生贄に出された先は、《おねぇドラゴンさん》のところでした
私は、トラックにはねられた拍子に異世界へ飛ばされた、ただのアラフォーOLだ。
仕事帰りだったのもあり、よれたパンツスーツ姿がいただけなかった。
現地人は、私を不審者と判断し、即拘束。
そして、ドラゴンの住む城へと生贄に出した───
「……ってことが、事の顛末でして。あなたは?」
私が尋ねると、金髪の長い髪をかき上げながら、青い鱗をまとわせた美麗な男性がふん! と鼻息を飛ばす。
「あーた、あたしに対して、その口の聞き方、おかしいんじゃなぁい?」
「じゃあ、どういう態度が良いんですか?」
「あーた、これでもあたし、氷の谷のドラゴン、リューシュ様よ!」
「……はぁ」
ドラゴンなのに人型なんだ。しかも、オネエ喋りだし。
……でも、すんごいかっこいい……
眼福です、神様……死ぬ前にいいもの見れました……この人に食われるなら本望です……!
たとえ、首スパッと切られることになっても……
「何沈んだ顔して? はぁ……ホントにあーた、みすぼらしいわね! それでも女?」
「は? 生物学上、女ですけどなにか」
「そういう態度がいけないのよ!」
ひとつ地団駄を踏むと、リューシュは手早く私の髪の毛を結い上げ、さらにはお化粧まで施してしまったではないか……
「……何してんですか? 私、生贄ですよね?」
「あーたみたいなブッサイク、いろんな意味で食べるとおも」
「思いません」
「……食い気味にきたわね。そうよ。あたしは綺麗なものしかいらないの! だから、あーたにはもっと綺麗になってもらうわ!」
でも、張り切っているはなぜ……?
広い煌びやかな部屋のクローゼットから、女性ものの服がワンサカでてくる。
「あーた、スタイルはいいから、これとかどうかしら? こっちかしらぁ……ああ! もう、ひさびさの生贄すぎて楽しすぎるぅ〜!」
……どうも、今までかなりの生贄たちを変身させてきたようだ。
今では、ブサイクを美しく変身させるドラゴンの神になっているのだとか。
これは村人の優しさだったのか……
「綺麗にしたあと、私はどうなります?」
「どうしようかしらね……」
「今までの子たちは?」
「里に戻してるけど? 可愛くなって、新たな人生ってやつね!」
「……変な人」
「うっさいわね! まあ、あーたは故郷に帰れそうにないし、あたしの番にしてやってもいいわね。素材がいいから!」
リューシュのウインクが、ざっくり私の胸に刺さる。
「異世界転移も悪くないかも……!」