信頼
「よかったぁ…」
ペンダントを渡すとエイラは安心した素振りを見せた。よほど大切なものだったのだろう、気になった俺は聞いてみることにした。
「そんなに大事なもんだったのか?」
「はい!これはお母さんが手作りで作ってくれたものなんです…。私が冒険者になれるように…って」
「へ、へー…」
話を聞きながら俺は「そんな大事なもの落としたのか…」と、エイラの抜けっぷりに驚愕していた。
「…今『そんな大事なもの落としたのか…』って思いましたね…?」
「えっ!?いや、そんなことないよ…?」
そっくりそのまま心の中を言い当てられ、俺は目を逸らしながら上手く誤魔化した。
その間エイラは俺を睨むような視線を送ってきていたが、突然距離を詰めると満面の笑みを浮かべる。
「でも、見つけてくれて本っ当にありがとうございます!」
「…お、おう!ってほら、そろそろ帰ろうぜ」
唐突に可愛らしい素振りをされ、俺は若干どもってしまった。異性との会話に慣れていないダサい自分を隠すように、俺は出口を指差して急いで『ナナクスの森』を抜けギルドに向かうことにした。
「いただきます」
ギルドに着いて食事をしている時、俺はこの後のことを考えていた。
(…またあのトレーニングするのかな…)
宿は思ったより高い。ゴブリンしか倒せていない俺とエイラでは、金の都合上2人分の部屋を借りるのは無理だ。かといってエイラが胸を揉んでいるなか、ずっと隣に居続けるのも俺はきっと耐えきれない。
(…またゼウスのところ行くか。でもなぁ…何しに来たのとか言われて睨まれそうだなぁ…)
毎晩ゼウスに睨まれるのは御免だ、やはりハンスに騙されてるだけだと伝えるべきだろうか。
少し考えたあと俺は、やんわりと止めてもらえるよう伝えることにした。
「…なあエイラ、あのトレーニングって本当に効果あるのか?…例えばこう…魔法の威力が上がった…とか」
「え?うーん…特にないですね」
「なら…やる意味ないんじゃないか?」
言いながら少し棘のある言い方をしたなと気付き、俺は訂正しようとしたが何と言えばいいか分からず困ってしまった。少し沈黙が流れ、俺は気まずくなりエイラから目を逸らす。
「やっぱり…迷惑でしたか?」
「あ、いや!そんなつもりは
「いいんです、ハッキリ言ってください!」
エイラは俺の言葉を遮ってそう言った。失言してしまったと感じていた俺は、恐る恐るエイラの表情を伺った。するとエイラはニコニコと笑って俺の方を見ている。
「悩んでるなら相談してください!だって私達は仲間なんですから!フフン!」
その言葉を聞いて、さっきまで悩んでいたことが嘘のように吹っ切れた。なんだか自信ありげなエイラの笑顔を見て、俺も一緒になって笑う。
(俺が思ってるよりも信頼されてんのかもな…)
エイラが言った仲間という言葉を、俺は少し嬉しく思った。失言だなんて、どうやら俺の考えすぎだったようだ。
食事を済ませ他愛もない話をしながらギルドを出たあと、俺とエイラは宿屋で眠っていた。
「……」
相変わらずエイラは俺を抱き枕代わりにしている。
(これは…暫く寝付けないやつだな…)
背中に当たる柔らかい感触にドキドキしてしまい、俺は眠れないであろうことを悟った。結局俺が寝付くまでの約1、2時間、エイラが離れることはなかった。
「…ん…」
「あ、やっと起きましたか!もうお昼過ぎてますよ」
「あぁ…ごめん…」
布団から起き上がり、俺とエイラは身支度を済ませ腹ごしらえにギルドに向かう。出発が遅れたこともあり、適当に食事を済ませ恒例のゴブリン狩りに行く頃には既に日が傾いていた。
「夜は暗くて危ないし、今日は軽く稼いですぐに戻るか」
「ですね!」
そう言うとエイラは俺から少し離れた場所で、ゴブリンを狩り始めた。俺もそこらにいるゴブリンを倒し、夕暮れまで金稼ぎをした。
「ギャア…」
(ふぅ…これで十分かな。そろそろ帰るか…)
十分稼げたところで、俺はエイラのいた方を見る。薄暗い森の中、そこにエイラの姿はなかった。
「エイラ…?エイラ!どこ行ったんだ!」
辺りを走り回って声をかけたが、返事はない。俺はとにかく必死で森の中を探し回った。




