4報告と怒気
状況を細かく伝えるため、。後に今まで書いたのも、なるべく見やすくしたいと思います。
日が暮れ。森での戦いで疲れた様子のレイノは、冒険者ギルドで試験の依頼を報告するため。ギルドの前まで帰ってきていた。
「はぁ~…行きはワクワクしていて、気にしなかったけど、意外と依頼の森から冒険者ギルドって遠いんだなぁ…」
そんな事を呟きながらレイノは扉を開け中に入る。すると人が少なくなったギルドで整理をしていたアネットはレイノを見るなり勢いよく向かってきた。
「レイノちゃん!!」
そう叫ぶと幼いレイノに抱きつくアネット。
混乱するレイノ。
「えっ!わっ!な、なんですか!?どうかしたんですか!?」
そう話を聞くと、ギルドマスターと女神イースが奥の部屋から出てきて説明をする。
「おぉ、帰ったか!アネットは、お前が他の冒険者よりも随分遅いからと心配していたんだ。俺は最初の冒険者ならば2日は大丈夫だと言ったんだがな…」
レイノはその言葉を聞きながらアネットを見ていた
「は、はぁ…。」
その後、ギルドマスターは自身と女神の自己紹介する。
「そうだな…まず俺がここのギルドマスター名前はアトル、呼び方は何でも良いぞ!それと…こっちのねーちゃんがここアーリル大陸の女神イース様だ。」
その紹介にレイノは驚きビクッとする。
(女神!?この人が!?僕の想像していた女神とは随分違う…服装は普通の人と変わらないかな…それでもとても綺麗な人だ…あ。いや、それよりも大丈夫かな?一番バレる可能性があって危険だと思っていた女神が目の前にいるけど…バレてないよね…。)
そう心の中で焦りながらも、挨拶をしながらアネットを離そうとするレイノ。
「…あ、はじめまして!レイノと言います!あの、アネットさんそろそろ離れて…」
離そうとするが離れないそれどころか柔らかい感触がお腹辺りに伝わり照れだす。今まで女性や人と関わりが少なかったレイノにとって強い刺激だった。
恥ずかしさが限界に来て涙目になった所でアネットの両頬を掴み言う。
「アネットさん!離れて下さい!」
アネットは頬を掴まれながら返事をする。
「…ふぁい。」
アトルとイースは笑いながら言う。
「ふははは!いいコンビになりそうじゃねぇか!」「ふふ…、そうね。」
その言葉に反応するレイノ
「コンビ?」
返すアトル
「あぁ、これからアネットをお前の専属として、つけることにしたんだぜ?」
レイノは驚く
「え!?ど、どういう事ですか?」
アトルは部屋で話していたことを説明する。
説明受けたレイノは内心不満に思いながらも、聞く。
「そ、そうだったんですか、でもいいんですか?ボクみたいな素人が専属って。」
(本人の居ない所で何決めてんのこの人達…)
アネットはレイノのボクという言葉に興奮する。
「ボクっ娘!!!」
バシッ!っと叩く音がでる。
アネットは少し痛がる。
「ギルマス痛い…」
アトルはアネットを叩き、少し笑うとレイノの質問を答える。
「少し静かにしてろ。」
「あぁ、俺は寧ろそうした方が良いと思ってな、アネットを頼むよ。」
レイノは微笑み承諾する。
「なるほど、わかりました!こちらからもお願いします。」
アネットは割って入る
「ちょ、ちょっとまってください!それだと私が面倒を見られる立場に聞こえるんですが!?」
アトルはキョトンとした顔で言う
「違うのか?」
イースが笑う
「ふふふっ…」
アネットは少し怒る
「もう!ギルマス!意地悪です!」
少ししてアトルが話を変える
「レイノ、それで初の依頼。報告はどうするんだ?」
レイノはハッとした顔で返事をしながらアネットに持っていた白い冒険者カードと剥ぎ取った素材を渡す。
「あ、そうでした…!はいです!森にはスライムとホーンラビットしかいませんでした!」
レイノは森のゴブリンの事は森の異常事態ではなくただのはぐれた魔物だと索敵でわかったので伏せておくことにした。
アネットはキリッとした顔で対応する
「はい!見た所、状態も良さそうですね。では依頼達成を確認しましたので、冒険者ギルドへ登録おめでとうございます。こちらのギルドカードと依頼の報酬の銅貨4枚をどうぞ!」
手渡されたのはランクFと記入され青くなった冒険者カードと銅貨だった。
レイノは思わず両手を上げ喜んだ。
「やったー!!」
その様子を見て微笑む3人だが、女神イースは考え事をしていた。
(レイノちゃんか…なんだか主様を思い出すわ…。)
イースは昔の仕えていた、身長の小さな主の背中を思い出していた。
(でも…私の鑑定9でもステータスに違和感も何もなかったわね…。隠蔽が10レベルなら私は見えないかも知れないけど、転移してすぐの子がこの世界をすぐに理解し高度のスキルが作れる筈がないはず…。この子じゃないわね…)
(それにしても…あの子が居るって言ったんだから転移者の主様は絶対にこの国にいるなんだけど…あの時の王の反応は、まるで居ないような口振りだったわ…)
女神イースは王と会話した時の事を思い出す。
―――レイノが迷子になり冒険者ギルドに向かっていた頃。―――
門をバンッ!と音とともに開き女神イースは怒鳴る
「スラネル!!用がある!!」
王の名はスラネル。
スラネル王は面倒だと言わんばかりの表情でイースと喧嘩腰に話し出す。
「騒がしいぞ女神。なんの用だ?」
イースはその態度を前に話し出す。
「貴様…女神である私にその言い。全く偉くなったものだな!」
スラネル王は用件を話すよう急がせる。
「そんな事より用件はなんだ?」
その言葉を聞きイースは怒りながら問う、さらに自身の持っているスキルを発動し目が青く光る。
「あぁ、単刀直入に聞こう!創造者様の行方だ!!」
イースの発動したスキルは心眼。見た相手の心の嘘や真実を見抜くスキルでレベルは8である。
それを見た王は威圧されるが、王はレベル9のスキル隠蔽工作を発動していた。
普通の隠蔽とは違いこちらはステータスの改善などはできないが自身が犯した罪をすべて他者に移したり無くしたりする事が可能なスキルである。
2人のスキルはどちらも凄いものだが、スラネル王のスキルが高く、イースのスキルは防がれてしまう。
だがイースは王が創造者の何かを隠している事は知っていた。
「スラネル!貴様…隠しているな!」
そう言いイースは拳を強く握る。
王は言う
「知らぬものは知らぬな。だが、あの事からすでに50年は経っておるし、そろそろだとは思うがな!また子を攫うといいさ!!はははッ!」
その言葉にイースはとてつもなく怒り、拳を届かないはずの右の壁に目掛けて殴りつける。
すると、スラネル王からの目では拳が一瞬消え、風圧で城の壁を吹っ飛ばし、イースはスラネル王に拳の甲を向け威嚇する。
「…あんたを…いつかぶっ飛ばす!!」
その言葉に煽るスラネル王
「相変わらず女とは思えぬ力じゃ、怖いのぉ~。だが、証拠もない創造者もいない。女神であるからこそ、お前には何もできんよのぉ!」
この世界の女神という職業は確実な証拠と理由が無い限りは人族、亜人族、魔族を殺してはならないという処罰していけないルールがあった。
その言葉を聞き、女神は悔しさで唇を噛み締め帰っていく。
「ッ…!お邪魔した!!」
そう言い扉をドン!っと強く閉める。
その様子を見届け、壊れた壁を見ながらスラネル王は、隣にいる首輪のついた美少女に話しかける
「あやつは創造者を殺したと言えば、ルールを無視して負の代償を払ってでもワシを殺しただろう…。まったく恐ろしい者よのぉ。女神の血を受け継いてきた者達は…のぉ、アリスよ。」
首輪のついた美少女はアリス。魂を失ったような目で一言答える
「…はい。」
女神イースがスラネル王に会った出来事であった。
―――現在、冒険者ギルド―――
イースは思い出し考える。
(あの時、私は心眼で王の心を見ていたけど、私が手を上げていれば王は直ぐ近くの他人を無差別に危害を加え出すつもりでいた見たいだった。人質のように…本当に汚い奴…!)
考えている間にイースの顔は怒りに満ちていた。
それを察して、アルトはイースの肩に手を置き冷静になるよう言う。
「どうした?事情はしらないが、少しは落ち着け。」
ハッとしたイースは謝り。アルトにギルドの休憩部屋を借りる事を言い部屋へ向かった。
「ごめんなさい…。アルト、部屋を数日借りるわ。」
イースを見送るアルト
「あぁ、空きはある、ゆっくり休め。酒の時から大人しかったのは王に会ったからかだろう…だからこそ創造者が死んだとを言うのは…いや言えないな。」
隣でレイノとアネットは燥いでいる。アルトは2人を見ると話す。
「レイノ、今日はもう遅いギルドの部屋に泊まって行くと良い、飯は俺が作るぞ!」
レイノは言葉を聞き笑顔でお礼を言う。
「あ!はい!何から何までありがとうです!」
(やった!初の依頼で銅貨をもらったはいいけど、本の知識だけじゃ値段が間違ってたら心配だし助かった―あとで通貨についてアネットに聞いてみよ。)
2人の話を聞いたアネットは驚愕し、アルトに迫る。
「ちょっと!ギルマス!私も(レイノちゃんと)泊まりたいです!!」
「あぁもう勝手にしろ!だが、レイノに迷惑かけるなよ。」
アルトは面倒くさそうに返事をするが、
その後、結局色々あり、アルトは泣きつくアネットを近くの宿まで担いでいった。
「色々あったー皆凄くいい人達で良かったでも少し…つかれた…かな…。」
静かになり、2階の部屋でベットに横になったレイノはそう呟くとすぐに眠った。初めて異世界で睡眠を摂ったのだ。
ー翌日ー
鐘の音が聞こえて、起きると机に手紙と布に包まれたパンがあることに気づく。
手紙には、起きたら準備して窓口に来るよう書かれていた。
支度をし、階段を降りるとアネットが窓口の前で待っていた。笑顔のアネットが挨拶をする
「レイノちゃんおはよう!」
挨拶を返す。
「アネットさん、おはようございます!」
すると、アルトが奥の部屋から出てきて話しかけてきた。
「よう!よく眠れたか?」
レイノは返事を返す
「はい!お陰様で!」
(欲を言えばお風呂に入りたかった。)
この世界ではお風呂は凄く珍しい物で貴族が行う贅沢とされていた。
アルトは話を切り出す
「そうかそうか、それは良かった。でだ、実はなもう一度水晶に触れてステータスを見せてくれるか?ミスがあったみたいなんだ。」
その話にレイノは、まったく気にもせず、承諾した。
「はい、構いませんよ!」
そしてレイノは水晶に触れる。
触れた後、アネットとアルトは水晶に映し出されているレイノのステータスをまじまじと見た。
「やっぱり…これは確定ですね…」
と、アネットは言い、続けてアルトも。
「あぁ、見逃していた…これは良い誤算だな。」
と言った。
レイノは2人の様子を見て焦った。
レイノは何を見られているのか分からないが、何かがバレたのだと思い始めた。そして思考がどんどんと追いやられる。
その後の2人の会話は、考えをフル回転さしていたレイノには聞こえていなかった。
(え…なにこの2人の反応まさか創造者なのがバレた?本当に?も、もしバレたら僕はどうなるんだろう…。まさか、また殺される…!?それはもう嫌だ!!いっその事逃げ出す…?うん、もうこれは逃げるしか無い。殺される前にさらなる移動スキルを作るんだ…何処でも良いし!代償はあってもいい!死ぬよりましだ!)
今のレイノは極端な考えをしていて視野が物凄く狭まっていた。さらに自身に防御魔法があることすら忘れ、創造スキルを発動させた。
(創造スキル!ランダムテレポート!)
アナウンスが流れる
[ランダムテレポートを受託。ランダムテレポートの生成が成功。ランダムテレポートを取得しました。それに伴い使用後に代償が発動します。]
頭の中でスキルを使用していると、いつの間にかアネットとアルトはレイノを防音の魔道具がある別室へ案内されていた。
レイノは2人と部屋の廊下までついてきてしまった事に震えていた。タイミングを図り2人が部屋に視線を向けたと思った瞬間。レイノはスキルを小声で唱えた。
「ら、…ランダムテレポート…!」
部屋に入りアネットはレイノに希少魔法であるダークショックの習得方法を学ぼうと質問しようとしたが、後ろを振り返っても居ない事に疑問を抱き、廊下を見渡すがさっきまで居たレイノが居ない事を異常だと感じ。アルトを見て話そうとするがアルトは驚いていた……そんなアルトにアネットは問いかける。
「ギルマス…?」
そのアネットの声にアルトは反応する。
「あ…おい!お前見たか!?レイノが消えたぞ!」
アネットは驚き。
「え!?消えた!?そんな…!」
アネットは焦る。
「まってください!ギルマスが見たことが本当なら、消えたという事は、自分でスキルを使ったか誰かがスキルを使って呼んだって事になりますよ!?」
アルトは言う。
「自分自身でスキルを使うと言うが、あいつはそんなスキル持っていない!呼ばれたに決まっているだろう!」
2人は混乱しながらも廊下で大声で会話する。
そして、その2人の会話が聞こえる隣の部屋では……
女神イースが真剣な顔をして。ある人物と対面していた。
「レイノ…ちゃん…?」
なんとレイノは女神イースの目の前へテレポートしていたのだった…。