがんだまま後ろを向いて剣を振ろうとした。それを見て俺は『憑依』を解く。


「これで俺の勝ちだ…!」


ハンスは勝利を確信し、大きく剣を振った。


「何っ!?」


ハンスの振った剣は音をたてて空を切り裂いた。その状況に戸惑っているハンスに、俺は背後から渾身の殴りを顔面にお見舞いする。


「ぐあっ!?な…なんで後ろに…!?」


不意の顔面パンチがかなり効いたのか、ハンスはその場にフラフラと倒れこむ。そして俺は『憑依』していた、足元に転がるエイラのペンダントの欠片を拾い上げた。


「今のは俺の分だ…!そんで…」


剣を杖がわりに立ち上がろうとしているハンスに近づき、俺は拳を強く握りしめる。ペンダントの欠片が手の平を切り、拳の隙間から血が滲んでいく。


「これが…エイラの分だ!!」


もう一発、ハンスの顔面にパンチをお見舞いする。そしてハンスは口と鼻から血を出しながら、息を荒げて地面に横たわる。


「くっ…そ…」


「よし…エイラのとこにいこう…!」


ハンスが立ち上がれそうにないのを確認し、俺はエイラのところに向かった。

木にもたれ掛かるエイラの体を抱えると、エイラは目を開けて俺を見つめる。


「ヒロキさん…?う、腕から血が…出て…」


「俺は大丈夫だ!それより、すぐにここを離れよう…!」


かなり時間が経ってしまい、もう辺りは暗くなってしまった。木々に囲まれているせいで視界も悪い。二人とも疲弊しているこのタイミングで襲われれば、いくらゴブリンでも苦戦する可能性はある。


「俺が抱えるから!早く行こう!」


「は、はい…」


エイラを抱えあげようとしたとき、『警戒心』が殺意を感じ取った。もうゴブリンが来てしまったのかと思い、戦闘体勢をとって殺意の方を向く。


「…!」


「ま、待ちやがれ…!」


そこにはフラフラになりながら剣を構えるハンスが立っていた。その顔は血と土で汚れ、狂気に満ちている。


「それは俺のオモチャだ…!お前…なんかにぃ…!!」


殺意がどんどん強くなると同時に、黄金色の何かがハンスに集まっていく。そしてその何かを感じなくなったかと思うと、ハンスの剣は大きな炎を纏い始めた。


(魔法か…!?)


「燃えろ…!『フレイムエッジ』!!」


ハンスが剣を振ると、剣に纏っていた巨大な炎が俺とエイラに迫ってくる。それを見て防げないと感じた俺は、エイラに覆い被さってエイラを庇おうとした。


(……?)


炎に背を向けて目を閉じていたが、一向に熱さを感じない俺は不思議に思って後ろを向く。するとそこには紅い髪、瞳をした男性が立っていた。その髪の左側の一部は白く変色している。そして驚くことに、片手で易々と炎を受け止めていた。


「大丈夫かい?」


「…え、はい…」


「そっか、それは良かった」


その男性はこちらを向くとニコっと笑い、炎を振り払った。

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