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運命の転生者  作者: apple-pie
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運命の転生者

「ふぁ…ぁ…」


俺は欠伸をしながら部屋を出てリビングへ向かう。両親は既に仕事に行っており、机にはラップのかけられた朝食が並べられていた。


「…申し訳ありません!今日の運勢最下位は蟹座のあなた!」


「……」


朝食を食べながらなんとなく見ていた星座占いが、最下位らしい俺の星座の話をしている。運命だとか占いなんていうスピリチュアルなものを信じていない俺は、話の途中でテレビを消して食器を片付けた。


(そろそろ行かないと)


家を出て少し歩くと、冬の寒空の中で大勢の学生が身を震わせながら朝の挨拶を交わしている。そして特定のグループで集まり、昨日のドラマだとかスマホゲームの話なんかをしながら学校へと向かうなんの変哲もない1日の始まり。


(…うー…寒い…眠い…)


あまりの寒さに、道にできた水溜まりは凍り付いて景色を反射している。俺もマフラーにパーカー、貼るカイロまでして完全装備だというのに寒さで体が固まる。おまけに昨日は遅くまでゲームのイベントを回していたせいで寝不足だ。


「おや?ヒロキくん寝不足かな?」


「…?」


名前を呼ばれ振り返ると、そこにはクラスメイトの田中アツシがニヤニヤした顔でこちらを見ていた。寒さと寝不足で機嫌が悪かった俺は、特に返事をする事もなく軽く頷いた。


「そうかそうか…フフ」


田中アツシ。性格が悪く友達がいない彼に、俺もあまり関わらないようにしていたが、たまたま教室でやっていたスマホゲームをアツシもやっていたようで絡まれるようになった。それ以降突き放す気にもなれず、俺は長いことアツシと話す関係にあった。


「フフン…さてはイベント周回してガチャ引いてたな?」


「まあ…そうだけど…」


話を適当に流しながら俺はこの後の流れを予想していた。アツシは親がかなりの金持ちで、よく親の金を使って課金している。そうして手に入れたレアキャラを俺に見せては自慢する、そんな事が前に3,4回位あった。どうせ今回もそれだろう。


「はぁ…わかってないなぁ、ヒロキくん。そんな事しなくても課金しちまえば…ほら!」


十字路の手前でアツシは俺の前に回り込むと、後ろ歩きのまま手に持ったスマホの画面を見せつける。その画面には予想通り、俺の狙っていたキャラが映っていた。アツシはどうだと言わんばかりのドヤ顔で俺の返事を待っている。


(俺も金か運があればなぁ…)


生まれや目に見えない物に対して恨む事もできない俺は、軽く俯き鼻で笑い飛ばしながら再びアツシに向き直った。


「うわぁ…ズル


そうしてアツシの期待に応えるように、わざとらしく羨ましがるフリをしようとしたその時だった。十字路の中間で大きなクラクションとブレーキ音を立てながら、一台の車がこちらに走ってくる。


「…へ?」


クラクションの音に振り返るアツシ。寝不足で冴えなかった頭が一瞬で回り始める。


(ヤバい…!)


俺は咄嗟に手を伸ばしてアツシを奥へと突き飛ばそうとした。アツシを突き飛ばすことには成功したが凍った地面に足を滑らせ、俺はその場に転んでしまう。そして俺は不快な衝撃音と共に激しく吹き飛ばされた。


「ゥ…、……」


衝撃によって内臓は受傷し、そこから流れ出る血が喉を満たす。周囲の悲鳴も気にならない程、俺は激痛と呼吸苦に苛まれていた。


(…熱い…寒い痛い…っ!死にたく…ない…)


意識と共に段々と薄れていく激痛のなか、俺は朝の占いを思い出していた。信じていれば俺は死なずに済んだのだろうか。そんな後悔を感じながら俺は意識を失った。


「……?」


ゆっくりと目を開けると、そこは真っ暗な空間だった。辺りを見渡すと俺の真後ろの位置に純白の高級そうな椅子と、その椅子の対面に普通の白い椅子が光に照らされていた。


「あれ、俺…轢かれたよな…?ここは天国…なのか?」


俺は確かに車に轢かれた。でも体に痛みはないし腕も足も自由に動かせる。何が起きているのかピンと来ていないが、俺は光に導かれるように椅子に近づき、高級そうな椅子に腰掛けた。


「よっと…」


埃一つ無い椅子に腰を落とすと、俺の体は沈み混むように椅子に埋まった。しかしただ単純に柔らかいだけではなく、体の重さをしっかりと支えてくれている。


「凄いなこの椅子…家のベッドより気持ちいいぞ…」


初めて座る高い椅子に俺は目を閉じ、その柔らかさを堪能していた。そしてふとパッと目を開くと、そこにはいつの間にか1人の女の子が目の前に立っていた。


「う、うわっ!?だ、誰!?」


薄い金色の髪に蒼い瞳をした、俺より少し身長の低いその女の子は音も無く現れ、椅子に座る俺を見て不満そうな顔をしている。


「そっちは私の椅子よ、アンタはそっち」


「…え…」


この気持ちよさを手放したくなかった俺は『いきなりなんだこの子は』と心の中で呟いた。その声が聞こえていたのか、女の子は更に眉間にシワを寄せると俺の方を指差した。


「『サイコキネシス』」


「うおっ!?」


女の子がそう呟くと俺の体は椅子から離れ、フワフワと宙に浮き始めた。信じられないがこの女の子は本当にサイコキネシスを使っているらしい。現実ではありえないことに戸惑っていると、女の子は俺に向けた指先を普通の椅子の方に勢いよく振った。


「ちょ…待っ


物凄いスピードで普通の椅子に叩きつけられ、俺は座ることすらできず前にバランスを崩した。力なく椅子の前に倒れこむ俺を無視して、女の子はさっきまで俺が座っていた椅子に偉そうに座る。


「痛た…ちょっと…急に何するんだよ…」


「私の椅子に勝手に座るからでしょ…にしても、アンタついてないわね」


女の子は椅子に座ると、地面に伏せる俺を見下しながらそう言った。


「ついてない…って?」


「あんな奴助けるために死んじゃうなんて…ついてないわねって言ったのよ」


「あ、あんな奴…?」


恐らくアツシのことだろう。女の子のそのセリフに俺は少し腹が立ってしまい、顔を持ち上げて女の子を睨むように見つめる。


「誰だか知らないけどな…!アツシがみんなから嫌われてようが何だろうが…助けなくていい理由にはならないだろ!」


「…ふん、綺麗事?カッコいいわね」


不機嫌そうな顔のまま女の子は頬杖を付きながら足を組む。倒れこんでいた俺の視点からは、とてもエッチな光景が広がっていた。


「…!!」


俺は説教垂れてやろうと考えていたが、その光景に思わず目を見開いてしまった。それに気づいた女の子は顔を赤らめ、すぐに足を戻す。


「『サイコキネシス』!」


「ま、待て!今のは不可抗り


女の子は再び指先を椅子の方に振り、俺を椅子に叩きつけた。そしてその後も指はそのまま動かさず、椅子に押し付けるようにサイコキネシスを放ち続ける。


「この変態…!」


地獄のようなサイコキネシスは暫く続き、解放された頃には俺はグッタリと椅子にもたれ掛かって動けなくなっていた。そして体に走る痛みをひしひしと感じながら『この女の子に逆らうのはやめよう』と心に誓った。


「…なんで私なのよ…」


「…え?なに…


女の子が小さく呟いた言葉は、俺の耳には届かなかった。なんと言っていたのか聞き返そうとしたが、何やら顔を背けて寂しげな表情をしており俺は聞くのを躊躇った。


「はぁ…まあいいわ。早速本題だけど、これからアンタには異世界に行ってもらうから」


「………え?」

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